3つの恋が実るミライ♪

□05 悪戯絡みの肝試し
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 バッドエンド王国。

 ウルフルンとアカオーニとジョーカーの三人は、何処を見るでもなくボーッとしている。

マジョリーナ「お前たち、どうしただわさ。ここ最近、様子がおかしいだわさ」

ウルフルン「あ? あー……」

アカオーニ「むぅ…」

ジョーカー「………」

 マジョリーナの問いにも、どう返答するべきか悩んでいる節が見え隠れしている。

 ピエーロの復活が不可能となった今、このバッドエンド王国が抱えている問題の一つと言えば、やはり彼女たちが挙げられる。

マジョリーナ「まさか、プリキュア絡みで何かあっただわさ?」

ウルフルン「うぐッ!!」

アカオーニ「プリキュアッ」

ジョーカー「……ッ」

 あからさまに動じる三人を見て、マジョリーナは顎に手を当てて少しだけ考える。

 何もやることがなくて退屈しているのだ。

 もしかしたら、自分にとっても面白いものを見つけたかもしれない。

マジョリーナ「ふむ……。それなら人間界にでも行ってみるだわさ。あたしらの目的が断たれた今、プリキュアを倒して憂さ晴らしだわさ」

 マジョリーナの宣言に、最初に便乗したのはジョーカーだった。

ジョーカー「…そう、ですね……。ワタシたちのやるべきことなど最初から変わりません…」

ウルフルン「うだうだと悩むのはオレらしくもねぇ…。目障りな連中は片付けるに限る…」

アカオーニ「今日がプリキュアの最後の日だオニッ。俺様だって頑張っちゃうオニッ」

 闘志を燃やして人間界に降りる決意を固める三人。

 だがマジョリーナの目には、三人とも自分自身に言い聞かせているように見えて仕方がなかった。

マジョリーナ「(こいつら…一体どうしただわさ…)」







 人間界、七色ヶ丘中学。

 渡り廊下の屋根の上で、こうがたち三人はローブを着たまま寝そべっていた。

 さすがに暑いためフードは被っていない。

青木がどう「今日はお休みですね」

黄瀬のどか「お休み?」

青木がどう「あかねさんから先日、今日が登校日だと連絡があった」

星空こうが「登校日だぁ?」

 みゆきたちの夏休みも残り僅かとなった本日、七色ヶ丘に生徒たちが顔を出す登校日を迎えていた。

 みゆきたちを自由に動かすことが出来ない以上、こうがたちも自由には動けない。

青木がどう「海水浴や夏祭り。田舎暮らしの祖母の家、などなど。フラグを立たせるにはイベントが必要不可欠」

星空こうが「だが、さすがに登校日の今日に仕掛けられるだけのイベントもない、ってわけか……」

黄瀬のどか「それで、わたしたちも今日はお休みなんだね?」

青木がどう「正解」

星空こうが「まぁ、のんびり日光浴でもしながら昼寝するのも悪くねぇか…………お?」

青木がどう「ん?」

 ふと、聞き慣れた声たちが渡り廊下に向かって近付いてくるのを感じた。

 こうがたちは、慌てて渡り廊下の屋根上から遠ざかり、壁を駆けるようにして屋上まで跳び上がる。

 チラッと顔だけ出して渡り廊下を確認してみると、予想通りみゆきたち五人の姿があった。

黄瀬のどか「…あれ? パパたちもいるぅ!」

星空こうが「あぁん…?」

 視線を別の方へと向けてみれば、確かに渡り廊下のすぐ近くにバッドエンド王国の面々の姿まで確認できた。

 どうやら、こうがたちと同じようにプリキュアの声を聞いて校舎の陰に隠れた様子だが、幸いにもこちらには気付いていないようだ。

星空こうが「おいおい…、今日に限ってバッドエンド王国は全員集まってやがるぞ…」

青木がどう「……タイミングは最悪だな…本当に…」

黄瀬のどか「ママたち、何を話してるのかな……」

 のどかの好奇心に同調するように、こうがは自慢の聴覚を活かして耳を澄ませる。

 がどうたちに内容を伝えながら、こうがはみゆきたちの会話に聞き入っていった。







