3つの恋が実るミライ♪

□08 アスレチック島・後編
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 青木れいかの衣服を着たジョーカーが、ワザとゴールまでの道のりを遅らせながら進んでくる。

 まるでパリコレに出場しているかのようにポーズを取りながらクルクルと回っているジョーカーを見て、ジョーカーの衣服を着ているれいかはプルプルと肩を震わせて俯いていた。

星空みゆき「れ、れいかちゃん! しっかりして!」

日野あかね「こらー! 時間切れになってまうやろが!」

ジョーカー「え〜、もうちょっと楽しませてくださいよぉ〜」

 と、言いながらも時間切れを迎えては自分にも不利益なためジョーカーはゴールを急ぎ始めた。

 ジョーカーがゴールする時には、既にれいかがボックスの中でスタンバイしている。

ジョーカー「せっかちですねぇ」

 ジョーカーがもう一つのボックスに入って、ようやく全員が元通りの姿を取り戻したのだった。

青木れいか「…………」

ジョーカー「いや〜〜♪ 楽しかったですねぇ、れいかさん♪」

青木れいか「……ッ」

 キッ! と涙目で睨むれいかは、おもむろに手を振り上げて……。

ジョーカー「…………あら?」

 次の瞬間、スパーンッ! と、平手打ちの乾いた音が辺りに響き渡った。







 第七競技を控えた面々の前に、なだらかな坂道が広がっていた。

スプーン「第七競技は“坂道ダッシュ”でーす! 坂道を駆けあがって、頂上まで到達してくださーい!」

黄瀬やよい「え? それだけでいいの?」

青木れいか「いや、きっと何かあるはずです。みなさん、油断しないでくださいッ」

 各々が身構える中、スプーンは競技開始の合図を送る。

スプーン「位置について! よーい……ドン!」

 皆が一斉に坂道を駆け上がり始める。

 と、早くもアクシデントが発生した。

アカオーニ「ウッハハハ!! これは楽勝だオニぃ!」

 何の苦も無く駆け上がっていたアカオーニの足元に、メシッ、という嫌な音が聞こえてきた。

アカオーニ「オニ?」

 次の瞬間、大きく陥没した地面の中に、アカオーニの体が真っ逆さまに転落する。

アカオーニ「落とし穴オニぃぃぃ!!!!」

 土煙を上げて頭から落ちたアカオーニは、この競技にトラップが仕掛けられていることを証明してくれた。

ウルフルン「何だそりゃ!!? ただ駆け上がるだけじゃ危ねぇってわけかッ」

日野あかね「注意せなアカンでぇ!」

 各々が足元を注意しながら坂道を上っていく。

 だが、脅威はそこだけではない。

 坂道の上を横断する形で、大量の銀蠅が群を成して横断する。

星空みゆき「は、ハエッ!?」

緑川なお「ーーーいぃやぁぁぁあああああッ!!!!」

ウルフルン「クソがぁ!! しゃらくせぇッ!!」

 ハエに罪はないが、ウルフルンが突っ切る最中に蹴散らされていく。

 それに対して、なおは反対方向へと全力疾走していた。

日野あかね「って、なおッ!! 何処行くねん!!」

 一方、落とし穴から抜け出したアカオーニは遅れを取り戻そうと一気に走り込む。

 その道中、何故か地に倒れているやよいを見つけた。

アカオーニ「オニ? どうしたオニッ」

 アカオーニが駆け寄ると、今にも泣き出しそうなやよいがアカオーニへと視線を向けた。

 その足元には何かの植物のツルが掛けられており、膝を擦り剥いていたのだった。

アカオーニ「ブフゥ!! お前、転んだオニ!? ウッハハハ!! 情けないオニ! 間抜けオニ!」

黄瀬やよい「うわぁぁぁん! だってだってぇ!!」

アカオーニ「ウッハハハ!! 泣き虫だオニぃ!!」

黄瀬やよい「ぅぅぅ〜ッ!! アカオーニだって、落とし穴に真っ先に落っこちたくせにぃ!!」

 腹を抱えて大いに笑ったアカオーニは、目尻の涙を拭ってやよいへと手を伸ばす。

 擦り剥いた膝に触れないように気を付けながら、その腕でしっかりとやよいの体を支えた。

黄瀬やよい「…え?」

アカオーニ「ふぅ…思いっきり笑ったオニ〜♪ さぁ、さっさと頂上を目指すオニ!」

