3つの恋が実るミライ♪
□13 ヤキモチ操縦席
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電化製品店の宣伝商品として店の外に設置された、十五万円相当の大型テレビ。
それらを眺めて、やよいは満天の星空のように瞳をキラキラと輝かせていた。
しかし、やよいが注目しているのはテレビではなく、そのテレビに映し出されているコマーシャルの方。
現在放映中のロボットアニメ“鉄人戦士ロボッター”の新商品が宣伝されていたのだ。
黄瀬やよい「ねッ?」
日野あかね「え? 何が??」
ドヤ顔で振り返られても、あかねたちは反応に困ってしまう。
みゆきとキャンディは共感できるものがあったようだが、なおとれいかも今一つな反応。
黄瀬やよい「鉄人戦士ロボッターだよ!! 明日、新しいオモチャが発売するんだぁ! カッコいいよねぇ〜ッ!!」
どうやら、やよいはロボットアニメに夢中らしい。
そんなやよいに続いてみゆきとキャンディも大はしゃぎだが、残る三人は首を傾げるばかり。
緑川なお「弟がよく観てるけど、あたしは……」
日野あかね「ロボットの何が面ろいん?」
青木れいか「わたしは始めて観たので、よく分かりませんでした」
そんな三人にも、やよいは変わることのない瞳をキラキラと輝かせて、明日の新作オモチャの購入に誘っていく。
もう頭の中はロボッターでいっぱいなのだろう。
黄瀬やよい「明日、ロボッターDXを買いに行くから一緒に行こう! 色々教えてあげるッ」
そして、そんな様子のみゆきたち五人を、がどうが店内から覗いていた。
青木がどう「ふむ…。あの二人は昔から共感する部分が多かったんだね…。そして……」
チラッ、と傍らを確認してみる。
この店内でも、外に設置されたテレビの放映内容と同じものが流されている。
そこに釘付けになっているのは、こうがとのどかの二人だった。
青木がどう「まぁ、さすがは親子と言ったところなのかな……」
こうがは、みゆきとウルフルンの息子。
のどかは、やよいとアカオーニの娘。
この状況は、つまりバッドエンド王国の二人も同じようにロボットアニメに興味がある可能性を浮上させていたのだが……。
青木がどう「今はマジョリーナに連絡を取らなくちゃ、何も分からないか」
そう言って、がどうはマジョリーナと連絡を取るために専用の手鏡を取り出した。
鏡の面に自分の顔を映し出した瞬間、そこに映されるのはバッドエンド王国の風景。
そして、マジョリーナの姿だった。
一方、バッドエンド王国。
ロボッターと、ロボッターに対立する悪のロボット“ワルブッター”を並べて、ウルフルンとアカオーニは遊び呆けていた。
ウルフルン「ウルッフフフ! 悪の親玉、ワルブッター様だぞぉ、控えおろぉ〜」
アカオーニ「ずるいオニ! 俺様もワルブッターやりたいオニぃ!」
ウルフルン「オマエはロボッターやってろよ」
アカオーニ「嫌オニぃ! ワルブッター寄越せオニぃ! ロボッター・パーンチ!」
アカオーニが飛ばしたロボッターのロケットパンチを、ウルフルンのワルブッターがヒョイッと避けてみせる。
ウルフルン「おおっと♪ させるか〜! ワルブッター・ビームッ!」
アカオーニ「わー、強いオニ〜♪ やられたオニ〜♪」
そんなやり取りを、マジョリーナは物陰から眺めている。
手鏡で現状を映し出した後、再び鏡の面と向かいあって報告を再開した。
マジョリーナ「見えただわさ?」
青木がどう『ええ…しっかりと…』
マジョリーナ「まったく、何やってるだわさ……。ロボットの何が面白いんだわさ」
青木がどう『ですが、これは利用できるかもしれません。マジョリーナ、一つお願いががあります』
マジョリーナ「んん? 何だわさ?」
がどうは、ちょっとした閃きを思い付いたのだった。
こういったロボットのオモチャを通じて、プリキュアとバッドエンドの絆を深め合い、更に仲良くさせるために。
青木がどう『……と、いう算段なのですが』
マジョリーナ「ふむ、出来なくはないだわさ。やってみるだわさ」
青木がどう『宜しくお願い致します。ちなみに、明日はロボッターの新しいオモチャが発売するそうですので、計画の結構は明日ということで』
マジョリーナ「分かっただわさ」
鏡のやり取りを終えたマジョリーナは、ウルフルンとアカオーニが遊んでいたオモチャ一式を取り上げて部屋の中へと持ち込んでいく。
ウルフルン「あぁ!! 何しやがんだ!!?」
慌てて追いかけた二人がマジョリーナの部屋で見たものは……。
グツグツと不気味に沸騰する鍋の中に放り込まれる、ロボッターとワルブッターの姿だった。
ウルフルン&アカオーニ「「ーーーあああああああああああああああああッ!!!!!! ワルブッタァァァアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」」
そして、ガクッ、と項垂れる二人。
ロボッターはどうでもいいが、ワルブッターの末路はショックだったらしい。
この日の夜。
あかねにも、がどうの立てた明日の計画が報告された。
日野あかね「はぁ? 実際にロボットの操縦をさせるぅ?」
青いがどう『はい。現在、マジョリーナにお願いして“オモチャを本物のロボットに作り替える魔法道具”の開発をお願いしました』
日野あかね「そ、そっか……。せやけど、具体的にはどないするん?」
青木がどう『まず、公への名目上は“ロボッターの宣伝”です。本物のロボッターを作った後、プリキュアとバッドエンド王国の皆さんに乗り込んでいただきます』
がどうが言うには、その後からがどうたちが用意したオリジナルの悪役、もしくはワルブッターを操作して襲い掛かってくるようだ。
もちろん手加減するつもりだが、公には燃える展開と興奮を期待させる。
そうなれば、例えワルブッターが相手でもバッドエンド王国側もロボッターを操作しないわけにはいかないだろう。
青木がどう『結果として、プリキュアとバッドエンドの共闘が成立するわけです。コックピットの方も、二つほど用意する形状にしましょう』
日野あかね「う〜ん……ウチは興味ないから、パッとせぇへんなぁ…。まぁ、計画の内容は分かったで」
青木がどう『ご協力のほど宜しくお願い致します。なおさんにも、改めて僕の方から伝えておきますね』
日野あかね「おおきに。ほな、おやすみなー」
明日の計画は知れ渡った。
だが、あかねもがどうも知るはずがなかった。
計画実行の当日に、この計画は根本からガラガラと崩れていくことになる。