 渡り廊下を歩きながら、やよいがワクワクした様子であかねに訊ねる。

黄瀬やよい「で? どうするの、肝試しッ」

日野あかね「ん〜……せやなぁ…」

緑川なお「…っていうか、本当にやるのぉ……?」

日野あかね「当然や。これは“修行”や! オバケ克服しよ〜♪」

 今日の朝方、やよいの持って来た幽霊絡みの本に、なおは心底怯えていた。

 実は、なおは幽霊やオバケの類いが大の苦手なのである。

星空みゆき「わたしも妖怪とかなら兎も角、オバケはちょっと怖いな……」

キャンディ「キャンディは、何にも怖くないクルぅ♪」

 なおが溜息を吐いたと同時、みゆきも少しだけ不満を呟く。

 どうやら、なおに続いてみゆきもオバケは苦手なようだ。

日野あかね「でも、何しよか……」

青木れいか「…あ……生徒会の意見箱に入っていた“学校の怖い話”を、一つずつ調べてみるのは如何でしょう?」

 れいかの提案に、一斉に全員が振り返る。

 もちろん、その内の二名ほどが苦い表情を浮かべていることなど言うまでもない。

日野あかね「おぉ! ええやん、それッ」

黄瀬やよい「面白そうッ♪」

緑川なお「ぇぇッ!? 何処が面白いのよぉ、何処がッ」

 どうやら、みんなで学校の中を回って肝試しをする予定らしい。

 みゆきたちが渡り廊下から出ていった後、こうがは悪人のような笑みを浮かべて屋上に立つ。

星空こうが「………なぁ…? オレ、めちゃくちゃ面白れぇこと思い付いちまったぜぇ?」

青木がどう「予想は出来るが……生憎と僕も、僕たちの利益になり得る展開が想定できた」

黄瀬のどか「ママもパパも勢揃いだし、もしかしたら、だよね? くふふ♪」

 キラッ、と目を輝かせ、ニヤリ、と笑い合う三人。

 言葉を交わす必要もないほど、三人の意見は完全に一致した。

 それと同時に、休みを取るはずだった本日の予定は埋め尽くされ、今日も自分たちの未来を叶えるための作業が再開される。







 プリキュアたちの会話は、校舎の陰に隠れていたバッドエンド側にも聞こえていた。

ウルフルン「肝試しだと…」

アカオーニ「あいつら、自分たちの学校で怖い遊びを始めるつもりオニ…?」

ジョーカー「ですが、これはワタシたちにとっても面白い展開になりましたねぇ♪」

 ジョーカーは、プリキュアたちの会話を聞いて悪巧みを思い付いていた。

ジョーカー「肝試しをする彼女たちの期待に応えて差し上げましょう♪ ワタシたちで、プリキュアを深淵の恐怖へと突き落とすのですッ」

ウルフルン「なぁるほどぉ♪」

アカオーニ「それは最高だオニッ。俺様もワクワクしてきたオニ!」

ウルフルン「ウルッフフフ! 覚悟しろよ、プリキュアぁッ。腹の底から泣き喚かせてやるぜぇ!」

 テンションが復活した三人を見て、マジョリーナも溜息を吐いた。

 一応、これは安堵の部類だろう。

マジョリーナ「ふぅ…、まったく世話を焼かせるヤツらだわさ…」

 ずっとあのままの状態が続いていては、マジョリーナも対応に困ってしまう。

 理由は感心できないが、マジョリーナも三人のことを“とりあえず”は心配していたのだった。

 と、その時……ふと上を見上げたマジョリーナはあるものに気付いた。

マジョリーナ「む? あれは……」

 渡り廊下と隣接している校舎の屋上。

 そこに、見覚えのあるローブを着た見覚えのある顔触れが三人ほど立っている。

 何かヒソヒソと話し合っているようで、マジョリーナに見つかったことに気付いていない様子だ。

マジョリーナ「(あいつら夏祭りの時の…ッ。それに、あの姿は第三勢力の連中だわさッ。どういうことだわさ!?)」

 疑問が解決する前に、こうがたちの方が姿を消していく。

 その後、ウルフルンたちも悪戯の準備に取り掛かったため、結局マジョリーナの疑問が解決することはなかった。
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