3つの恋が実るミライ♪

□01 怪力娘とパパ?
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 セミの鳴く真夏日の朝。

 日曜日でもない本日、星空みゆきは学校にも行かず自宅で過ごしていた。

キャンディ「みゆき! 今日は日曜日じゃないクルッ。学校、行かなくていいクルぅ?」

 みゆきが庭で水撒きをしていると、当然のようにキャンディの質問が飛んでくる。

 しかし、みゆきは笑顔で返答した。

星空みゆき「ふふッ、今日から夏休みなんだよ〜♪」

キャンディ「…? なつやすみ…?」

星空みゆき「うん! お休みがね……いーっぱいなんだよ!」

キャンディ「お休みが……いーっぱいクルぅ!?」

 手と手を取り合って喜びあう二人。

 今日から夏休み。

 学校に通う子供たちにとって、楽しい夏の思い出作りとなる一ヶ月間が始まろうとしていた。

 しかし……。

星空みゆき「……だけど、なぁんにも予定がないんだよね……」

キャンディ「ありゃま……」

 それが現実だった。

 と、その時……星空家に一本の電話が入る。

日野あかね『もしもし、みゆきか?』

星空みゆき「あ、あかねちゃん! どうしたのぉ?」

日野あかね『実はな……今日ウチ、海に行く予定があんねんけど……よかったら、みゆきも一緒に来ぃひん?』

星空みゆき「えぇ!? うんうん! 行くよ!! 絶対行くからぁ!」

 あかねから、海に遊びに行く誘い。

 当のみゆきはテンションマックスで了承していた。







 一方、みゆきを海に誘ったあかねはお好み焼き屋の海の家を現地集合として告げる。

 通話を切った今現在、あかねは既に海の家にいた。

日野あかね「ふぅ〜……これでええんやな?」

青木がどう「ありがとうございます。なおさんの方は如何ですか?」

緑川なお「こっちも問題ないよ。れいかだったら、きっとみゆきちゃんよりも到着は早いと思う」

青木がどう「それは何よりです」

 今回の誘い、実は海で遊ぶためのものではない。

 青木がどう率いる第三勢力の目的達成のため、みゆきたちの未来を少しばかり操作する使命があった。

 色恋沙汰なため正直なところ抵抗はあったが、当人たちの知るところではない。

青木がどう「やよいさんの方も、調べに寄れば美術の宿題で海の絵を選ばれたそうです。こちらは呼ばずとも来てくれるでしょう」

日野あかね「ウチらの良心が痛むっちゅーねん……」

緑川なお「あはは……。ところで、バッドエンド王国の方はどうなの?」

青木がどう「そちらは幸牙と長閑に任せています。少しお時間は掛かるでしょうが、まぁ問題はないでしょう」

日野あかね「時間? 何でなん?」

青木がどう「………色々と事情があるんですよ…。父さんの性格を考えると、特に……」

緑川なお「……?」







 バッドエンド王国。

 ジョーカーは酷く荒れていた。

 完全体での復活を目指すことが出来たはずが、既にピエーロの存在は消えてなくなった。

 厳密には、完全に消滅したわけではないのだが、この分では近い未来での復活は難しいだろう。

ジョーカー「……チッ…!!」

ウルフルン「お、おい…落ち着けって」

マジョリーナ「物に八つ当たりしても何も解決しないだわさッ」

ジョーカー「では…、アナタたちに体を張っていただきましょうか…? ワタシは一向に構わないのですよ……?」

ウルフルン「それはまた別の問題だろうが!」

マジョリーナ「気が立っててメチャクチャだわさ!」

 イライラがマックスのジョーカーに巻き込まれる形で、ウルフルンとマジョリーナは手を焼いていた。

 そんな中、バッドエナジーを集める役目すら失ってしまった三幹部の日常に退屈が訪れたため、アカオーニの様子にも怠惰が浮かび始める。

アカオーニ「んん〜むぅ……退屈オニ……」

 寝そべりながらテレビを見つつ、そんな独り言を呟いていた。

 そんな彼の後ろ姿を、こっそりと眺める二つの影。

黄瀬のどか「(……あ…、パパ…ッ)」

星空こうが「(待てよ、ノン。気持ちは分かるが、顔を合わせちゃダメだ)」

黄瀬のどか「(…うん……分かってる…)」

 未来に帰れなくなった今、のどかはママとパパが恋しかった。

 そして今、目の前には若かりし頃のパパであるアカオーニが寝そべっている。

 会いに行きたい気持ちが大きいが、この時代で会いに行っても無駄なこと。

 アカオーニはのどかのことを知らないし、何よりものどかの容姿の方に問題があった。

星空こうが「(ノンは母親似だ。もしもプリキュアと勘違いされたら、大好きなパパに襲い掛かられちまう。それは嫌だろ?)」

黄瀬のどか「(…………うん)」

星空こうが「(だったら今は我慢だ。誰でもいいから、さっさと人間界の海に送り込むぞ)」

 がどうからの連絡で、みゆきもやよいもれいかも既に海の家に誘い込む手筈が整ったことが知らされていた。

 あとはこちらも、なるべく多くのバッドエンド王国組を人間界の海の家まで誘い込めればいいのだが……状況は難しい。

黄瀬のどか「(みちにいのパパ、荒れてるね)」

星空こうが「(あのクソ親父どもは諦めるしかねぇなぁ……。ったく、唯一の救いは単独中のノンの親父だけかよ……)」

 今回は致し方なく、ウルフルンたちを誘い込むことは諦めた。

 がどうが懸念していた事態が的中したのである。

星空こうが「(テレビ観てんなら都合がいい。ノン、頼むぜ)」

黄瀬のどか「(うんッ)」

 のどかの体にパチパチッと紫電が走る。

 あらかじめ用意していた海の家の紹介映像を、タイミングを見計らって遠距離から配信していく。

アカオーニ「んん?」

 海の家の紹介映像が流れ、アカオーニの反応が大きく変わる。

 興味を示した時の態度だった。

紹介映像『夏! 海の季節! 肌は、こんがり小麦色!! 素敵な夏の思い出作りに、あなたも海へ行きませんか?』

アカオーニ「………イカしてるオニぃ…ッ」

 勢いよく立ち上がったアカオーニは、早速準備に取り掛かる。

アカオーニ「俺様もこんがり小麦色になって! 夏の思い出ッ、作っちゃうオニぃ!!」

 そして意気揚々とバッドエンド王国を飛び出して行った。

星空こうが「……何か…、ノンの親父、って感じだな…」

黄瀬のどか「パパ、本当に昔からあんな感じだったんだね……」

 大好きなパパの面影を見ることが出来て嬉しい反面、娘としては少しだけ複雑な気分を味わっていた。
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