中二病でも恋がしたい! Cross
□第07話 腕試し
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放課後、極東魔術昼寝結社の夏メンバーは学校の外を歩いていた。
二階堂先生を筆頭に、何処かへと向かっている様子だ。
丹生谷森夏「これから何処に行くんですか?」
二階堂啓壱「……前によ、警察やってる旧友の話しただろ? 今日の昼頃、そいつから連絡があってな」
五月七日くみん「何の連絡ですかぁ?」
二階堂啓壱「不審者情報」
一同、揃って首を傾げた。
丹生谷森夏「……不審者情報が、どうかしたんですか?」
二階堂啓壱「色々と調べてもらってんだよ。俺ら中二病の件に関わってくれてる以上、そういう奴らの雰囲気とか、何となく察してくれてたりな」
凸守早苗「難しい話は時間の無駄デス。必要事項だけまとめるデスよ、ホワイトジャック」
二階堂啓壱「……それもそうだな。んじゃあ簡単に言っちまうが、俺の旧友は山ほどある不審者情報の中から稀に紛れ込んでくる、四天王やその配下の中二病、もしくは大罪患者が関わっているケースを選び抜いて、俺に教えてくれてんだよ」
富樫勇太「え? じゃあ、今まで二階堂先生が四天王の配下を捕まえてこれたのって……」
二階堂啓壱「情報網の関係じゃ、そいつのおかげ」
丹生谷森夏「捕まえた連中のその後ってのも、もしかして……」
二階堂啓壱「実はそいつんとこに、全員捕まえててもらってる」
小鳥遊六花「……もしかして、その友達がいなくちゃ何も出来ない?」
二階堂啓壱「ノーコメント」
一応、秘密裏に管理しなければならない警察側の情報のため、その友人さんも苦労していることだろう。
到着した場所は、人気のない古い公園。
錆びたものや、既に使えなくなっている遊具も見当たる。
放課後とは言え、まだ明るい時間にもかかわらず、遊んでいる子供は一人もいなかった。
二階堂啓壱「まぁ、廃公園ってところだな。登下校の近道で、たまに近所のガキ共が通ってるから、まったくの無人ってわけじゃねぇが」
キョロキョロと辺りを見渡す二階堂先生。
見渡すほど下校中の子供たちがいるわけではない。
というか、今は一人もいない。
二階堂啓壱「中二病関連の不審者情報は本物だ。ターゲットはこの場所を下校通路として使ってる子供。怪しい奴を見かけたら、すぐに実戦しようと思ってたんだけどなぁ」
富樫勇太「そんなこと考えてたんですか……」
二階堂啓壱「実戦に勝る経験値の獲得ってのも少ねぇからな。でもまぁ、今日はハズレらしい」
不審者どころか、下校中の子供も見当たらない。
二階堂先生は、不審者に襲われてる子供を助ける名目で、その不審者を中二病の力を振るう練習台にしようとしていたらしい。
一色誠「……教師のすることじゃねぇよな」
丹生谷森夏「しっ」
一色のツッコミは聞こえていないようだが、聞こえたところで考えを変える気もないだろう。
二階堂啓壱「まぁ、いないならいないで勝手に修業してればいいか。一色くん、君が敵役ね」
一色誠「……え?」
二階堂啓壱「中二病には富樫くんの攻撃が効いちゃうからさ。一般人は二人いるけど、五月七日くんに任せるのも酷だろう? だからさ、ね? 頼んだよ?」
一色誠「…………」
一色がまたもや体を張らなくてはならない時が来た。
そう思った時だ。
少し離れた場所から、子供の小さな悲鳴が聞こえてきた。
凸守早苗「…む? 今の声………」
五月七日くみん「子供の、悲鳴……?」
二階堂啓壱「……どうやら、一色くんの出番は必要なくなったみてぇだな」
一色誠「あー……、それはそれで何だか切ない……。マゾじゃねぇけど」
一色が呟いている最中、立ち止まって話している場合ではない、と言わんばかりに皆は走り出していた。
目的地と思われる、悲鳴が聞こえた方角に向けて。
富樫勇太「………あ」
二階堂啓壱「気付いたか」
勇太たちは身を隠し、悲鳴の主とその子の手前にいる男を見つけていた。
いかにもチンピラという風体の男で、ナイフを持って怯える子供に詰め寄っている。
悲鳴を上げていた子供は女の子で、既に顔は恐怖しか浮かべていない。
そんな中、勇太と二階堂先生が気付いたこと。
チンピラの左耳に、ピアスが一つ付いていた。
富樫勇太「いや、でもそれだけですよ? ピアス付けてる人なんて何人もいるでしょうし……」
二階堂啓壱「俺は何でお前をここに連れてきた? 中二病に関する不審者の情報が入ったからで、ここに来てみたら実際にドンピシャで獲物がいた。それだけだ」
一色誠「ご都合主義とか言ったらKYかなぁ?」
丹生谷森夏「しっ」
五月七日くみん「あの襲われてる子、一般人かなぁ……」
富樫勇太「十中八九、そうでしょうね……。とにかく放っておけないッ」
二階堂啓壱「あ、ちょっと、おいッ」
何の作戦も立てずに、勇太は飛び出していってしまった。
何だかんだでやる気になってくれているようにしか見えない。
二階堂啓壱「まぁ、いいか。さぁて、ダークフレイムマスターのお手並み拝見だ」
小鳥遊六花「勇太……」
二階堂啓壱「心配すんなよ、小鳥遊くん。いざとなったら、俺が助けに入る」