黄瀬やよい「え? いや、あの…わたし………」

アカオーニ「その足で駆けあがるのは困難オニ! 俺様に任せるオニぃ!」

 言うが早いが、アカオーニはやよいを抱えたまま坂道を上っていく。

 アカオーニの腕にしっかりと抱えられたやよいは、抱っこされたままゴールされることの気恥ずかしさで顔が熱くなる。

 そう……きっと、気恥ずかしいから。

 だから、こんなにも顔が熱くなる。

 やよいは自分自身に言い聞かせ続けた…………その時。

アカオーニ「あああ!! また落とし穴オニぃ!」

黄瀬やよい「おばかぁあああ!!」

 今度は二人揃って真っ逆さまだった。







 第七競技は、数多のトラップを瞬時に掻い潜ったジョカれいペアの圧勝だった。

 それに続いたのは、トラップを受けつつも強引に押し退けてきたウルみゆペア。

 最後は苦戦を強いられたあかなおペアが、アクシデント続きだったアカやよペアにギリギリの差で先にゴール。

 そんな面々を次に待ち受けていたのは、今までにない光景だった。

フォーク「第八競技は“スピードスケート”だ! S字に曲がりくねった氷の道を素早く突き進めぇッ」

青木れいか「ほぉ…スケートですか…」

星空みゆき「ぇぇ〜…スケートかぁ…」

 キラン、と瞳を輝かせるれいかに対し、みゆきはドンヨリとしていた。

 この様子から、もう戦況のほどは見え始めているだろう。

フォーク「それじゃあ行くぜぇ? よーい……ドンッ!!」

 またしても、真っ先に一歩前へと躍り出たのはジョカれいペアの二人だった。

 スイスイと前方を滑っていくれいかを追うようにして、少し後ろをジョーカーが滑っていく。

ジョーカー「くぅ…ッ……さすがですね…」

青木れいか「ふふ。氷の上では、わたしの方が有利ですよ?」

ジョーカー「……ッ、負けませんッ。お待ちなさーい!」

青木れいか「待ちませーん♪ 悔しいのでしたら、捕まえてごらんなさーい♪」

 上機嫌になったれいかは気付いているのだろうか。

 典型的なカップルが交わす追いかけっこの図になっていることに。

日野あかね「にしし♪ ほな、ウチらの行くでぇ!」

緑川なお「うんッ」

 一方、運動に関してズバ抜けている二人も、息ピッタリでスタートしていく。

 スケートは得意ではなさそうだが、下手な様子も見られない。

 きっと苦手というわけでもないのだろう。

星空みゆき「よ、よぉし……ッ。次はわたしが…ッ!? って!! わわわ!! ちょっ、きゃあ!!」

 一歩踏み出しただけで、結果は見えた。

 みゆきは顔面から氷の道に突っ込むようにして、お尻を突き出してクルクルと滑っていく。

 もちろん、倒れたままではS字の道を進めやしない。

ウルフルン「ウルッフフフ!! 何て無様な格好だぁ!! オレを笑い殺す気かよ、あぁ?」

星空みゆき「はっぷっぷー! こういうの苦手なんだってばぁ!!」

 そんなみゆきに見せつけるように、やよいの手を引いたアカオーニがスイ〜ッと滑っていく。

 その様子はスピードスケートではなく、ただのスケートでしかなかったが、アカオーニに手を引かれて滑っていくやよいが転倒するような気配はない。

ウルフルン「アカオーニの野郎、バランス感覚とかは優れてやがるからなぁ…。あの巨体で…」

星空みゆき「わぁぁ……」

 みゆきたちは知らないが、海の家に行った時もアカオーニは波乗りを楽しんでいた。

 と言っても、その後は色々あって転倒していたため、きっと周囲の環境に流されればアウトなのだろうが、今回は大丈夫だろう。

ウルフルン「ほら」

星空みゆき「え?」

 スッ、と差し出されたウルフルンの手を、みゆきはボケーッと眺めてしまった。

ウルフルン「え? じゃねぇよ。オレらがビリになっちまっただろうが。さっさと滑るぞ」

 みゆきの手を掴み取って立ち上がらせたウルフルン。

 そこには、先のアカやよペアと同様に“一緒に滑る”という意思が見えていた。
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