3つの恋が実るミライ♪
□00 プロローグ
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ジョーカーによって連れ去られてしまったキャンディを助けるため、みゆきたちはバッドエンド王国へと踏み込んだ。
悪の皇帝ピエーロが復活を遂げてしまったものの、新たに現出した“伝説のペガサス”の力を振るって、ついにピエーロを打ち倒すことに成功する。
こうして、みゆきたちは一つのハッピーエンドを手に入れたのだった。
そして現在。
メルヘンランドを訪れたみゆきたちは、ついにロイヤルクイーンとの謁見を果たしていた。
星空みゆき「…こ、この人がロイヤルクイーン……!?」
日野あかね「…って、デカぁッ!!」
あかねが驚愕するのも無理はなく、ロイヤルクイーンの全長は想像を遥かに超えるほど巨大な姿で佇んでいた。
しかし、どうにも動きを見せるような様子が伺えない。
星空みゆき「ロイヤルクイーン様ぁ! 聞こえてますかぁ!?」
みゆきの呼び掛けにも何の反応も示さない。
青木れいか「……聞こえていないようですね」
日野あかね「もしもーしッ!」
緑川なお「あのぉーッ!」
黄瀬やよい「やっほーッ!」
誰が呼びかけようとも同じこと。
呼びかけの声が虚しく反響していくばかりだった。
緑川なお「デコルを集めたら、ロイヤルクイーン様は目覚めるんじゃなかったの?」
なおが足元のポップに問いかけたところで、キャンディも同じように質問する。
キャンディ「お兄ちゃん。どうしてロイヤルクイーン様は目覚めないクル?」
ポップ「そ、それは……。拙者も色々と、書物を読み漁っているのでござるが……」
その声色から察するに、ロイヤルクイーンが目覚めない理由に心当たりがないようだ。
皇帝ピエーロを倒し、十六個のデコルも集まった今。
みゆきたちが成すべきことが分からないでいる現状にて……。
????「教えてやるよ。ロイヤルクイーン様は、もう二度とお目覚めにはならねぇのさ」
みゆきたちの背後、この広間の出入口付近から聞き覚えのない男性の声が響き渡った。
星空みゆき「……ッ!?」
黄瀬やよい「だ、だれ!?」
みんなが一斉に振り返ると、そこにはベージュ色のローブを身にまとった人物が立っていた。
同色のフードを頭に深く被っているため顔までは確認できないが、声色と背丈から察するに少年と思われる。
ポップ「お主、何者でござるッ!!」
フォーク「あぁん? まぁ、名前なんざどうでもいいが、フォークって呼んでくれて構わねぇよ」
緑川なお「フォーク…?」
明らかに偽名だろうが、少年はフォークと名乗った。
だが名前よりも先に、この場に現れた際の発言の方が気になる事柄である。
星空みゆき「ロイヤルクイーン様が二度と目覚めない、って……どういうこと?」
フォーク「チッ、そのままの意味だっつーの。ここまでハッキリ言わなきゃ分かんねぇのかぁ? あぁ?」
日野あかね「意味が分からんわ!」
黄瀬やよい「あなた、ロイヤルクイーン様に何をしたの!?」
フォーク「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー、うるせぇなぁ。もうちっと待ってろ。舞台役者が揃わなけりゃ、物語ってのは始まらねぇんだ」
青木れいか「舞台役者……?」
キャンディ「クルぅ……」
目に見えて事態に怯えるキャンディ。
ただならぬ雰囲気を漂わせるフォークを前に、みゆきたちはスマイルパクトに手を伸ばしつつ身構えていた。
敵か味方か、またはどちらでもない別の存在なのかも分からないフォークから視線を外さず、彼の言う“舞台役者”を待ち構える。
バッドエンド王国、無限の黒空。
