〜The Last Decor〜

□00 プロローグ2nd
1ページ/3ページ


 青木家の客間にて。

 春休みも終わりが近付き、みゆきたちはもうすぐ中学三年生になる。

 にもかかわらず、いまだに宿題が終わっていないみんなは、必然とれいかの家に集まってきていた。

 れいかが宿題を終えているのは言うまでもない。

ウルルン「オレたちも終えてるけどな」

オニニン「楽勝だったオニニ♪」

キャンディ「すごいクル〜!」

マジョリン「お前たちジョーカーに手伝わせてたのさ」

黄瀬やよい「不正だー!!」

 去年の夏から、本当に色々なことがあった。

 皇帝ピエーロを打ち倒したと思えば、メルヘンランドとバッドエンド王国の争いの歴史が“なかったこと”になったり。

 眠っていたと思われたロイヤルクイーン様が、実は既に亡くなっていたり。

 不可思議な存在感のある第三勢力が現れたり。

 季節が過ぎるごとに、バッドエンド王国のみんなと仲良くなっていったり。

 その果てには、彼氏彼女の関係にまで至ってしまった。

 みゆきはウルフルンと、やよいはアカオーニと、れいかはジョーカーと。

 そしてウルフルンたちは己の過去を明かし、メルヘンランドの妖精だった頃の姿へと戻った。

 と言っても、ポップの変身能力に類似した力を持っていたため今まで通りの姿で生活している時も多い。

 マジョリーナの発明“ニンゲンニナ〜ル”を使って人間として登校したり、妖精の姿でヌイグルミのふりをしたり。



 そんな中で、第三勢力の正体が……未来から来たみゆきたちの子供だと判明した。



 その後、彼らは未来へと帰って行ったが、それからもイベントの連続だった。

 冬休みが明けて春休みに入るまでの学校生活を、みゆきたちもルン太郎たちも平凡に過ごしていく。

 次期ロイヤルクイーンにはキャンディが選ばれ、バッドエンド王国は完全に無人の世界と化した。

 争いのない平和な時間が流れ続け、みゆきたちが最後にプリキュアへと変身してから、既に約十ヶ月が経過しようとしていた。

 そんな時だった……。



 ジョーカーが倒された。



 プリキュアの誰も敵わなかった、あのジョーカーが。

 ビューティでさえも、ポップの協力があって押し退けることに成功したほどの実力を持つジョーカーが。

 全身を斬り裂かれたような大怪我を負って、ドサッと客間に倒れ込んできた。

青木れいか「ジョーカーッ!!」

 れいかが慌てて駆け寄っていく。

 ジョーカーは先ほどまで、実に三ヶ月ぶりにバッドエンド王国へと戻っていた。

 キャンディにキュアデコルを返却するため、未使用だった赤っ鼻とデカっ鼻を回収することが目的だった。

 しかしバッドエンド王国から帰ってきたジョーカーは何も持ち帰らず、手ぶらのままでボロボロな姿を現したのだ。

日野あかね「ジョーカー!? 何やねん、その怪我ッ」

緑川なお「一体何があったのッ」

ジョーカー「ぅ……ぐ、ぅぅ」

 傷が深いのか、呻くばかりで言葉にならない。

 しかし手先で意図を表そうとしている。

 ジョーカーの指先は、青木家の外へと……より正確には空の方へと向けられていた。

星空みゆき「…? 空…?」

 みゆきが客間を出て空を見上げる。

 すると、そこには不可思議な光景が広がっていた。

星空みゆき「……ぇ…? なに…あれ……」

 例えるならば、天気予報で映し出される曇りのマーク。

 青い空に白い雲が流れている快晴の青空の中に、ポツンと浮かぶ灰色の雲。

 不自然なほど周りから浮いて見える灰色の雲は、青木家の真上へと流れてくる。

 その雲に乱れは見られず、本当に切って貼られただけの冗談のような光景だった。

日野あかね「あぁ……? 何やねん、あれ」

黄瀬やよい「雲? じゃないよね……」

緑川なお「まるで、絵本の中から飛び出してきたみたいな……」

 子供の落書きのような輪郭のハッキリした灰色の雲は、みゆきたちが見ている前で動きを止める。

 青木家の真上に到達した瞬間、雲の中から艶と色気のある男性の声が聞こえてきた。

????『……“強襲の白騎士(ホワイトナイト)”』

星空みゆき「え?」

 次の瞬間、みゆきたちの眼前が白一色に染まる。

 それと同時に、オニニンの姿から変身したアカオーニが金棒を構えて立ち塞がる。

アカオーニ「ーーーオニぃッ!!!!」

 ガッギィィンッ!!!! と、金属と金属が重なり合う甲高い音が響き渡り、みゆきたちも状況を理解した。



 一瞬にして姿を現したのは、白馬に乗った全身が純白の女騎士。

 眩く輝く純白の剣を振り上げて、みゆきたちへと容赦なく斬りかかって来たのだ。



 アカオーニが金棒で防いでくれなければ、今頃みゆきたちの体は……。

星空みゆき「ーーーッ」

黄瀬やよい「ぁ、ありがとぅ……アカオーニ……」

アカオーニ「咄嗟に気付けたのは、マジョリンのおかげオニッ」

マジョリン「アカオーニッ、まだまだ降ってくるのさ!」

 降ってくる、という表現から改めて理解する。

 敵襲は、あの灰色の雲から降ってきたのだ。

????『“捨て身の傭兵(ホワイトポーン)”…』

 次に現れたのは、またしても全身が真っ白な兵士たち。

 ざっと見渡して五人ほどだが、その程度なら問題はない。

ウルフルン「しゃらくせぇ!!」

 ウルルンから変身を終えたウルフルンが、大きく腕を振るって兵士たちを吹き飛ばしていく。

星空みゆき「ウルフルン!」

ウルフルン「チッ! 何がどうなってやがるッ。あの雲は何なんだ!?」

 そう言って、皆が一斉に灰色の雲を見上げる。

 すると、その中に立つ五人の人影を確認することができた。

 五人の中で最も手前に立っていた人物が、青木家の客間から庭先へと姿を現したプリキュアたちを見据える。

????「ふん…、お主らがプリキュアか…」

 その男は、卑屈な言い回しでプリキュアを見下していた。

 否、卑屈なのは言い回しばかりではない。

 その男の姿を例えるならば、王様だった。

 頭には大きな金色の王冠を被り、黒いマントを着込んでいる王様スタイル。

 短い銀髪の下には、モデルの如く整った顔立ちが無表情を浮かべている。

 今の強襲と……先ほどの騎士の太刀筋から察するに、ジョーカーを襲ったのは彼で間違いないだろう。

キャンディ「みんな! 変身クルぅ!」

星空みゆき「……うんッ」

 そして、みゆきたちは約十ヶ月ぶりにスマイルパクトを構えたのだった。

星空みゆき「みんなッ、行くよ!!」



プリキュア「「「プリキュア・スマイルチャージッ!」」」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