3つの恋が実るミライ♪

□15 生徒会選挙の戦い
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 早朝の七色ヶ丘中学。

 誰よりも早く登校したれいかは、枯葉集めの清掃を行い、花壇の手入れを進めていく。

 そして、他の生徒たちが登校してきた際には、挨拶運動を行っていた。

青木れいか「おはようございます!」

 これがれいかの日常。

 生徒会副会長として、当前の役目だった。

 否、きっと本人は“役目”だと思ってもいないだろう。

 副会長だからやるのではなく、そうすることがれいかにとっての“普通”なのだ。

緑川なお「これはやっぱり、れいかしかいないよねぇ」

 そんなれいかを振り返って、なおが一言呟いた。

 その言葉には、みゆきもあかねもやよいも賛成の意を唱えるように頷いた。

青木れいか「え? 何の話ですか?」

 話の主旨が見えなかったれいかが自然な成り行きで訊ねると、この場のみんなを代表してみゆきが返答する。

星空みゆき「それはもちろん! 生徒会長候補ッ、青木れいかさんでーす!」

青木れいか「……ぇ?」

 あかねたちが拍手を送る中、れいかは呆然とした様子で立ち尽くしている。

緑川なお「もうすぐ生徒会選挙でしょ?」

キャンディ「選挙って何クル?」

緑川なお「学校のリーダーを選ぶんだよ」

青木れいか「あの……」

 七色ヶ丘中学も、もうすぐ新しい生徒会長を決める時期がやって来た。

 みゆきたちは、現在生徒会副会長を務めているれいかが、次の会長に相応しいと思っていたのだ。

星空みゆき「では、れいかちゃん! 一言どうぞ!」

 しかし……。

青木れいか「あの、わたし……立候補はしません」

星空みゆき「……え?」

 当人のれいかの口から出た言葉は、生徒会選挙に立候補しない意思だった。

青木れいか「わたしは、生徒会長には相応しくないと思います」

緑川なお「どうして?」

青木れいか「生徒会長とは、生徒たちに道を示すべき存在です。しかしわたしには、示すべき道が分からないのです」

日野あかね「でもれいかが無理なら、誰にも出来ひんと思うねんけど……」

 あかねの言葉にはみゆきも同感の様子で頷いている。

 だが、れいか自身に会長になる意思が見られない以上、みゆきたちも無理強いするわけにはいかなかった。

緑川なお「みんな、仕方ないよ」

黄瀬やよい「そうだね。勝手に盛り上がっちゃって、ごめんね」

青木れいか「いえ、わたしの方こそ……」

 七色ヶ丘中学で行われる、今回の生徒会選挙。

 どうやら、副会長を務めていたれいかが、会長に立候補することはないようだった。







 その様子を、いつも通り陰ながら見守っていたこうがたちが首を傾げている。

星空こうが「んん〜? カズのお袋さんって、確か生徒会長やってたよなぁ? あれ? 高校だったか?」

青木がどう「中学も高校も生徒会長だったさ。当然、今回の生徒会選挙にも立候補していたはずだよ。それなのに……」

黄瀬のどか「みちにいのママ、どうしちゃったんだろう……」

 れいかが生徒会長に立候補しない。

 その意思を聞いた瞬間から、がどうは冷や汗が止まらなかった。

 先日、かなり大きなタイムパラドックスに遭遇したばかりだったからだ。

青木がどう「過去に干渉し過ぎれば、未来を大きく変えることになる……。メルヘンランドとバッドエンド王国の争いを“なかったこと”にしてから、こうなることは予想していたけれど……」

星空こうが「覚悟しておくだけと実際に目の当たりにするのとじゃ、やっぱ受けるモンのレベルが違ぇよな……」

 肩を落として項垂れていたいが、そうしている時間は勿体ない。

 こういった学校行事にも着目して、何とか自分たちの目指す未来へと導かなくてはならないのだ。

青木がどう「とにかく、母さんが生徒会長に立候補する旨は保留にしよう。この生徒会選挙の行事を上手く利用して、何らかのフラグを得なければッ」







 そんな一方での、バッドエンド王国。

 最近、アカオーニの影響でテレビを観るようになっていたウルフルンに習って、マジョリーナとジョーカーも同席する。

 四人の前に置かれたテレビが映し出しているのは、人間界の生徒会長に関する映像だった。

 映像の中では、頭の固そうな生徒会長が他の生徒とは明らかに異なる立場として行動している様子が見て取れる。

アカオーニ「“生徒会長”って何者オニ?」

ジョーカー「ふ〜む、学校で一番偉い生徒、といったところでしょうねぇ」

ウルフルン「ほぉ〜……。ってことはオレが生徒会長になったら、人間どもを部下に出来るってことか!」

 ウルフルンの戯言に続いて、アカオーニも妄想を膨らませる。

アカオーニ「俺様なら、学校を鬼ヶ島にするオニ!」

マジョリーナ「……はぁ…。頭のお目出度い奴らだわさ…」

 マジョリーナの溜息など気にせず、ウルフルンたちは勝手に話を進めていった。

 もう頭の中は生徒会長になってみせることでいっぱいのようだ。

ジョーカー「…あ、そういえば……。七色ヶ丘中学では、そろそろ新しい生徒会長を決める選挙が始まるそうですよ?」

ウルフルン「何だとッ!?」

アカオーニ「それはいいオニ! グッドタイミングだオニぃ!」

 言うが早いが、ウルフルンとアカオーニが人間界へと飛び出して行く。

 もちろん、目指すは七色ヶ丘中学だった。

ジョーカー「んふふふ♪ では面白そうですし、ワタシも向かうとしましょうッ」

マジョリーナ「あぁ! お前たち待つだわさ!」

 マジョリーナの呼び止めも聞かず、そして誰もいなくなった。

マジョリーナ「…………まったく…何から何まで世話が焼けるだわさ…ッ」

 魔法の箒を取り出したマジョリーナも、急いで七色ヶ丘中学に向かっていった。
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