中二病でも恋がしたい! Cross

□第02話 第三者
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 勇太に掴まれた手首を解くため、大野は大きく腕を振るった。

 そのまま数歩後退したため、勇太は六花の盾になる形で前に出る。

 大野なら今の瞬間に二人とも攻撃することができたはずなのに、何故後退したのか。

 その理由は、勇太の姿にあった。

大野燥太「……制服は、燃えてるな…。そのせいで火傷くらいは負うとも思ってた……が、テメェは燃えすぎてるな……」

富樫勇太「…………?」

 気を失わないように意識を集中させ、大野の言葉を聞き取る。

 正直、大野が何を言っているのか分からない。

 それは言葉が聞き取れないのではなく、言葉が何を意味しているのかが分からないのだ。

 だからこそ、続いて大野の口から出た言葉にも疑問は消えなかった。

大野燥太「……オマエ、中二病患者か?」

富樫勇太「………だった、ら……何だって……言うん…だ……」

大野燥太「…否定はしねぇんだな?」

富樫勇太「…………」

 正しくは、元・中二病である。

 しかし今の勇太には、そんなことを一つ一つ返答していく気力はない。

 何より、大野が怖くて仕方がなかった。

大野燥太「どの道、オマエも“気付けてねぇ”なら一般人と変わりねぇな。まぁ、どんな中二病を患ってたかによっては、助けてやらねぇこともねぇが」

 大野の視線が、勇太から六花に移された。

大野燥太「そっちの邪王真眼は消しておきてぇ」

小鳥遊六花「ーーーぅッ」

 六花を狙われ、勇太もグッと身構える。

 だがしかし……。





????「そいつは困る。お前が二人に用があるように、俺だって二人には用があるんだ」





 何処から現れたのか、バサッと白衣をひるがえして勇太たちと大野の間に第三者が割り込んできた。

 勇太は、ボーッとする頭で分かりにくかったが、かなり長身の赤茶色の髪が見えた気がした。

 もう意識が飛びかけている。

大野燥太「なんだ、テメェは?」

????「お前と同じ、中二病さ」

大野燥太「……チッ、患者の連中か?」

????「いいや。生憎と無所属だ。だからって、お前らんとこに加わるつもりもないけどな」

 また意味不明な会話が交わされている。

 この隙に逃げることができれば……。

富樫勇太「……ぅ…ぁ……ぁぁ」

小鳥遊六花「ーーーッ!! 勇太ッ!!」

 だが勇太の意識は、ここでついに途絶えてしまった。







 目が覚めれば、見知った天井。

 感じ慣れている空気。

富樫勇太「…………?」

 見覚えのある部屋。

 寝かされていたのは、使い慣れている寝台。

 そして傍らには、目に涙を浮かべて眠っている六花の姿。

富樫勇太「……あ…、六花…」

 ここは富樫家の自室、富樫勇太の部屋だった。

小鳥遊六花「ん……む、ぅぅ……」

富樫勇太「六花……六花……」

 名前を呼んで体を揺する。

 やがてゆっくりと起き上がった六花は、勇太が起きていることを確認するとガバッと抱きついてきた。

小鳥遊六花「ーーー勇太ぁッ!!」

富樫勇太「うわあ……っとッ」

 勢いに負けそうになるが、何とか押し留まって六花を抱きとめる。

 部屋を見渡してみると、焼かれたはずの制服は何事もなく壁に掛けられていた。

富樫勇太(……まさか…夢…? いや、でも六花が……それに火傷も……)

 泣いて抱きついてきた六花が、あの出来事が夢ではないことを物語っている。

 勇太の体にも、少しだけ火傷の痛みが残っている。

 だが、明らかに胸部を骨折していたはずだが、その様子はなかった。

 勇太が気絶した後、一体何が起きていたのだろうか。







 六花が落ち着いてから、あの後のことを聞くことができた。

 大野と名乗った少年は、あの後から更に現れた別の少年と一緒に何処かへ行ってしまったこと。

 助けに来てくれた(?)白衣の人が勇太の骨折を一瞬で治してくれたこと。

 本人曰く、火傷は治せないこと。

 勇太と六花を、富樫家まで何も言わずに運んできてくれたこと。

 自己紹介もなく、勇太を寝かしたらすぐに帰ってしまったこと。

小鳥遊六花「最後に伝言で、また近い内に会える。その時に色々と話そう、って……」

富樫勇太「……そっか…。一応、助けてくれたんだよな…」

小鳥遊六花「うん………、でもあの人…」

 駆けつけてくれた白衣の人の第一印象。

 それは六花も勇太も同じものだった。

 何の確証もなかったが、二人ともが一致した以上は少しだけ不自然に思える。



 あの白衣の人物は、何故だか見覚えがあるような雰囲気を持っていた。
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