3つの恋が実るミライ♪

□00 プロローグ
1ページ/4ページ


 ジョーカーによって連れ去られてしまったキャンディを助けるため、みゆきたちはバッドエンド王国へと踏み込んだ。

 悪の皇帝ピエーロが復活を遂げてしまったものの、新たに現出した“伝説のペガサス”の力を振るって、ついにピエーロを打ち倒すことに成功する。

 こうして、みゆきたちは一つのハッピーエンドを手に入れたのだった。







 そして現在。

 メルヘンランドを訪れたみゆきたちは、ついにロイヤルクイーンとの謁見を果たしていた。

星空みゆき「…こ、この人がロイヤルクイーン……!?」

日野あかね「…って、デカぁッ!!」

 あかねが驚愕するのも無理はなく、ロイヤルクイーンの全長は想像を遥かに超えるほど巨大な姿で佇んでいた。

 しかし、どうにも動きを見せるような様子が伺えない。

星空みゆき「ロイヤルクイーン様ぁ! 聞こえてますかぁ!?」

 みゆきの呼び掛けにも何の反応も示さない。

青木れいか「……聞こえていないようですね」

日野あかね「もしもーしッ!」

緑川なお「あのぉーッ!」

黄瀬やよい「やっほーッ!」

 誰が呼びかけようとも同じこと。

 呼びかけの声が虚しく反響していくばかりだった。

緑川なお「デコルを集めたら、ロイヤルクイーン様は目覚めるんじゃなかったの?」

 なおが足元のポップに問いかけたところで、キャンディも同じように質問する。

キャンディ「お兄ちゃん。どうしてロイヤルクイーン様は目覚めないクル?」

ポップ「そ、それは……。拙者も色々と、書物を読み漁っているのでござるが……」

 その声色から察するに、ロイヤルクイーンが目覚めない理由に心当たりがないようだ。

 皇帝ピエーロを倒し、十六個のデコルも集まった今。

 みゆきたちが成すべきことが分からないでいる現状にて……。





????「教えてやるよ。ロイヤルクイーン様は、もう二度とお目覚めにはならねぇのさ」





 みゆきたちの背後、この広間の出入口付近から聞き覚えのない男性の声が響き渡った。

星空みゆき「……ッ!?」

黄瀬やよい「だ、だれ!?」

 みんなが一斉に振り返ると、そこにはベージュ色のローブを身にまとった人物が立っていた。

 同色のフードを頭に深く被っているため顔までは確認できないが、声色と背丈から察するに少年と思われる。

ポップ「お主、何者でござるッ!!」

フォーク「あぁん? まぁ、名前なんざどうでもいいが、フォークって呼んでくれて構わねぇよ」

緑川なお「フォーク…?」

 明らかに偽名だろうが、少年はフォークと名乗った。

 だが名前よりも先に、この場に現れた際の発言の方が気になる事柄である。

星空みゆき「ロイヤルクイーン様が二度と目覚めない、って……どういうこと?」

フォーク「チッ、そのままの意味だっつーの。ここまでハッキリ言わなきゃ分かんねぇのかぁ? あぁ?」

日野あかね「意味が分からんわ!」

黄瀬やよい「あなた、ロイヤルクイーン様に何をしたの!?」

フォーク「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー、うるせぇなぁ。もうちっと待ってろ。舞台役者が揃わなけりゃ、物語ってのは始まらねぇんだ」

