モンスター・ロバーズ!
□第05話 花見の話
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満開に咲く桜並木。
風に乗って舞い散る桜吹雪は、春の色を道行く人々に、これでもか、と見せつけている。
イリヤ「……桜、か…」
ウリヤン「へぇ、桜は知ってたのか」
イリヤ「本で読んだ限りだがな。本物を見たのは初めてだ」
ウリヤンたちが新たに到着した町は、春の季節の代表格と言ってもいい風物。
辺り一帯に桜の木が植えられていたのだった。
ウリヤン「じっくり見て行きてぇと思うが、生憎と仕事の途中だ。先ぃ行くぞ」
イリヤ「仕事といっても換金だろ? さっさと済ませて眺めていくぞ」
ウリヤン「へいへい」
前の町でボリスが盗んできた金品を持って、ウリヤンは町の換金所に向かっていく。
ちなみに、イリヤが同行してきたのは彼女の勝手だったりする。
花見用、と釘打たれて販売されている酒屋の前で、バフィトは足の裏から根が生えたように動かなくなった。
バフィト「この町限定、季節限定。何処を見ても限定限定限定限定……。どの酒がいいか迷っちゃうねぇ〜……」
ソフィア「買うことが前提なんですね。それに、飲み過ぎは体にも悪いんですから自重してください」
バフィト「んん? もしかして俺のこと心配してくれちゃってる?」
ソフィア「既に酔ってるならお酒を買う必要はないですね。行きますよ」
バフィト「つれないねぇ〜、もうちょっと待ってよぉ……あれ? そういえばワルワラは?」
ソフィア「ワルワラちゃんなら、キルサンくんの買い物についていったわよ」
バフィト「あちゃ〜……、キルサンも困っちゃうだろうなぁ……。参ったね」
今現在のキルサンを思い浮かべ、バフィトは苦笑いを浮かべていた。
ちなみに、お酒は季節限定品を二本購入したのだった。
買い物袋を下げたキルサンは、財布の中を覗いて溜息を吐いた。
キルサン「…………ワルワラ副船長…、買い過ぎです…」
ワルワラ「……?」
キルサン「白々しく首を傾げないこと。副船長だけの食費ではないんだから」
ワルワラ「これでも自重した」
キルサン「これで、か……。今回の換金に期待するしかないなぁ……」
ふと、キルサンとワルワラは並木道に舞う花びらを見た。
満開の桜から舞い散る桜吹雪が、二人の脳裏の“とある光景”を思い出させる。
ワルワラ「……なんか、懐かしいね…」
キルサン「…そうですね……」
二人が思い出したのは、とある日の過去。
あの時も、二人の前には桜が舞っていた気がする。
キルサン「……バフィト船長も、思い出してくれているかな」
ワルワラ「ううん、きっとお酒に夢中。あの時もそうだったし……」
キルサン「あぁ、そうでした。あの時のワルワラ副船長も、こうして食べ物だけに夢中でしたっけ」
ワルワラ「…………」
買い物袋を手に下げて、二人は並んで買い物から帰る。
二人が何を思い出していたのか、それはまた次の機会に……。
花見会場の一角。
グルナラはシートを敷いて皆の到着を待っていた。
せっかくの花見シーズンということもあり、皆でお花見をしていこうと提案したのだ。
グルナラ「さぁて、一番乗りは誰かなぁ〜♪」
準備完了と同時、数多の方向から各々の顔ぶれが集まってきた。
我慢できなかったのか、花見が始まる前にお酒に口をつけてしまっているバフィトに、隣りで呆れながら歩いているソフィア。
そんな二人に気付いたワルワラがパタパタと駆け寄っていき、あまり良い稼ぎにならなかったらしいウリヤンたちと合流したキルサンは苦笑いしていた。
グルナラ「あ、みんな帰ってきた」
ボリス「準備、間に合って良かったな」
グルナラ「あ、ボリスもおかえり。いつからいたの?」
ボリス「たった今だ」
ボリスの手には、この町の何処からか盗んできた金銀財宝。
次の町では、期待以上の値で換金してくれることを願っていよう。