中二病でも恋がしたい! Cross

□第05話 決断時
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 次の日、六花はフラフラだった。

 勇太の隣りを維持しつつも、足元は震えている。

 勇太の傍を離れたくない思いだけが強みになったのか、教室に入るまで勇太と一緒にくっついて歩いていた。

富樫勇太「六花、大丈夫か?」

小鳥遊六花「……大丈夫」

 大丈夫そうには見えない。

 教室に入ったところで、丹生谷と一色も面子に加わった。

丹生谷森夏「昨日のメール、本気?」

 開口一番、この面子で一番の問題となっていることの核心を突いた質問を投げかけた。

富樫勇太「返信しただろ……。本気だよ」

一色誠「マジで命賭けるかもしんねぇんだろ? 比喩抜きで、アニメとか漫画とかじゃねぇかもしんねぇんだぞッ?」

富樫勇太「“かも”じゃない……。二階堂先生が言ったことは、嘘じゃないんだ……」

小鳥遊六花「……ぅ…」

 ギュッ、と六花が勇太の袖を掴む。

 勇太はその手を取って、優しく握り返した。

富樫勇太「ビクビクして生きるより、立ち向かわなくちゃ殺される……。だったら、とことん話に乗って、対抗しようと思うッ。それで全部が嘘のドッキリだったとしても、それでいいと思うんだ」

丹生谷森夏「………まぁ、そうだったら呪い殺すほどブチギレて終われるもんね…」

一色誠「…じ、じゃあ…今日の放課後、どうすんだ……?」

富樫勇太「この覚悟、二階堂先生に話す。あとは、先生が話を繋いでくれるさ……ッ」

 朝から放課後までの授業。

 勇太も六花も丹生谷も一色も、気が気ではなかった。

 休み時間を利用して、丹生谷と一色がくみん先輩と凸守に勇太の決意を伝えに行ってくれた。

 今日一日、六花は勇太の傍を離れなかった。

 まるで、何処にも行かないでほしい、と、無言で訴えているように。







 そして迎えた放課後、同好会メンバーが揃った時には、既に二階堂先生が待ち構えていた。

二階堂啓壱「おはようさん、っつっても、もう放課後か」

一色誠「ホント、昼間は何処にいるんスか? 休み時間ごとに探し回ったのに見つからねぇって……」

二階堂啓壱「そりゃ校舎内の何処かにはいたさ。たまたま見つけられなかっただけだろ」

丹生谷森夏「いえ、保健室にいてくださいよ。おかげで、放課後になってからお伝えすることになったじゃないですか」

二階堂啓壱「ううん、その必要はないね」

 キョトンとする面々の中、二階堂先生は唯一真面目な表情を崩さなかった勇太と目で会話した。

二階堂啓壱「その目で分かってたよ。覚悟、できるの早かったね」

富樫勇太「………教えてください…。俺は、これからどうしたらいいですか……?」

 誰かがゴクッと生唾を飲む音が聞こえた。

 中二病絡みの会話だと、いつもはお喋りな六花も凸守も、今だけは何も喋らなかった。

二階堂啓壱「……場所を学校から移しとくか。そんなに遠くでもねぇしな」

五月七日くみん「え? ど、何処に行くんですかぁ?」

 くみん先輩の質問に、二階堂先生は教室の窓から外を指差した。

 校舎から見えるほど、そんなに離れてはいない距離に建っているアパートを。

二階堂啓壱「俺ん家だ。部活連中が残ってる学校よりも、ずぅーっと話しやすい」







 二階堂先生の住居は、学校から見える位置に建っているアパートだった。

 そのアパートの一階、一番奥に位置する部屋。

 招待された勇太たちは、七人でいるには少し狭く感じるリビングに揃い、小さなテーブルを皆で囲んだ。

二階堂啓壱「お茶とか出せりゃ良かったんだが、俺ってば苦手でな。ココアで我慢してな?」

丹生谷森夏「あ、いえ……ていうか二階堂先生、甘いもの好きなんですね」

二階堂啓壱「おうよ、俺の体の七割は糖分で出来てっから宜しくな」

丹生谷森夏「…………」

 全員にココアが行き渡り、二階堂先生も腰を下ろした。

 そして開口一番に、自分が目的とする二つの勢力にぶつかるやり方を語った。

二階堂啓壱「やり方なんざ何でもいい。四天王だろうと大罪患者だろうと、殺すのではなく倒すのでもなく、とにかく大人しくさせて“捕まえる”んだ」

一色誠「捕まえる…?」

二階堂啓壱「あぁ、そうだ。捕まえておく方法は既に用意してるが、最終的な目標は“四天王の殲滅”でゴールインだな」

 二階堂先生は、大罪患者よりも四天王を捕まえて殲滅させることで終わりだと言う。

 特殊な力を持つ中二病を獲物と見ている大罪患者よりも、ただの一般人に危害を加えている四天王を、だ。

二階堂啓壱「昨日も話したが、四天王のトップが全ての始まりだ。そいつが中二病の力を実現させる事態を起こさなけりゃ、中二病って病はただの夢物語で終わった」

凸守早苗「つまり、四天王を先に無力化してしまうことで、芋づる式にこの事態も解消……! 大罪患者なる組織と戦わずとも、世界は全て元通りになるッ! ってことデスね」

二階堂啓壱「確証がないのが痛てぇんだが、俺はそのやり方で戦争を終わらせようと思ってる」

 この状況を生み出した元凶が四天王のボスなら、そのボスを倒してしまえば世界は今まで通りの普通の姿を取り戻す。

 かもしれない。

 そんな仮説に過ぎない説明を、二階堂先生は目的として上げたのだった。
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