青木れいか「舞台役者……?」

キャンディ「クルぅ……」

 目に見えて事態に怯えるキャンディ。

 ただならぬ雰囲気を漂わせるフォークを前に、みゆきたちはスマイルパクトに手を伸ばしつつ身構えていた。

 敵か味方か、またはどちらでもない別の存在なのかも分からないフォークから視線を外さず、彼の言う“舞台役者”を待ち構える。







 バッドエンド王国、無限の黒空。

 再び復活を待つ形として姿を変えたピエーロの傍へと、ジョーカーが迎えに現れた。

ジョーカー「お捜ししました……」

ピエーロ「……」

 ドクンドクンと鼓動するピエーロを抱え、ジョーカーはバッドエンド王国の地に降り立っていく。

 眼下には、プリキュアたちとの戦闘に敗れて倒れ伏す三幹部たちの姿。

ジョーカー「ふ……。みなさんッ、起きてください」

 しかし、三幹部の面々に目覚めの様子は見られなかった。

 仕方なしにジョーカーは己の持つバッドエナジーを分け与える形で、三幹部の心身を回復させていった。

 やがて、ようやく三幹部の意識が覚醒を始めていく。

ジョーカー「おはようございます」

ウルフルン「ん? ぁ……、もう朝か…?」

アカオーニ「ぅ〜……。よく寝たオニ…」

マジョリーナ「んん? それは何だわさ?」

 ふと、マジョリーナはジョーカーの抱えているピエーロの姿を見て呟いた。

ジョーカー「皇帝ピエーロ様です」

 当然ながら、これが今のピエーロの姿などと気付くはずがないだろう。

ウルフルン「ーーーッ!!? な、何でそんなお姿にッ!!?」

ジョーカー「完全復活の途中、あと一歩のところでプリキュアに邪魔されてしまったためです……」

ウルフルン「…ッ!! そうだ……ッ、プリキュア…ッ」

 思い出されるのは、バッドエンド王国で対立した際の戦況。

 情けない話だが、三幹部の面々はプリキュアに悉く敗北を許してしまっていた。

ウルフルン「あいつらに、オレたちは……ッ」

アカオーニ「悔しいオニぃ……ッ」

マジョリーナ「……ッ」

 メラメラと闘志を燃やし始める三幹部たち。

 しかし、意外にもジョーカーはその意気込みを制止する。

ジョーカー「鎮まりなさいッ。プリキュア如きの力では、ピエーロ様は倒せません……。」

 言われるがまま、闘志を鎮めた三幹部の面々を前に、皇帝ピエーロを掲げたジョーカーは意味深に不敵な笑みを浮かべて呟いた。

ジョーカー「これより…、皇帝ピエーロ様は完全体での復活を目指されます……♪」





????「申し訳ありませんが、それは叶わぬ夢のままに終わりを迎えます」





 しかし、突如として現れた第三者の声により、ジョーカーの発言は真っ向から否定された。

ウルフルン「あぁ?」

マジョリーナ「誰だわさッ」

 三幹部の後方、ジョーカーより少し離れた前方の岩陰から、ベージュ色のローブを身にまとった人物が姿を現した。

 同色のフードを頭に深く被っているため顔は伺えないが、声色と背丈から察するに少年と思われた。

ジョーカー「……何者です?」

アカオーニ「何で俺様たち以外に、バッドエンド王国に存在してるオニッ?」

ナイフ「一つ目の質問には、ナイフ、とお答えしましょう。二つ目の質問ですが、説明が難しいのでご想像にお任せします」

ウルフルン「あぁ? 何をゴチャゴチャとわけの分からねぇことを。いいからその面ぁ見せやがれぇ!」

 本能の向くままに跳躍して襲い掛かるウルフルンは、大きく腕を振り上げてナイフと名乗った少年へと手を伸ばす。

 しかし、その腕は真正面からガシィッと掴み取られてしまった。

ウルフルン「何ッ!?」

ナイフ「鈍いです」

 ブンッ、とウルフルンを勢いよく振り払ったナイフは、ローブの中からバイオリンを取り出す。

ナイフ「申し訳ありませんが、貴方たちの到着を待っている方がいるのです。大人しく同行していただきましょう」

 構えたバイオリンを奏で、バッドエンド王国に弦楽器の音色が響き渡る。

 瞬間、三幹部とジョーカーの四人の姿が足元からパラパラと消失を始める。

アカオーニ「オニィ!!?」

マジョリーナ「な、何だわさ!?」

ジョーカー「……ッ!!?」

 四人全員がバッドエンド王国から姿を消したところで、ナイフ自身も姿を暗ませたのだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