3つの恋が実るミライ♪

□18 はちゃめちゃシンデレラ・後編
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 “はじまりのシンデレラ”。

 世界中のシンデレラの本と繋がっている、メルヘンランドに伝わる“シンデレラ”の幸せの源。

 その世界に入り込んでしまったみゆきは、シンデレラにハッピーエンドを迎えさせるため、物語の通りにお話を進めなくてはならない。

 しかし、どういうわけか魔法使いさんと王子様が結ばれる展開を迎えてしまい、物語は幕引きとなった。

 これでは“シンデレラ”の物語が大きく変わってしまうため、みゆきは再び“はじまりのシンデレラ”へと挑むのだった。







 そんな経緯があって、意地悪な姉役のやよいとキャンディのイジメを掻い潜ってきたみゆきの許に、舞踏会の招待状が届いてきた。

黄瀬やよい「こ、ここまで…しんどかったぁ…」

キャンディ「みゆきをイジメるの、もう嫌クル……」

マジョリーナ「あたしは、また何もせずに終わっただわさ」

 意地悪な継母役のマジョリーナは、今回も手を汚すことなく招待状を受け取ったらしい。

星空みゆき「よぉし……、今度こそ幸せなシンデレラになってやるんだからッ」

 決意も早々に、やよいとキャンディを連れたマジョリーナが一足先に舞踏会へと向かっていく。

 こうして一人きりになったみゆきの傍へと、今回の魔法使いさんがボウンッと煙を上げて登場した。

日野あかね「ゴホッゲホッ!! この演出いらんやろッ」

星空みゆき「あかねちゃん! よかったぁ〜、今回の魔法使い役はあかねちゃんだったんだねぇ!」

 前回の魔法使い役はジョーカーであり、彼のおかげでシンデレラの物語は大きく改変されてしまったのだ。

星空みゆき「またジョーカーだったらどうしようかと思ったよぉ…」

ジョーカー「心外ですね。そんなにワタシの魔法は不満でしたか?」

星空みゆき「そりゃぁ、あんな展開じゃ………え…?」

 ふと、足元に視線を向ける。

 そこにはシンデレラの友達のネズミが二匹、ちょこんと並んでみゆきを見上げている。

ジョーカー「んふふ♪ 今回もお供いたしますよぉ〜、シンデレラ♪」

青木れいか「安心してください。今回はわたしがしっかりと見張っておきますので」

星空みゆき「ジョーカー!! あッ、でもれいかちゃんがいる!! これなら少し安心かも」

 前回のネズミ役は、既に意地悪な姉役として登場済みのやよいとキャンディだったため予想出来ていなかった。

 その内の一匹がジョーカーという点が不安だったが、もう一匹がれいかならお目付け役に最適だろう。

日野あかね「時間ないから早よ行くでぇッ。ウチの魔法を見せたるッ」

ジョーカー「マハリク!」

青木れいか「マハリタ?」

日野あかね「ヤンバラ・ヤンヤンヤン♪ って、何やらすねん!!」

ジョーカー「これは失礼。では釘バットをどうぞ♪」

日野あかね「あぁ、おおきに! ほな行くで! ぴぴるぴるぴる♪ ぴぴるぴー♪ って、ちゃうわッ!!」

星空みゆき「(長いボケだなぁ……)」

 バシィンッ!!!! とエスカリなボルク風の釘バットを叩き壊したあかねが、一度咳払いをして呼吸を整える。

 長いボケはここで終わりだ。

日野あかね「アカンわ、ホンマに時間ないねんて。待たせたな、みゆきッ」

星空みゆき「ううんッ。それじゃあ、お願い!」

日野あかね「よっしゃ! テクマクマヤコン・テクマクマヤコン♪ みゆきの姿を美しきシンデレラに大変身やー♪」

星空みゆき「(あれ? まだボケるのかな……)」

 そんなことなく、みゆきはシンデレラのドレス姿に身を包んでいく。

 その間に、れいかとジョーカーの姿もネズミから馬へと変えられていた。

日野あかね「テクマクマヤコン・テクマクマヤコン♪ ネズミさんはお馬さんになーれ♪」

ジョーカー「はぁ……少々、屈辱ですね。ネズミから馬とは……」

青木れいか「仕方がありません。ここはシンデレラのためにも耐えましょう」

星空みゆき「(あ、れいかちゃんも嫌なんだ……)」

 不満たらたらな二頭の馬を傍らに、あかねが最後の魔法をカボチャに向けた。

日野あかね「テクマク…ええい、鬱陶しい!! カボチャが馬車になーる!」

星空みゆき「あぁ! 省略した!!」

日野あかね「みゆきぃ! ほれ、ガラスの靴や!!」

星空みゆき「しかも投げやり気味ぃ!!」

 あかねからガラスの靴を受け取ったみゆきは、急かされるままに履き終えた後にカボチャの馬車へと乗り込んでいく。

日野あかね「魔法は十二時に解けてまうでぇッ。それまでにお城を出るんや!」

星空みゆき「う、うん! 合点承知!! って……これってシンデレラっぽくないよね……」

日野あかね「ごちゃごちゃ言うとらんと、早よお城に出発や! れいかッ、ジョーカーッ、あとは頼むわ!」

青木れいか「お任せください」

ジョーカー「んふふッ、では行きますよぉ! そぉれッ!!」

 手綱も握られず、れいかとジョーカーはカボチャの馬車を引っ張ってお城に向かう。

 今度こそ、幸せなシンデレラが誕生するのだろうか。







 一方、シンデレラの到着を待つ舞踏会の会場にて。

 お城へと先回りしていた魔法使いのあかねが、城内のなおと合流していた。

緑川なお「今回は意地悪な姉役って、やよいちゃんとキャンディだったんだね」

日野あかね「みたいやな。そんで…なおは、ただの招待客か?」

緑川なお「まぁ、そんなところ…。でも、これでウルフルン(ルン太郎)の出番がやっと王子様に回ってきたと思うよ」

 前回、王子様役だと思われたルン太郎は招待客の役で終わっていた。

 しかし今回の招待客役の席が埋まっている以上、ある意味では勝負はこれからだ。

日野あかね「みゆきのことや。王子を前にしたら顔真っ赤にして逃げ出すでぇ?」

緑川なお「その展開は全力で食い止めよう。埒が明かないよ…このシンデレラ…」

星空みゆき『シンデレラ、到着しましたー!』

日野あかね「お! 噂をすれば主役のご登場やッ」

 そんなこんなで、シンデレラはお城へと足を踏み入れる。

 それと同時に、今回の王子様役も会場へと姿を現した。





赤井鬼吉「ウッハハハ! 今日は俺様の花嫁を決める舞踏会にようこ……へぶらぁッ!!!!」

緑川なお「ふざっけんなぁあああ!!!!」





 配役が決められないため、なおの制裁は理不尽である。

 だがそれでも、回し蹴りせずにはいられない裏切り行為だった。
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