3つの恋が実るミライ♪
□11 あべこべ妖怪オールスターズ
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時代劇映画村。
文字通り、ここは時代劇の映画撮影が行われている場所であり、みゆきたちは見学に訪れていた。
そんな中、あらゆる映画作品の紹介を兼ねたポスターの一覧を見て合わることが出来る“時代劇ギャラリー”にて。
ポップ「おぉ! これが噂の侍映画でござるか……」
緑川なお「侍じゃなくて、妖怪映画」
新作映画“妖怪オールスターDX”のポスターを前に、なおの抱えるカバンの中からポップが顔を出してくる。
実は今、とある事情でメルヘンランドからポップが人間界を訪れていたのだった。
日野あかね「ところでポップ、人間界に来た本来の目的っちゅーのはええんか?」
ポップ「侍映画と聞いて参加せぬようでは、末代までの恥でござる」
日野あかね「にしし、何やそれ。ていうか、参加はせぇへんで?」
どうやら、それほど切羽詰った状況でもないようだ。
一方で、テンションの上がったみゆきとやよいが女忍者くノ一VS妖怪女郎蜘蛛の演出で遊び始めていた。
そんな様子を、ジーと見つめている一人の男がいた。
深澤監督「ん〜〜〜ッ」
みゆきとやよいに便乗して、新たに加わったあかねとなおにも注目していき、サングラスの奥に光る双眼が何かを捉える。
アシスタント「どうしました? 監督」
深澤監督「んん! ん〜〜ッ!! おぉぉ!! 閃いたぁ〜ッ!!」
言うが早いが、みゆきたちを見て新しいアイディアを思い付いた映画監督“深澤”は、声高らかにみゆきたちへと駆け寄っていった。
深澤監督「君たちぃ!! 映画に出てみないかぁ!?」
そして、みゆきたちがスカウトされた瞬間を目撃していた影が三つ。
星空こうが「お袋たちが映画出演だぁ? そんな話聞いたことねぇぞ?」
青木がどう「何かが原因で未来が変わったか、もしくは今後に何かが起きて映画自体が中止になるのか……。願わくば前者であってほしいな」
黄瀬のどか「映画出演かぁ〜、いいなぁ……」
こうがたちは、衣装室へと案内されていくみゆきたちを見送りつつ、今後の動きについてまとめておく。
この時代劇映画村に来た理由は、見学でなければ遊びでもない。
青木がどう「バッドエンド王国の方はどうなってるんだい?」
星空こうが「マジョリーナに、この場所のビデオを預けてきた。親父でも誰でもいいから、こっちに興味を向けさせられるようにな」
青木がどう「時代劇映画村に興味、ねぇ……。果たして、向こうの誰かは動いてくれるかな……」
黄瀬のどか「ねぇ? もしも誰も来てくれなかったら、わたしたちはどうするの?」
のどかの質問に、がどうは最終手段の一つとして提案する。
青木がどう「せっかく母さんたちが出演する映画が撮影されるんだ。僕たちも見学していこう」
星空こうが「はははッ、ド素人に役者が務まるかよッ。こりゃ傑作だぜ」
青木がどう「分からないぞ? こういう場面よりも過酷な人生を、母さんたちは何度も経験してきたんだから」
みゆきたちが着替えている間、こうがたちは映画撮影の現場へと先回りしていく。
果たして、この映画はどのような作品に仕上がるのだろうか。
一方バッドエンド王国では、こうがたちから託されていた時代劇映画村の宣言ビデオが再生されていた。
青鬼『愚かな人間どもめぇ! 青鬼様は無敵オニ!』
そして、そのビデオを観ているのは……。
アカオーニ「さっすが鬼世界のスーパースターッ、青鬼様! 青ッ! 青ぉ!!」
青鬼に夢中なアカオーニだった。
どうやら青鬼は、鬼の中でも上位に位置する存在らしい。
アカオーニ「俺様も、こんな風に人間どもを青ざめさせたいオニぃ!!」
紹介映像『遊びにおいでよ!』
アカオーニ「はい!」
紹介映像『時代劇、映画村!』
アカオーニ「はいッ! おおおッ!! ここに行けば、青鬼様に会えるオニ!? こうしちゃいられないオニ! 待ってるオニぃ!!」
ドタバタと慌ただしく駆け出したアカオーニは、人間界の時代劇映画村に向かっていく。
その様子を、半ば呆れた様子で眺めていたマジョリーナが溜息を吐きつつ見送った。
マジョリーナ「まったく、呆れるくらい単純だわさ……」
しかし、目的は達成された。
手鏡を持ったマジョリーナは、すぐさま人間界へと報告していく。
マジョリーナ「こちらマジョリーナだわさ。アカオーニだけだが、時代劇映画村に向かわせただわさ」
青木がどう『………そ、そうですか…』
マジョリーナ「んん? どうしただわさ?」
何やら苦笑いを浮かべている様子が確認できるが、がどうの周りで何が起きているのかマジョリーナには把握できない。
青木がどう『いえ、何でもありません……。ご協力ありがとうございました……』
マジョリーナ「……?」
マジョリーナの報せからアカオーニだけが向かている事実を、こうがとのどかにも教えていった。
黄瀬のどか「パパぁ!! パパが来てくれるの!?」
星空こうが「良かったな、ノン………しかし…」
青木がどう「はぁ……。あの監督、本当に大丈夫だろうか……」
みゆきたちを出演させた映画撮影は、おかしな方向に進んでいた。
台本通りに演出が進まないばかりか、正式な役者さんたちの出番を奪ってしまう始末。
更なる問題は、それでもカメラを回し続けて収録完了のサインを出した深澤監督だった。
星空こうが「あんなメチャクチャな撮影で作品が完成するのか?」
青木がどう「映画の道は奥が深い、ってことで納得しておこう。ぶっつけ本番で撮る主義なら、その場その場のアクシデントさえも呑み込む意気込みかもしれないからね」
黄瀬のどか「ママたち、次のシーンも出るみたいだね?」
星空こうが「そして、もうすぐこの場にノンの親父さんが到着、か……。本当に大丈夫かよ、この映画……」
映画の完成した姿も心配だが、がどうは別の事柄も心配していた。
この時代劇映画村に、想定していなかった役者が参加しているのだ。
青木がどう「(メルヘンランドの妖精、ポップか……。事態が悪い方向に転ばなければいいのですが……)」
あかねたちがいるため、少なからずのフォローはしてくれるだろうが、この場にポップがいることは予想外だった。
青木がどう「(しかし、一体何のために人間界へ……?)」
数々の疑問が残る中、みゆきたちは次の撮影場所へと向かっていく。
そして同じ頃、この時代劇映画村の一角にて、アカオーニが早くも到着していた。