中二病でも恋がしたい! Cross

□第01話 日常。
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 勇太、六花、丹生谷、くみん先輩、凸守、一色。

 六人が揃った結社内の教室は、六人中五人が“あるもの”に視線を向けていた。

 視線を向けていないのは丹生谷だけで、皆が視線を向けているのは丹生谷の“左腕”だ。

丹生谷森夏「………何よ」

富樫勇太「い、いやぁ……丹生谷。その……もしかして……」

 丹生谷の左腕はギプスで固定され、首から無残にも吊られていたのだった。



富樫勇太「ついに中二病が再発を……?」

丹生谷森夏「ーーーちっがぁぁぁうッ!!!! 普通に骨折したのよ、骨折ッ!! 腕吊ってる奴が全員中二病だと思ったら大間違いなのよ、それ!!」



 最後に会ったのは一週間と少し前なのだが、その時は何事もなかったはずだ。

 それなのに今こうした格好で登場されては反応にも困ってしまう。

 元・中二病患者なら尚更に。

丹生谷森夏「腕固めてて遅くなったのよ。遅刻は素直に謝るわ」

一色誠「そ、そっか…。ていうか、何でまた今日なんだ? 明日から学校が始まるってのに」

丹生谷森夏「始まっちゃうから集めたのよ。本当はもう少し早くに集まりたかったけどね」

五月七日くみん「何かあったの〜?」

 勇太もくみん先輩も凸守も一色も、何も知らないような顔で丹生谷を見ている。

 そんな中、丹生谷に並んで曇った表情を浮かべる六花が話を切り出した。

小鳥遊六花「この結社が来年度に、つまりは明日にでも解散を余儀なくされるかもしれない……」

凸守早苗「な、何デスとぉ!!?」

富樫勇太「何だ? また成績を問題視されたのか?」

 去年の夏頃、六花の成績を問題視されたことがあり、数学のテストで平均点以上の点数を取れなければ同好会を潰されるかもしれない危機、というイベントがあった。

 そこは勇太の個人レッスンと六花の努力の甲斐があり、何とかギリギリクリアーすることができたのだが……。

丹生谷森夏「残念だけど、今度の理由はもっと重要なところよ」

富樫勇太「もっと重要?」

丹生谷森夏「そう。来年度、当たり前だけど新入生が入ってくるでしょ? その時に、もっと学校の顔になるような部活動を立ち上げようと立候補してくる生徒……。または、今ある他部の部室を更に拡大させるための空き部屋が必要……、ってなった場合とか」

 つまり、この結社に問題があるのではなく、この空き教室が他の理由で使われることになるかもしれない。

丹生谷森夏「学校基準で、同好会よりも部活動の方が優先的。そして、活動場所がない同好会は認められない。加えて、この同好会は学校の階層の底辺で、主な活動内容は雑用業務……」

富樫勇太「ち、ちょっと待てって! そんな急に……ッ」

五月七日くみん「そうだよ。せっかく皆で楽しくやってきたのにぃ」

丹生谷森夏「楽しくやるだけなら同好会じゃなくてもいい、って話になっちゃうのよ」

凸守早苗「何とかならないのデスか!? マスターッ、この凸守にもご命令を!!」

小鳥遊六花「……それを話し合うために、今日は皆に集結してもらった。極東魔術昼寝結社の夏、存亡の危機。これを解決させるッ」

一色誠「凄むのはいいけど、実際どうすりゃいいんだ? 前回のは勉強頑張れば良かっただろうけど、今回のは学校そのものが相手なんだろ?」

富樫勇太「…………」

小鳥遊六花「あぅ……」

丹生谷森夏「…………」

五月七日くみん「………zzz」

凸守早苗「………」

一色誠「…………あれ?」

 白けた空気のままでは、良い案など思い付くはずもない。

 現実問題、学校側から利益の問題を突き付けられては、たった数人の生徒の意見などは余程の名案でもない限り学校側も受け取らないだろう。

一色誠「あ、ああぁー、そうだ! 最近になって、近所に新しい空き地が出来てだな! そこを拠点にでも」

小鳥遊六花「この結社はここにあってこその意味を成す。学校外での活動など無意味に値い」

富樫勇太「つーか空き地って…。俺たちは小学生かよ」

一色誠「じ、じゃあ最近になって話題に上がってる連続失踪事件とか殺人事件を追って、その研究会的な部活に昇格を」

五月七日くみん「ここ、昼寝部じゃなかったっけ〜?」

凸守早苗「結社の存在理由を否定するとは言語道断デス! そもそもそんな理由、マスターが認めるわけないのデスよ、一般人!」

一色誠「ならなら、いっそのこと校長にでも直接殴り込みに行って力説を! あのハイテンションな校長なら絶対に認めてk」

丹生谷森夏「こら、風紀委員」

一色誠「…………」

富樫勇太「もう惨めだから止めとこうぜ? な?」

 良い案を出そうと頑張ってくれたようだが、一色の頭ではこれが限界である。
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