3つの恋が実るミライ♪

□14 恋心?
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 何となくだが、あかねは気付いていた。

 最近、みゆきが今までにも増して上機嫌でいることが多い。

 否、上機嫌と言うよりは、常に楽し気で笑顔を浮かべる頻度が高くなっている。

 授業が終わった何気ない休み時間の今も、鼻歌まで聞こえてくるほどだ。

日野あかね「……なぁ…、みゆき?」

星空みゆき「ん? どうしたの?」

日野あかね「いや、大したことやないけど……最近、何かええことでもあったん?」

星空みゆき「え? いや、別に…」

 特に変わったことはない。

 その言葉に嘘があるようには思えなかった。

 何故なら、ここ数日のみゆきの行動ならあかねを始めとしてやよいもなおもれいかも知っている。

 これと言って変わった出来事があったわけではない。

 まぁ、こうがたちの騒動なら別問題だが……。

日野あかね「(………ん…? こうがたち……?)」

 あかねは少しばかり失念していたかもしれない。

 こうがたちが巻き起こすバッドエンド王国とのドタバタ騒動は、常に騒がしいのが基盤となっている。

 なので、それらの事柄が“変わった出来事”だという認識そのものが薄れてきたが、今のみゆきがそれらの出来事の影響で気分が良くなっているのなら……。

日野あかね「(……いっちょ試してみっか)」

 さり気なく教室を出て女子トイレへと向かっていく。

 用事があるのは、トイレに設置された手洗い場の鏡だった。

日野あかね「マジョリーナ! ちょっとええか?」

 この手の会話も慣れてきたようで、会話できるタイミングや時間帯、更にはマジョリーナが対応できる頃合いまで自然と計れるようになっていた。

 やがて、女子トイレの鏡にマジョリーナの顔が映し出される。

マジョリーナ『何の用だわさ?』

日野あかね「にしし♪ あんなぁ、ウルフルンを今日の夕方頃に人間界に連れて来れへんか?」

マジョリーナ『んん? そんな報告、がどうたちから入ってないだわさ? 新しい作戦だわさ?』

日野あかね「ちゃうちゃうッ、これはウチの独断や。ちょいと確かめたいことがあって試したいねん」

 あかねの思い付きに付き合わされる形ではあるが、既にメルヘンランドとの争いやピエーロ復活の使命から解放されたバッドエンド王国は退屈そのもの。

 マジョリーナに断る理由はなかった。







 そして迎えた、放課後の時間。

 バレー部とサッカー部と弓道部の活動を終えた後、キャンディを含めた六人全員で下校を共にしていく。

 前方をみゆきとやよいとれいかが歩いているのに対して、あかねとなおと、あかねの頭の上に乗っているキャンディの三人が後ろから続いていく。

緑川なお「確かめたいこと?」

キャンディ「何かあったクル?」

日野あかね「まぁまぁ、今に分かるでぇ〜♪ ウチの予想が当たったんなら、ドデカい進展や」

 何かを待っているあかねの前で、ついに“それ”が起きた。

 みゆきたちの前を横切る形で、ウルフルンが姿を現したのだった。

星空みゆき「あぁ! ウルフルンッ!」

ウルフルン「あぁん? 何だ、オマエらか」

 ウルフルンの姿を見つけた途端、みゆきの瞳がパァッと輝き出す。

 何の恐れも抱かずにサササッと駆け寄ると、ウルフルンの手に割と大きめの袋が下がっていることに気付いた。

星空みゆき「今日は何の用があったの?」

ウルフルン「これから用事があるんだよ……ったく、マジョリーナめ…ッ。このオレにお使いなんざ頼みやがって…ッ。オレはガキじゃねぇっつーの」

星空みゆき「うふふ♪ 一人でお買い物、できるかなぁ〜?」

ウルフルン「馬鹿にしてんのかッ、テメェ!」

 みゆきとウルフルンの間に、自然な流れでポンポンと会話が生まれていく。

 その様子を、何やら意味深な笑みを浮かべるあかねと、呆然とした様子で眺めるなおとキャンディ。

 その傍らでは、同じように呆然とした様子のやよいとれいかが並んでいた。

 先ほどまで三人で何の話をしていたのかは分からないが、その話題を断ってまでみゆきはウルフルンに向かっていったことは間違いない。

日野あかね「…な? ウチが言いたいこと分かったやろ…?」

緑川なお「……ぁ…、うん…」

 あかねが勘付いた、近頃のみゆきの様子。

 当たり前すぎて認識できていなかった、第三勢力を通じてのバッドエンド組との交流。

 そして、今も目の前で展開されているみゆきとウルフルンを取り巻く雰囲気。

 おそらく、あかねの言う“確かめたいこと”と“試したいこと”は理想とする形で叶っていた。







 その日の夜、あかねはがどうたちに報告していた。

 もちろん、がどうたちが驚愕したことは言うまでもない。

青木がどう『それは本当ですか!?』

日野あかね「せやせや。まぁ、明日にでも不思議図書館で問い詰めるつもりやで。そん時には嫌でも分かるわ」

青木がどう『…ぁぁ……、僕たちの行動が、ようやく…』

日野あかね「あぁ、まだ焦ったらアカンで? 逆に言えば、これからがホンマの勝負時や」

青木がどう『そ、そうですね……。より一層、気を引き締めねば……』

 何度か咳払いを繰り返したがどうとの通話を終えて、あかねは携帯を傍らに置いた。

 窓から部屋の外に広がる夜空を見上げてみると、大きな満月が顔を出している。







 そして、翌日の不思議図書館にて。

 みゆきは昨日のウルフルンとの出来事を話していた。

青木れいか「それで、結局は最後までお買い物に付き合ったのですか?」

星空みゆき「うん。何かね? マジョリーナが頼んだものっていうのが、全然統一性がなくて、もうあっちこっち歩き回って調達しなくちゃならなくてぇ……」

緑川なお「あぁ、一度に買い集められる物じゃなかったってわけか……」

星空みゆき「そうなの……。おかげで、もうクタクタ〜。今日だって眠くて仕方なくって……」

 そう言いつつも、みゆきの表情は晴れやかだった。

 ここまで露骨に分かり易いと、さすがにやよいもれいかも気付いてしまう。

 どうやら、ここ最近でみゆきの様子が今までよりも更に明るくなっていることは察していたようだ。
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