3つの恋が実るミライ♪

□02 夏祭りで屋台勝負!?
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 夜の、七色ヶ丘商店街。

 夏休みの真っ只中な本日、夏祭りが開催されていた。

キャンディ「みゆきぃ〜♪ その服、可愛いクル〜♪」

星空みゆき「えへへ♪ でしょでしょ〜? 浴衣、って言うの!」

 クルクル回って浴衣をお披露目するみゆきの許に、プリキュアのみんなも集まってきた。

 あかねもなおも、やよいもれいかも、みんながみんな可愛い浴衣姿で登場した。

 “ドレスデコル”を使ってキャンディも浴衣姿になり、みんな揃っての夏祭りが始まった。







 バッドエンド王国。

 ジョーカーの八つ当たりに付き合っていたウルフルンにも限界が訪れ、つい先ほどまで気絶していた。

ウルフルン「痛ててて……。クソが…、ジョーカーの野郎…ッ」

 あちこちガタガタな体を動かしながら、ウルフルンは王国の城内を歩いていく。

 しかし、奇妙なことに誰の気配もなくシンッと静まり返っていた。

ウルフルン「何だぁ? オレを残して全員消えちまったのかよ……。おーいッ、誰かいねぇのかッ!」

 しばらく捜して回っていると、いつもの部屋にアカオーニがいることに気付いた。

ウルフルン「何だよ、いるんじゃねぇか」

アカオーニ「んあ? ウルフルン……どうしたオニ?」

ウルフルン「オマエらが返事もしねぇから捜し回ってたんだろうが。おい、マジョリーナとジョーカーは何処に行った?」

 アカオーニは、ウルフルンが目覚める少し前のことを簡単に話した。

アカオーニ「マジョリーナはジョーカーを連れて気分転換に出掛けたオニ。今頃は多分、人間界だオニ」

ウルフルン「あぁん? 気分転換だと?」

 あのマジョリーナがジョーカーを誘うとは珍しい、と思ったが、その考えはすぐに払拭される。

 気絶したウルフルンを相手にすることが出来なくなったジョーカーの牙が、自分の身に降り掛かることを恐れて胡麻でも摺ったのだろう。

アカオーニ「ウルフルンも行ってくるオニ?」

ウルフルン「冗談じゃねぇぜッ。やっとあの野郎から解放されたってのに、わざわざ出向くほどマゾになった覚えはねぇんだよ」

 そう言って休憩時間を取ろうとするウルフルンだったが、一つの疑問が生まれた。

 疑問というよりは、意外な事実といった方だが。

ウルフルン「そういうオマエこそ珍しいじゃねぇか。あいつらが遊びに行ったってのに留守番なんてよぉ」

アカオーニ「………ちょっと考え事オニ…」

 遊びに行く、というならアカオーニだって同行しても不思議ではない。

 しかし、何やらアカオーニはアカオーニで珍しく頭を悩ませることでもあるようだ。

 ウルフルンの知ったことではないため、あまり深入りはしなかったが。

アカオーニ「…………」

 人間界の海に赴いた時の出来事が、アカオーニの脳内を巡っている。

 何故か、あの出来事が気になって仕方がなかったのだ。

アカオーニ「(むぅ……、俺様…どうしちゃったオニ…?)」

 未来への歯車は、少しずつ動き始めていく。







 一方、夏祭りで賑わう商店街の中を、キャンディを連れたみゆきたちが歩いていく。

 屋台や和太鼓の音は、キラキラとした瞳を向けるキャンディの好奇心を強く刺激する。

キャンディ「すごいクル……。見たことない物がいっぱいクルぅッ」

 キャンディにとってお祭りは初めてのもの。

 何から何までが輝いて見えた。

 しかし、ただ楽しんでいくだけの今回ではない。

キャンディ「クルぅ〜♪ こうがたちとも遊びたいクル〜」

星空みゆき「へ? こうが、って?」

