とある短編の創作小説U
□スマプリ!SP(02)
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日本警察とは、法や秩序の規律の許に世の平和のために活動している。
しかしその任務には縛りがあり、法律を破るようでは警察は務まらない。
殺人鬼がいました、ので、殺害処分しました。
これでは警察と言えども殺人罪を犯した凶悪犯と変わりはない。
そんな“決まり事”に捕らわれた警察組織の中でも、国からの承諾を得て信じられないような自由を得た警察組織がある。
日本特殊警察組織。
通称“プリキュア”。
日本警察とは別系統の職種に分類されるが、これでも立派な警察組織の一つ。
だが、公の一般人が知る警察とは異なる点が山ほどあった。
その一。
自らが警察の一員を名乗ることは許されず、警察の身分を証明するための制服や手帳の所持を認めない。
その二。
階級は与えられず、各々が所属するチームの中にて個人で己の役割を把握すること。
その三。
勤務中に死亡するようなことがあった場合でも、警察側は一切の責任を負わず“事故死”として隠蔽される。
その四。
“プリキュア”所属の警察組織の一員になる際は、所属するチームの統括総務官とチームリーダーの承諾を得た上で、二人のサインの入った所属申請書にサインをすること。
また、逆に一般の日本警察では許されないことが許されている事柄もある。
その一。
任務が与えられない場合は、基本的に何をしていても良い。
その二。
任務が与えられた場合でも、それを呑むか反るかは統括総務官の指示に従うことを優先とする。
その三。
任務遂行の妨げになる場合は器物損壊や殺人などの犯罪を許可し、罪状を帳消しにする。
その四。
自己責任が前提で、任務中でも個人の行動は自由とする。
青木れいか「と、言ったところが日本特殊警察の基本教訓です。分かりましたか?」
星空みゆき「……これ…本当に“警察”ですか…?」
日野あかね「まぁ、そう思うのも無理ないな?」
七色ヶ丘中学での授業を終えて、みゆきはあかねたちと一緒に下校していた。
決して仲良く楽しげな雰囲気での下校ではなく、今からあかねたちが所属する特殊警察の拠点へと向かうためだ。
黄瀬やよい「でも、わたしたちが所属してるところって、そんなに危険じゃないし……」
緑川なお「そうだね。そっちのことも、ちゃんと説明してあげなくちゃ」
日本特殊警察組織“プリキュア”の中にも、複数の部署がある。
みゆきが所属するのは、その中でも秘密裏の事件解決や捜査依頼が舞い込んでから行動する場合が多い。
あかねたちが所属するのは“チームスマイル”という秘密警察だった。
日野あかね「ウチらんとこの秘密警察の仕事は、基本的なのは“スパイ”やな」
星空みゆき「スパイ?」
黄瀬やよい「依頼される仕事はね? 何処かの建物に忍び込んで来て、っていうのが多いんだよ」
青木れいか「みゆきさんが巻き込まれてしまったショッピングモールでの事件は、本当に稀なケースだったんです」
“チームスマイル”に舞い込んでくる仕事の内容は、主に潜入捜査といったスパイ系統。
構成員が女子中学生ばかりだからなのか、統括総務官のジョーカーが舞い込んでくる仕事を一応は選んでくれているらしい。
緑川なお「でも上層部の警察連中の頭も固いらしくてね。たまに危ないことも強いられちゃうんだよ」
青木れいか「引き返すなら今の内ですよ。星空さん、如何いたしますか?」
れいかの最後の念押し。
それをみゆきは、迷うことなく断った。
星空みゆき「わたしも入るよ。わたしだって、みんなの力になってみせるから」
日野あかね「星空……」
黄瀬やよい「……」
青木れいか「……分かりました。では、もう何も言いません」
緑川なお「…着いたよ。ここが…あたしたちの拠点」
そう言って、なおは七色ヶ丘商店街の一角を指差す。
その場所は……。
星空みゆき「………ぁ…」
この商店街を通った際に、偶然見つけ出した絵本専門の書店。
“キャンディ”を前に、五人は揃って立ち止まっていた。
星空みゆき「…拠点って……ここ…?」
日野あかね「そう言や、ウルフルンから聞いたで。星空、この店に来たことあるんやってな?」
黄瀬やよい「え? そうなの…?」
星空みゆき「う、うん……ちょっと前に、一回だけ…」
再び店の中に入ると、初めて来たときと同じようにウルフルンが顔を出してきた。
ウルフルン「いらっしゃ……って、何だ。オマエたちか…」
日野あかね「何やねん、その反応」
ウルフルン「客がいねぇ店ほど暇な職場はねぇだろ……って、あん? オマエは…」
星空みゆき「ど、どうも…こんにちは…」
この場にみゆきがいることと、そのみゆきがあかねたち四人に囲まれてこの店に入ってきたことで、ウルフルンは事情を察したようだ。
ウルフルン「……加入か?」
青木れいか「その予定です」
ウルフルン「転校生を相手に正気か、オマエら? こっち側の世界は一秒先を生きてられるかも分からねぇほどの生き地獄だぞ」
青木れいか「それを知った上で、星空さんが志願したことです。わたしたちでは止められません」
ウルフルンが溜息を吐き、一度だけみゆきに視線を向けた。
ウルフルン「死に晒しても知らねぇからな?」
星空みゆき「………ッ…」
固唾を飲んで緊張の意を見せるみゆきを前に、ウルフルンは店の奥に入れるようにレジの中へと五人を誘う。
ウルフルンに促されるまま、五人はレジを通って店の奥へと進んでいった。
星空みゆき「………? このお店って、意外に広い…?」
緑川なお「外装の割に、店内は狭かったでしょ? その原因はこれなの」
青木れいか「この建物の15%ほどは、カモフラージュとして経営してる絵本専門書店“キャンディ”に費やし、残る85%をわたしたち“チームスマイル”の活動拠点としているのですよ」
店の奥へと進んでいくと、突き当たりに事務所で見かけるような質素な扉が見えてきた。
ノブを捻って中に入ると、そこにはキャンディの店内より広く感じる事務スペースが広がっていた。
部屋の中央にガラス製の長テーブルが置かれ、左右にはシンプルなソファが一つずつ。
部屋の奥には、事務所長が座っているような雰囲気がある机と椅子が設置されていた。
部屋に入って右手側にはトイレがあり、急須やポットなどが置かれた棚まで設置されている。
左手側にも扉があるが、マークなどの印が何もないため何の部屋なのかは分からない(トイレではないだろう)。
そして部屋の奥、部屋に入って真正面に位置する事務所長のような机と椅子の場に、一人の男が笑みを浮かべてこちらを見ていた。
ジョーカー「ようこそ、星空みゆきさん。お待ちしておりました♪」
青木れいか「星空さん、ご紹介します。彼こそが、わたしたち“チームスマイル”の統括総務官を務めている“ジョーカー”です」
ジョーカー「はじめまして、ジョーカーです♪ 宜しくお願いします」
星空みゆき「よ、宜しくお願いします……」