3つの恋が実るミライ♪
□04 豊かな自然と迫り来る危機・後編
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翌日の朝方。
川辺にて、ブーツを脱いで足を冷やしていたウルフルンはやっと暑さから逃れていた。
ウルフルン「ふぅ〜…、こりゃ最高だぜぇ…」
しかし、これで休息にはならない。
ウルフルン「落ち着いたら、腹減ってきたぁ……。ここんとこ暑くて、食欲もなかったからなぁ……」
次に待っていたのは空腹感。
夏バテを患った際には、必ずと言っていいほど誰もが経験することである。
と、そんな時だった。
チャポンッ、と水面が跳ねて辺りに水音が反響した。
ウルフルン「…あぁん?」
周囲には誰もいなかったため、不審に思ったウルフルンが何気なく目を向けてみると……そこには水面下から顔を覗かせる何者かの姿があった。
ウルフルン「あぁッ!!? 何だぁ…オマエ……?」
そんな言葉を呟いた瞬間、急速に接近してきた何者かがウルフルンの両足首を掴み取る。
ウルフルン「ーーーッ!!? うぇ、おおぁッ!!? ああああああッ!!!!」
川の中に引きずり込まれたものの、どういうわけか解放は早かった。
すぐさま自由を取り戻したウルフルンは、ブーツを持って川を離れていく。
ウルフルン「……ッ!! な、何だ…ありゃぁ…ッ!!」
驚愕と動揺が入り混ぜになった心境ながら、ウルフルンはあの者の表情が忘れられない。
ウルフルンとは違う何かを見て……もしくは思い浮かべて、心の底から恐怖している。
あれは、そんな表情を浮かべていた。
一方、みゆきたちはタエの畑の手入れを手伝うことになった。
その準備として縁側に集まっていた時のこと。
星空みゆき「…あれ? ウルフルンッ!!?」
偶然にも、川辺から逃げ帰ってきたウルフルンと遭遇してしまった。
ウルフルン「あぁん? あぁ!! オマエら!! 何でここにッ!?」
日野あかね「そっちこそ! そんで、何でそんなにビショビショやねんッ」
こうがたちから、今回はバッドエンド王国から誰も連れて来ていないことは知らされている。
この展開はあかねやなお、そしてキャンディにとって予想外の事態だった。
それは当然ながら、この様子を眺めていたこうがたちも同じこと。
星空こうが「(何で親父がここにぃ!!?)」
青木がどう「(ふむ……だが、これは結果オーライかもしれないな)」
畑の中に身を隠す三人は、ウルフルンの登場に少しだけ驚いたものの、この展開を好機と見ていた。
こうがが採った(盗った)トマトを食べながら、のどかはがどうへと問いかける。
黄瀬のどか「(みちにい、どうするの? まだ向こうには何も伝えてないんだよ?)」
青木がどう「(僕もその点に悩んでいたけど……どうやら、いらない世話だったみたいだな。ほら)」
そう言って、がどうはタエの家の縁側を指差した。
そこでは、三人の心境など知らずに着々と展開が進んでいた。
ウルフルンは解せなかった。
というのも、タエが用意した麦わら帽子を被されて、何故かプリキュアたちと畑まで同行させられているのだ。
ウルフルン「って、ちょっと待て!! おいッ!!」
星空タエ「……?」
ウルフルン「何だ、オマエは!! このオレが怖くねぇのか!?」
星空タエ「怖い? 可愛い狐じゃないの」
ウルフルン「狐じゃねぇよ!! 狼だッ!!」
星空タエ「あら、そう? なぁんて可愛らしい」
ブフッ!! と、あかねが思わず吹き出してしまった。
それに続いて、他のみんなも笑いを堪えていく。
ウルフルン「……ッ!! お、狼の恐ろしさ…ッ、思い知らせてやる…ッ!!」
日野あかね「あーあー、はいはいはいッ。笑ったんは謝るから、さっさと畑の手伝い始めよか」
ウルフルン「あ、あぁん!?」
あかねに続いて、なおもウルフルンの腕を引いてタエから遠退かせる。
とりあえず何らかのフラグを立てよう、という気よりも、まずはタエから離しておこう、と思っての行動だった。
ウルフルン「待てよ、テメェら!! オレは手伝うなんざ言ってねぇだろ!」
緑川なお「でも、ほら。もう麦わら帽子も被っちゃったし」
日野あかね「ここまで来たら付き合わんと。ノリの悪い男やで〜?」
ウルフルン「うるせぇ!! 大きなお世話だ!!」
と、その時だった。
像デコルを起動させたキャンディが、あかねとなおとウルフルンの三人に向けて水撒き用の水を一気に解き放った。
日野あかね「うぶッ!!」
緑川なお「うわッ!!」
ウルフルン「うぇっぷッ!!」
キャンディ「キャンディも水撒きの手伝い、やるクルぅ〜♪」
悪気はなかったのか、それともワザとなのか。
どちらかは知らないが、これでウルフルンのイライラも頂点に立った。
ウルフルン「…上等だ…ッ。あのチビ、覚悟しやがれ……!!」
タエからキャンディへと獲物が変更され、ウルフルンはタエの畑へと足を踏み入れる。
と、その途中で不意に立ち止まる。
ウルフルン「…あん?」
タエやキャンディ、そしてプリキュアしか目に入っていなかったウルフルンが、ようやく辺り一帯に広がった野菜の姿に気付いたのだ。
ウルフルン「おぉ!! 何だこりゃ、スゲェ!!」
忘れかけていた空腹感が再び押し寄せてくる。
思わず、身近なキュウリへと手を伸ばしかけたところで、ペチンッ、と傍らのみゆきがウルフルンの手を叩いた。
ウルフルン「あ痛ぇ! 何すんだッ」
星空みゆき「ここはおばあちゃんの畑なの。勝手に取ったらダーメッ」
ウルフルン「何だよ、一つくらい! こんだけあんだから別にいいだろうがッ」
星空みゆき「ダメッたらダメ! そんなに食べたいなら、ちゃんとお手伝いしてからにしてよ。はいッ」
そう言って、みゆきはウルフルンにタオルと軍手を手渡した。
ウルフルン「……?」
星空みゆき「土に生えてる雑草を取っていくの。出来るでしょ?」
ウルフルン「ケッ、くっだらねぇ!! 誰がオマエらの手伝いなんか……ッ」
星空みゆき「出来ないの?」
ウルフルン「…………」
キッパリと突き返されると、え? この程度も出来ないのぉ? と言われてる気分になる。
もちろん、みゆきの返答に他意はないのだが、今のウルフルンは重なるアクシデントの連続で状況判断能力が鈍っていた。
ウルフルン「チッ! 雑草を抜き取りゃいいんだろうがッ。そのくらい簡単だッ!!」
星空みゆき「……?」
急にやる気を見せたウルフルンに、他意がなかったみゆきは少しだけ驚いた。
そして、すぐに自分も手伝いの作業に取り掛かったのだった。