日野あかね「ーーーぃッ!!?」

緑川なお「あッ、あーあーあーッ!! そ、そういえばキャンディ! 夏祭りと言えば、やっぱり打ち上げ花火が欠かせないんだよねぇー!!」

キャンディ「何そりクル!?」

 急な話題転換だったが、どうやらキャンディは興味を示してくれたらしい。

星空みゆき「空にドーンッて、すっごくおっきなお花が咲くんだよ♪」

キャンディ「お花ぁ……ッ」

 どうやらキャンディの気は逸れたらしい。

 安堵の溜息を吐くあかねたちだったが、二人の浴衣の裾をクイクイと引く手があった。

日野あかね「ん?」

緑川なお「え?」

 振り返れば、近場の茂みの中から腕が伸びてきていた。

 茂みの中を覗いてみれば、目を血走らせたこうががあかねたちを睨んでいる。

星空こうが「おい…。あのクソ妖精、一度絞め殺していいか…?」

日野あかね「ダメに決まってるやろ、アホか」

緑川なお「ま、まぁ…あたしたちも肝が冷えたけどさ…」

 怒りでワナワナと震えるこうがに対し、傍らのがどうは溜息を吐く。

青木がどう「こちらとしても、あまり大きな関わりは控えたいのです……。どんな影響が未来に反映されるか分からないのですよ……」

星空こうが「オレたちの存在そのものが消えてなくなっちまうかもしれねぇんだッ。それを脳みそに擦り込んでおけッ」

 自分たちの命、というより存在そのものを賭けた勝負をしているのだ。

 ここまで必死になるのも頷けるが……どうやら、それだけではないらしい。

日野あかね「そんで? あんたらの手にある“それ”は何や?」

星空こうが「あぁ? 見て分かんねぇのか?」

 こうがの手にはヤキソバやたこ焼きなどのパックが、がどうの手にはチョコバナナや綿菓子が。

 そして、浴衣姿ののどかの手にはリンゴ飴が握られていた。

黄瀬のどか「夏祭り、満喫中〜♪」

青木がどう「まぁ、せっかくですし……」

星空こうが「楽しまなきゃ損だろうが!」

日野あかね「あんたら還る気ないやろ?」







 一方、のどかたちが立ち寄っていたリンゴ飴の屋台から小さな人影が顔を出した。

 購入したリンゴ飴を舐めて、マジョリーナは声を上げる。

マジョリーナ「美味い! あたしの作る毒林檎より美味しいだわさ……ッ」

ジョーカー「ツッコミ待ちなら相手にしませんよ……」

マジョリーナ「むぐぐ……」

 マジョリーナは、ジョーカーの機嫌を取るために人間界の夏祭りに訪れていた。

 しかし、当人のジョーカーは気分を良くするどころか機嫌が悪くなっていた。

マジョリーナ「(くぅ…ッ。このままじゃ…いずれ、このあたしもウルフルンの二の舞いだわさ……)」

ジョーカー「それにしても、凄い人混みですねぇ〜……んふふ♪ これならば、さぞかし大量のバッドエナジーを吸収できたでしょに……チッ」

マジョリーナ「……ッ」

 もうバッドエナジーを吸収することに意味はない。

 ピエーロの復活は断たれ、世界をバッドエンドに染める手段も目的も失われた。

 今のジョーカーには、この世で生きていくだけの意味まで奪われたような気分だった。

マジョリーナ「(…何であたしらが、こんな窮屈な思いをしなけりゃならないだわさ……。それもこれも、みーんなプリキュアと第三勢力のせいだわさ…………って、んん…ッ?)」

 リンゴ飴を舐めながら怒りを露わにするマジョリーナの目に、とある光景が映り込んだ。

マジョリーナ「…あッ、あれは!!」

ジョーカー「ん〜…?」

 マジョリーナの反応にジョーカーも気付いて視線を向ける。

 その視線の先には……。
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