3つの恋が実るミライ♪

□07 アスレチック島・中編
1ページ/4ページ


 マジョリーナの発明品“ゲームニスイコマレ〜ル”を、がどうが改造して作り上げた世界。

 全十一種目の競技が用意された“アスレチック島(アイランド)”にて、プリキュアとバッドエンド組の面々は競技に奔走していた。

 二人一組のペアを組み、一つの競技を一時間以内にクリアーしていかなくてはならない。

 もしも制限時間を過ぎてしまった場合はゲームオーバーとなり、二度と元の世界には戻れなくなる。

 星空みゆきとウルフルンのウルみゆペア。

 黄瀬やよいとアカオーニのアカやよペア。

 青木れいかとジョーカーのジョカれいペア。

 日野あかねと緑川なおのあかなおペア。

 競技コースが四組分しかなかったため、キャンディとマジョリーナは未参加とし、応援組に入っていた。



 もちろん、これらの組み合わせは全て、このゲームを企てた第三勢力の思惑通りである。



 あかねとなおを競技内でのフォロー役に残し、三組の恋仲を大きく進展させるために企てた計画だった。

 ゲーム開始から約二時間が経過してしまったお昼時の現在。

 第三競技が始まった彼らを待ち受けるのは、轟々と音を立てて渦巻く湖を渡る“チームワークラリー”だった。







 直径10pほどの石の足場を飛び歩くようにして渡っていかなくてはならない。

 また、このゲームをクリアーするにはペアの二人がゴールを果たさなくてはならないため、どちらか一人でもゴールできれば良いわけではない。

 また、助け合いが許されているのはペア同士のみで、ペア以外の誰かがピンチになろうと他のペアである限りは手出しが出来ないのだ。

日野あかね「(ウチらの存在意義って、いっつも危なっかしいことばっかりやな……)」

緑川なお「(仕方ないよ。ここは頑張ろう)」

 フォローを任されている二人だが、逆に言えば、他のペアを助けてはいけないルールを破っていることを他のペアたちに気付かれてはいけないことになる。

 お助け役、ではなく、フォロー役、と言い回しされていることにも理由があったようだ。

アカオーニ「やよい、俺様に掴まるオニッ」

黄瀬やよい「う、うん…。慎重にね…?」

 ただでさえ大きな足を持っているアカオーニは、少しでも重心移動を誤れば渦に呑まれてしまうだろう。

 だが、その代わりにペアのやよいを大きな腕で抱えることで文字通り“二人一組”となり、アカオーニさえ気を付ければやよいが湖に落ちることはありえない。

 加えて、二人同時にゴールを果たすことも出来る。

ジョーカー「随分とのんびり屋さんですねぇ〜、お先に失礼いたしまーす♪」

青木れいか「早ければ良いというわけではありません。慎重に、正確に進むべきです」

 逆に、ジョカれいペアは単独で動いていた。

 曲芸師のようにクルクルと回りながら、手足を器用に使って足場から足場へと飛び移っていくジョーカー。

 一歩一歩、しっかりと足場を踏みしめてマイペースに移動していくれいか。

 チームワークと題されている競技だが、各々に脅威や懸念性がなければ単独で動くことも違反ではなく、むしろ単独で動いた結果が確実なゴールならば選ばない手はない。

青木がどう「…………」

星空こうが「解せないか? でもルールだぜ?」

青木がどう「………分かってる…」

 もちろん、れいかとジョーカーの心の距離を縮めることが目的の第三勢力側としては、あまり良い状況ではなかったが、何も言えないのが現状である。

 そして…………。

星空みゆき「わわわ!! あわわーッ!! お、落ちるぅッ!!」

ウルフルン「だーッ!! 畜生!! これじゃ全然進めねぇじゃねぇか!!」

 一方、ウルみゆペアは困難な状況に立たされていた。

 どちらかといえば運動神経が良いウルフルンに対して、バランス感覚から不安定なみゆきは足場の上でグラグラグラグラ。

 気が気じゃないウルフルンまで先に進めなくなっていた。

 改めて言うが、このゲームはどちらか一人がゴールできれば良いわけではなく、ペアの二人がゴールして初めてクリアーになるのだ。