再び復活を待つ形として姿を変えたピエーロの傍へと、ジョーカーが迎えに現れた。
ジョーカー「お捜ししました……」
ピエーロ「……」
ドクンドクンと鼓動するピエーロを抱え、ジョーカーはバッドエンド王国の地に降り立っていく。
眼下には、プリキュアたちとの戦闘に敗れて倒れ伏す三幹部たちの姿。
ジョーカー「ふ……。みなさんッ、起きてください」
しかし、三幹部の面々に目覚めの様子は見られなかった。
仕方なしにジョーカーは己の持つバッドエナジーを分け与える形で、三幹部の心身を回復させていった。
やがて、ようやく三幹部の意識が覚醒を始めていく。
ジョーカー「おはようございます」
ウルフルン「ん? ぁ……、もう朝か…?」
アカオーニ「ぅ〜……。よく寝たオニ…」
マジョリーナ「んん? それは何だわさ?」
ふと、マジョリーナはジョーカーの抱えているピエーロの姿を見て呟いた。
ジョーカー「皇帝ピエーロ様です」
当然ながら、これが今のピエーロの姿などと気付くはずがないだろう。
ウルフルン「ーーーッ!!? な、何でそんなお姿にッ!!?」
ジョーカー「完全復活の途中、あと一歩のところでプリキュアに邪魔されてしまったためです……」
ウルフルン「…ッ!! そうだ……ッ、プリキュア…ッ」
思い出されるのは、バッドエンド王国で対立した際の戦況。
情けない話だが、三幹部の面々はプリキュアに悉く敗北を許してしまっていた。
ウルフルン「あいつらに、オレたちは……ッ」
アカオーニ「悔しいオニぃ……ッ」
マジョリーナ「……ッ」
メラメラと闘志を燃やし始める三幹部たち。
しかし、意外にもジョーカーはその意気込みを制止する。
ジョーカー「鎮まりなさいッ。プリキュア如きの力では、ピエーロ様は倒せません……。」
言われるがまま、闘志を鎮めた三幹部の面々を前に、皇帝ピエーロを掲げたジョーカーは意味深に不敵な笑みを浮かべて呟いた。
ジョーカー「これより…、皇帝ピエーロ様は完全体での復活を目指されます……♪」
????「申し訳ありませんが、それは叶わぬ夢のままに終わりを迎えます」
しかし、突如として現れた第三者の声により、ジョーカーの発言は真っ向から否定された。
ウルフルン「あぁ?」
マジョリーナ「誰だわさッ」
三幹部の後方、ジョーカーより少し離れた前方の岩陰から、ベージュ色のローブを身にまとった人物が姿を現した。
同色のフードを頭に深く被っているため顔は伺えないが、声色と背丈から察するに少年と思われた。
ジョーカー「……何者です?」
アカオーニ「何で俺様たち以外に、バッドエンド王国に存在してるオニッ?」
ナイフ「一つ目の質問には、ナイフ、とお答えしましょう。二つ目の質問ですが、説明が難しいのでご想像にお任せします」
ウルフルン「あぁ? 何をゴチャゴチャとわけの分からねぇことを。いいからその面ぁ見せやがれぇ!」
本能の向くままに跳躍して襲い掛かるウルフルンは、大きく腕を振り上げてナイフと名乗った少年へと手を伸ばす。
しかし、その腕は真正面からガシィッと掴み取られてしまった。
ウルフルン「何ッ!?」
ナイフ「鈍いです」
ブンッ、とウルフルンを勢いよく振り払ったナイフは、ローブの中からバイオリンを取り出す。
ナイフ「申し訳ありませんが、貴方たちの到着を待っている方がいるのです。大人しく同行していただきましょう」
構えたバイオリンを奏で、バッドエンド王国に弦楽器の音色が響き渡る。
瞬間、三幹部とジョーカーの四人の姿が足元からパラパラと消失を始める。
アカオーニ「オニィ!!?」
マジョリーナ「な、何だわさ!?」
ジョーカー「……ッ!!?」
四人全員がバッドエンド王国から姿を消したところで、ナイフ自身も姿を暗ませたのだった。