中二病でも恋がしたい! Cross
□第04話 大罪者
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机に並んでいたチョコ四つ分、今説明した四天王の連中、正式名称“新世界の四獣”の分のチョコを口に放り込む二階堂先生。
ボリボリと咀嚼しながら新しくチョコ菓子を並べていく。
その数は、五つだった。
二階堂啓壱「そしてこっちが、その四天王に対抗してる“違った意味での馬鹿たち”だ」
二階堂先生の先程の言葉を思い出す。
一色誠「……一般人のために、中二病を殺している連中…っすか…?」
二階堂啓壱「正解…」
五つに並んだチョコを見据え、二階堂先生は舌打ちをした。
二階堂啓壱「見方によっちゃ、こっちの方が四天王の連中よりも悪質な重罪犯……いや、もはや“大罪者”って呼んだ方がいいかも知んねぇな」
凸守早苗「“大罪者”……デスか?」
二階堂啓壱「あぁ、何しろこいつらは自分が中二病であることを恥じてる連中の集まりだ。今の富樫くんや丹生谷くんがいい例だな。にもかかわらず、堂々と中二病の力を使って、中二病の連中を殺して回ってる」
言うならば、共食いや仲間殺しに近い行為だ。
中二病であることを恥じ、中二病を殺してしまうと思い至って、行動にも移してしまっている。
確かに中二病は第三者からすれば痛々しく恥ずかしい存在かもしれないが、何も死に絶えなくてはならないほどではないはずだ。
二階堂啓壱「全てを殺した上で、最後には自分たちも自害しようとしている。そんなイカれた連中だ。己が悪者だと自覚しつつ、己と同じ存在を善悪問わずに滅ぼす集団。総称……」
二階堂啓壱「“大罪患者”ッ。俺みてぇな無所属の中二病も、富樫くんや小鳥遊くんのような普通の中二病も、対抗してる四天王の連中も、戦ってる自分たちも含めて、この世に存在する全ての中二病を殺し全滅させようとしてるイカれた集まりだッ」
大罪患者という名を聞いて、勇太は自分が気絶する前に聞き取っていた大野の言葉を思い出した。
大野は、突然と現れた二階堂先生に向かって“患者の連中か?”と聞いていた。
富樫勇太(あれも、そう言う意味だったのか……ッ。四天王側も、大罪患者の存在を警戒してるんだ……)
逆に言えば、四天王ですら無視できていない勢力ということになる。
獲物を何の力もない一般人を相手にしている特殊能力を持った中二病と、そんな特殊能力を持った中二病を相手にしている中二病。
どちらの戦力が大きいのか、既に明らかである。
二階堂啓壱「今や世界は、公になっていないだけで二つの勢力に命運を握られてんだ。どちらかが勝つ以上、一般人か中二病のどっちかは滅ぶんだからな」
丹生谷森夏「……そんなッ」
凸守早苗「…もう止められないのデスか!? 凸守たちは、このまま何も出来ないままなのデスかッ!?」
二階堂啓壱「止まれた過程は、とっくの昔に過ぎ去ってる……。こいつはもう、子供同士の中二病お遊びじゃねぇんだ……」
二階堂啓壱「言うならば、こいつは一種の“戦争”だ…ッ! 負けた方が滅ぶ…ッ。実にシンプルで、心底ふざけた第三次世界大戦なんだよ……ッ!!」
五つのチョコ菓子をガッと掴み取り、一気に口に放り込む。
ボロボロとクズを溢れさせるも、二階堂先生が説明した内容を聞いた後では、誰も何も言えなかった。
軽く掃除し、机も綺麗に片付け直してから落ち着くまで、時間にして十数分ほど掛かってしまった。
丹生谷森夏「………まだ整理できてないけど、とにかく簡単に話をまとめるわよ…?」
ノートに素早く内容をまとめた後、二階堂先生への答え合わせも含めて、皆も話の内容を再度把握しようと丹生谷に注目する。
丹生谷森夏「まず、現在の世の中は“新世界の四獣”を名乗ってる四天王のボスの力で、中二病患者の設定が現実になってしまう事態が発生している。その力で中二病の理想郷を作るため、四天王は仲間を増やしつつ一般人の殺害を目的に動いている」
二階堂啓壱「……間違ってねぇな」
丹生谷森夏「対して、その勢力を間違っていると考える“大罪患者”という元・中二病の勢力が、四天王の連中と敵対している。でも、彼らの目的は自分たちを含めた中二病患者を全て抹殺することにある」
二階堂啓壱「正解だ……」
分かっていた答案に、丹生谷は思わず頭を抱えた。
五月七日くみん「モリサマちゃん、大丈夫……?」
丹生谷森夏「……何ていうか、非現実過ぎて頭が痛くなってきた……。こんなのって、ありえないでしょうが……」
一色誠「でも、丹生谷の左腕を治した力は本物なんだろ? 勇太の骨折だって治ったんだろ?」
富樫勇太「あぁ…そうだな…」
二階堂先生の中二病設定の能力は、外傷を除く全ての怪我を一瞬で治す力。
その力が本物だということは、既に皆の前で見せてくれた。
小鳥遊六花「どうして、絶対治癒魔法の力を?」
二階堂啓壱「絶対治癒魔法って……。それは“どんな中二病を患ってたのか?”って質問に置き換えた上で流しておくぞ、小鳥遊くん」
富樫勇太「やっぱ六花は通常運転か。まぁ、分かってたけど」