日野あかね「みゆきー、はよ行かなアカンでー」

緑川なお「頑張ってッ、みゆきちゃんッ」

星空みゆき「そんなこと言ったって〜……」

 あかねたちは、お手本を見せるようにして足場から足場へと飛び移っていく。

 みゆきに声をかけるようにしてフォローを送り、そのまま前方を歩いていたウルフルンも追い越していく。

ウルフルン「チッ、四位は確定か……。さっさとゴールして次に進むぞッ。急げ!」

星空みゆき「はっぷっぷー……。こうなったら…ッ、えいやぁッ!!」

 みゆきは思い切って一つ一つの足場をピョンピョンと連続で飛び越えていく。

 思い切りが肝心とは言うが、滑り落ちる危険性もあるため褒められた行動ではない。

 そして、ついに……。



 ツルンッ、と…みゆきの足先が石の足場から滑り落ちた。

星空みゆき「……ぁ」

ウルフルン「ーーーッ!!?」

 ウルフルンの見ている前で、みゆきの体が湖に沈む。



 ドボォンッ!! と水飛沫が立ち、みゆきの姿が第三競技の地上から消えた。

日野あかね「ーーー!? みゆきぃ!!」

緑川なお「…うそッ。まさか、みゆきちゃんがッ」

ウルフルン「…クソッタレがぁ!!」

 競技開始前、スプーンは言っていた。

 もしも湖に落ちた場合は渦に呑まれる前に脱出しろ、と……。

 つまり湖に落ちたとしても、そこから這い上がってゴールすればゲームオーバーにはならず、渦に呑まれなければ湖に落ちてしまっても助かる可能性があるのだ。

 ウルフルンは迷わなかった。

 姿を消したみゆきを助けるため、湖の中へと頭からダイブする。

星空こうが「ったく、お袋はいつの時代も変わらねぇのかよッ。ここはオレもッ」

青木がどう「待て、幸牙。僕たちは待つべきだ」

 ウルフルンに続き、競技の様子を眺めていたこうがも救出に向かおうとするが、がどうが制止に入る。

黄瀬のどか「で、でも…もしもこうちゃんのママに何かあったら……わたしたちの未来が…ッ」

青木がどう「母さんの身を心配するなら、父さんの力を信じてみたらどうだい? あの二人は幸牙の両親だろ?」

星空こうが「…………」

 こうがは湖を眺め、姿を消した両親の顔を思い浮かべる。

 一度だけ舌打ちすると、その場にドカッと座り込んだ。

星空こうが「お袋を助けられなけりゃ…、絶対に許さねぇからな……。クソ親父…」







 湖に巻き起こる渦の流れは強力で、誤って水に入ってしまった者ならば一瞬で意識を奪われるだろう。

 ウルフルンが追い掛けるみゆきの姿も、既に流れから抵抗している様子はない。

ウルフルン「(クソ…ッ!! このままじゃ二人とも溺死確定だ…ッ!!)」

 流されていたみゆきに追い付き、ぐったりとした体を抱えて水面に向けて浮上する。

 渦の流れに逆らいながら、ウルフルンは湖の水面から顔を出した。

ウルフルン「ーーーブッハァァァアアアアア!!!!」

アカオーニ「あぁ! 見つけたオニ!!」

青木れいか「みゆきさんはッ!? みゆきさんは無事ですか!?」

ウルフルン「おい、みゆきッ! しっかりしろッ」

星空みゆき「………ッ…ぅ……ッ」

 ウルフルンの声が耳元に響き、みゆきが首を動かした。

 そして次の瞬間、涙目になりながら鼻と口から大量に水を吐き出した。

星空みゆき「うっぷ!! げっほ!! うぇぇぇぇんッ」

ウルフルン「……ふぅ…、とりあえず…助かったか……」

 救出が早かったおかげで、みゆきは溺死の未来を免れていた。

 これはウルフルンの知ったことではないが、もしもウルフルンがみゆきを助けに行くため即座に湖に飛び込んでいなかったら……救出の選択を一瞬でも悩んでいたら……みゆきの命はなかったかもしれない。







 第三競技は、ジョカれいペアが一位でゴール。

 二位から順番にアカやよペアとあかなおペアが続き、アクシデントがあったウルみゆペアも四位でゴールを果たした。

 ちょうど時刻も午後一時が近くなっていたため、みゆきの体調回復の意味も兼ねてお昼休憩を取ることになった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