とある短編の創作小説U

□うそ
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 深夜の学園都市。

 第七学区にある某ハンバーガーショップにて、浜面による不意の一言から始まった。

浜面仕上「実はさ……。俺…、超能力者の第六位なんだ…ッ」

上条当麻「ーーーえええぇッ!!?」

一方通行「…………」

 一方通行に奢ってもらった高額ハンバーガー(言うまでもなく美味)を取り落とすほど驚愕する上条と、まったく興味を示さずにフライドチキンを頬張る一方通行。

 指についた黒胡椒を舐め取りつつ、溜息混じりに指摘したやった。

一方通行「本物の超能力者を相手に、その嘘は意味を成さねェよ。残念だったな」

浜面仕上「あちゃぁ〜、さすがに一方通行は第六位の顔くらい知ってたか……。こりゃ失敗」

上条当麻「って、今の嘘ッ!!? あッ、そういえば今日って!!」

一方通行「気付くのが遅ェよ、三下。もォ日付も変わるってのに」

浜面仕上「あっはは! まぁ、大将が引っかかっただけでも良しとするか♪ あ、ハンバーガー落としてるぜ?」

上条当麻「どわぁあああ!! 不幸だぁッ!!」

 本日、四月一日。

 一年間の中で、嘘を吐いても許される日として知られる日付だ。

 当然ながら無能力者であるはずの浜面が超能力者の第六位という説は、その場の思い付きから生まれた嘘偽り。

 そもそも、よく考える必要もなく嘘だと気付けるレベルのはずだ。

上条当麻「はぁ〜……しっかし…、エイプリルフールねぇ…」

一方通行「オマエも何か嘘の一つでも吐いてみたらどォだ? そこの馬面に仕返ししてやれ」

浜面仕上「なぁ、馬面って俺のこと? 浜面だけど馬面じゃねえだろ? そんなに面長か? おい」

 浜面の言葉を全て無視した一方通行が、上条の吐く嘘を待ちわびる。

 そもそも、待ち構えられて嘘を吐く、という行為自体、間違っている気がしなくもない。

上条当麻「あ、あー…そうだッ。ほら! 実は俺…留年確定しちゃってさぁ〜」

一方通行「あァン? 知ってるぜ?」

浜面仕上「大将〜、そこは嘘吐かなきゃダメだろ、ノリ的に」

上条当麻「ーーー上条さんッ、真実を言ったつもりはなぁいッ!!!! 留年確定なんて嫌だぁあああッ!!!!」

 さて、ここまで来れば残りは一人だ。

上条当麻「…………」

浜面仕上「…………」

一方通行「何だよ、何を見てやがる」

上条当麻「いや、いやいやいや」

浜面仕上「ほら〜。ここは流れに乗ってくれよ、最強〜」

一方通行「チッ、めンどくせェなァ……」

 とか言いつつも、しっかり何か考え始めてくれる一方通行。

 だが、こういったことに慣れていないのか、もしくは本当に面倒なのか。

 すぐに考えを放棄した一方通行は、何気なく思い付いた自虐ネタを駆使して一言で終わらせてしまう。



一方通行「俺、実は女なンだぜ?」



上条当麻「……? で?」

浜面仕上「いや、知ってるけど?」

一方通行「ーーーそこに直れェッ!!」

 背筋に悪寒を走らせた一方通行は、脳みその湧いた戦友の目を覚まさせるためだけに力を振るった。







 黒い翼の直撃(威力1/100000000)を受けた浜面が帰宅し、同居中のアイテムメンバーに迎え入れられる。

浜面仕上「ただいまぁ……」

麦野沈利「おかえり……って、何でそんなにボロボロなわけ?」

浜面仕上「あ、いや…。ちょっと一方通行の嘘に付き合った挙句………」

 正確には、一方通行の嘘に馬鹿げたノリで返した挙句、である。

 何となく心中を察した麦野は、呆れた様子で着替えを手渡す。

麦野沈利「ったく。たかがエイプリルフールで衣服もボロボロかよ……さっさと着替えてこい」

滝壺理后「はまづら。お風呂湧いたから、ついでに入ってきて」

浜面仕上「おぉ、サンキューな」

 麦野から着替えを渡され、滝壺に風呂場へと促される。

 その途中、それまでの話を聞いていた絹旗が顎に手を当てて何かを考えていた様子。

絹旗最愛「ふむ……エイプリルフールの嘘ですか……」

浜面仕上「あぁ。絹旗はどうだった? 何か嘘でも吐いてきたか?」

絹旗最愛「はぁ? このわたしが嘘なんて吐くわけが超ありません。わたしのことも超分かっていないようですね? これだから浜面は超浜面なんですよ」

浜面仕上「…………」

 浜面式、脳内変換。

絹旗最愛『はぁ? このわたしが嘘を吐くなんて超当然じゃないですか。こんなこと今更、超改めるまでもないです。これだから浜面は超浜面なんですよ、ば〜か♪』

浜面仕上「(……うん、途中から変換不可能だ。あと後半、何か付け足された)」

 壁に掛けられた時計を見やれば、23時59分。

 嘘が許される日も、もう終わりが近い。

 ふと気が付けば、絹旗も時計に注目していたようだった。

絹旗最愛「浜面」

浜面仕上「あん? どうした?」

 カチッ、と時計の針が一分後を刻み、軽快な音楽が日付の変わり目を知らせる。



絹旗最愛「超だ〜い好きッ、にしし♪」



浜面仕上「………ッ…」

 ピュ〜、と追い風が吹くように部屋の奥へと姿を消していく絹旗。

 呆然と立ち尽くす浜面の背後には、麦野と滝壺が意味深な笑みを浮かべていることだろう。

浜面仕上「……ったく…、わざわざ日付が変わるの見越しやがって…」

 深夜に出掛けたのは正解だっただろう。

 この時間に帰って来なければ、エイプリルフールを理由にした素直な想いなど、簡単に聞き出すことは出来ない。

 風呂場に向かう前に、コンコンと絹旗の部屋の扉をノックした浜面は、少しだけ笑いながら付け加えた。

浜面仕上「これからも宜しくな。絹旗♪」

 バフゥッ! と、投げられた枕が扉にぶつかってきた音が聞こえてきた。
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