3つの恋が実るミライ♪
□16 子供の遊び
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青木れいかが生徒会長に選抜された、翌日の土曜日。
人間界の七色ヶ丘中学に通うことを強いられてしまったウルフルンとアカオーニは、七色ヶ丘の公園にマジョリーナを呼び出していた。
呼び出した理由は事前に伝えている。
マジョリーナ「で? あたしにはお前たちが不満を抱えてる理由が分からないだわさ」
ウルフルン「馬鹿かテメェはッ。オレらの容姿に問題ありなんだよッ」
アカオーニ「人間になった俺様たちの姿、中学生に見えないオニ! あれじゃ高校生だ、って言われちゃったオニ!」
ウルフルンとアカオーニは、マジョリーナの発明品“ニンゲンニナ〜ル”を使ってウルフルン太郎と赤井鬼吉に変身し、七色ヶ丘中学に通うことになっている。
しかしその姿はあまりにも大人びていて、とても中学二年生には見えなかった。
どう見ても男子高校生なのである。
そんな二人の意見に溜息を吐きながら、マジョリーナは一つの小瓶を取り出した。
マジョリーナ「ふん。だったら“コドモニナ〜ル”でも使ってみるだわさ」
ウルフルン「おぉ? 何だそりゃ?」
マジョリーナ「これを使えば、どんな大人も子供に戻ることができるんだわさ」
緑川家の朝。
ドタバタと騒がしい足音と賑やかな声で包まれた家の中では、緑川家の兄弟たちと大黒柱である緑川源次が鬼ごっこをして遊んでいた。
緑川ゆうた「待て待て待てぇ〜」
緑川源次「ぉぉっとッ」
ゆうたの小さな手が、父親である源氏の腰元に触れた。
緑川ゆうた「はい! お父ちゃんが鬼だよ〜」
緑川源次「おぉしッ、ガォォァ!!」
大きく手を上げて鬼の真似までしてみせる源次に、子供たちは大喜び。
親子で遊ぶ休日というものは、幼い子供の多い緑川の大家族にとって最も重要なことなのだろう。
そんな騒がしくも楽しげな空気の前に、長女のなおが顔を出してきた。
緑川ゆうた「あ! なお姉ちゃんも鬼ごっこしようよぉ!」
緑川なお「え〜?」
緑川源次「ガォォァ! 次はお前を鬼にしてやる、なおぉ!」
ゆうたに続いて、源次もなおを鬼ごっこへと誘い込んでいく。
しかし、当人のなおは呆れた表情を浮かべて答えた。
緑川なお「もぉ、お父ちゃん……あたし、もう子供じゃないんだから」
緑川源次「……」
源氏の返答も待たず、なおは玄関へと足を進める。
ちょっとした用事があって、これから公園に向かうのだ。
行ってきますと行ってらっしゃいの声が交差する中、源次は小さく呟いていた。
緑川源次「……ってやんでぃ…。おめぇはいつまでも俺の子供じゃねぇか…」
昔は、なおも源次と一緒に鬼ごっこで遊んでいた。
親子であることに変わりはないのに、今と昔とでは一体何が違うというのだろうか。
一方で、なおより早く先に公園に到着していたみゆきたちはお喋りに夢中だった。
と言っても、話し込んでいるのはみゆきとやよいとれいかの三人だけ。
少しだけこの場を離れていたあかねとキャンディは、茂みの中で待機中のこうがたちと合流している。
青木がどう「では、ここ最近の進展状況をまとめますね?」
簡単な情報交換が行われ、最後のまとめに入っていく。
青木がどう「今のところ明確な恋心が発覚しているのは、みゆきさんがウルフルンに抱えるもののみ」
星空こうが「そんな中で、オレの親父とノンの親父さんが七色ヶ丘に転校」
黄瀬のどか「みちにいのパパは転校してきたか分からないの?」
日野あかね「う〜ん……微妙なところやなぁ。生徒会選挙ん時は、応援団団長とか名乗って、普通に出て来とったし……」
キャンディ「クル〜……」
とにかく、ウルフルンとアカオーニが転校してきた件と、みゆきがウルフルンに明確な想いを寄せていることは事実だ。
ここまで来れただけでも十分だろう。
星空こうが「さて…。簡単に現状も把握できたし、そろそろ今日の予定でも話そうぜ」
日野あかね「あぁ、ちょい待ちぃ。もうすぐなおが来る頃やねん。そん時にまた詳しく話してや」
青木がどう「同感だ。一人一人に話すのも二度手間だよ。母さんたちにはもう少し待ってもらうけど、もうすぐなおさんが到着するなら一緒に話をしておいた方がいい」
がどうが、そう結論を出した瞬間のこと。
緑川なお『ーーーあッ!! あかねぇぇぇえええええッ!!!!』
なおが待ち合わせ場所に到着した証明と同時に、何か大きな事件が発生しているような叫びの呼び声が届いてきた。
日野あかね「ーーーッ!? な、何やッ!?」
キャンディ「なおの声クルぅ!!」
星空こうが「おいおい…。ただ事じゃねぇだろ…、今の声……」
青木がどう「予定変更ですッ。あかねさん、早く戻ってあげてくださいッ」
言われた瞬間には、もうあかねも走り出している。
みんなのところに戻って来たあかねが目にした光景は……。
呆然とした様子で立ち尽くすなおと、なおに手を引かれている三人の幼女。
否、それは幼女と化してしまった、みゆきとやよいとれいかの三人の姿だった。
日野あかね「…え? これ、ドッキリ?」
緑川なお「そうだったら、どんなに気が楽か…」
と、その時だ。
近場の茂みの中から、マジョリーナたちが現れた。
マジョリーナ「あぁ!! あたしの“コドモニナ〜ル”がぁ!!」
ウルフルン「っつーか、オイ! プリキュアが……ッ」
アカオーニ「子供になってるオニぃ!!」
ジョーカー「ぎゃーっははは!!」
緑川なお「笑いごとじゃなぁぁぁい!!!!」
ウルフルンたちまで姿を現し、この事態の原因が何となく分かってきた。
おそらく、この事態を知ったこうがたちも茂みの向こうで頭を抱えていることだろう。
日野あかね「……はぁ…。とりあえず、これまでの経緯の説明、頼むわ…」
マジョリーナ「ぐぬぬ……」
渋々と言った様子で、マジョリーナは先ほどまで行われていたウルフルンたちとの状況を説明していった。