中二病でも恋がしたい! Cross

□第08話 新組織
2ページ/4ページ


 だからこそ六花は自分たちの目的を、胸を張って宣言できる。

 新世界の四獣とも大罪患者とも異なる、まったく新しい新組織の一員として。

 第三勢力“極東魔術昼寝結社の夏”の創設者として。



小鳥遊六花「私たちは“極東魔術昼寝結社の夏”ッ! 新世界の四獣も大罪患者も関係ないッ! 一般人も中二病も共存していける、今まで通りの世界に戻すために戦う、第三勢力ッ!!」



 シャキーンッ! という効果音が聞こえてきそうな決めポーズで宣言した六花。

 本人はドヤ顔でポーズを崩さないが、対する大野は呆れて何も言えずにいた。

 六花のポーズにではなく、宣言された内容について。

大野燥太「……今まで通りの世界? 一般人と中二病の共存? はぁ〜ん、なるほどねぇ〜……」

 何かを納得したらしい大野が、一度だけ大きな溜息を吐いた。

 そして次の瞬間……。



 ボオゥッ!! と両腕から炎を噴き出して六花を睨んだ。

大野燥太「ーーー悪りぃ、やっぱ殺しとくわッ」

小鳥遊六花「ーーーッ!!?」

 突然の展開に目を見開いて逃げ腰になる六花。

 そんな六花へと、大野は少しずつ距離を詰めるようにして歩いてくる。

大野燥太「オレたち四天王と手を組むなら、お友達も含めて安全は保証する。そういう交渉も用意してたけど……止めだ。一般人を殺して中二病の理想郷を作ることも勧めようと思ってたが……それも止めだッ」

小鳥遊六花「……ッ。わ、私たちは四天王も大罪患者も、間違ってると思ってる! だから…ッ」

大野燥太「ーーーだから、オレたちこそが倒すべき敵だと宣言して世界を守る、ってかぁッ!!? あぁ!?」

 大野の目的は、強大な力を持っていると認めた勇太を仲間に引き入れることだったのだろう。

 しかしそれは叶わず、しかし大罪患者と組むというわけでもない。

 あろうことか、勇太たち側は四天王も大罪患者も間違ってると見なして、新しい戦力として歯向かうことを宣言してきた。

 もう大野に、六花を交渉して仲間に引き入れる選択肢は消滅した。

大野燥太「クソ一般人との共存なんざ望んでんじゃねぇよ……ッ。悪りぃが、今ここで手紙の内容も忘れてもらうッ。危害を受けて焼け死んでもらうぜッ!!」

小鳥遊六花「ーーーッ!!」

 文字通り、爆発したような勢いで前進してきた大野が、六花を殴りつけるために燃える拳を握る。

 勢いよく振りかぶって、六花を殴り飛ばす拳がブゥンッと振るわれた。

 だが、手応えなし。

大野燥太「……あぁ?」

 先ほどまで六花が立っていた場所に誰もいない。

 その代わり、まるで何かが横から通過してきたような足跡が、大野の手前の地面を横切っていた。

 足跡の先に立つ人物に気付き、大野は怒っているような喜んでいるような、言い表せない鼻笑いをした。

大野燥太「……ハッ、ちょうどいい…。邪王真眼を潰したら真っ先に殺しに行こうと思ってたところだぜ……ッ」

 駆けつけた人物は、咄嗟に抱えて救出した六花を地面に下ろした。

 黒革の戦闘衣に身を包み、背中に大剣を背負った闇の炎の使い手。

 “ダークフレイムマスター”富樫勇太が、中二病患者として大野燥太と対峙する。

富樫勇太「そうかよ……。なら、間に合ってよかったぜッ」

 背負っている体験の柄に手を伸ばし、グッと握り締めた。

大野燥太「あぁ? ダークフレイムマスターの主戦闘は剣術かぁ?」

富樫勇太「そういうお前は武術だったな、フレアグラップラー」

 スッと背中から抜いた大剣を握り締め、眼前に立つ大野を見据える。

小鳥遊六花「勇太……どうして、ここに……」

富樫勇太「こっそり来たつもりだったのか? だったら階段が静かに下りてった方がいいぞ」

 急いでマンションの階段を駆け下りていた六花。

 勇太には黙って行くつもりだったが、その失態のおかげで勇太はここに駆け付けることができたのだった。

 六花を背に、大剣を構える勇太。

 燃える両腕も構えず、あくまで余裕に立ち尽くす大野。

 ただし両者とも、一瞬も目を逸らさない。

大野燥太「今の世界の常識ってのに気付いて、中二病を覚醒させてくれたのは嬉しかったぜ? だけどよぉ、テメェらの目的ってのにはガッカリだ……」

富樫勇太「考えなんて人それぞれさ。たまたまお前たちと馬が合わなかっただけなんだよ」

大野燥太「あぁ、そうかい……。それがオレらの目的の邪魔にならねぇもんだったら良かったんだけどなぁ……」

 ここで、やっと大野は拳を握りしめて身構えた。

 目の前に立つ中二病“富樫勇太”を、自らの目的の妨げになる敵と見做して。

大野燥太「大罪患者に入らねぇのは有難てぇが、四天王の配下に入らねぇってのも気に入らねぇッ。オレの邪魔をするってんなら、今でも後でも殺して損はねぇんだよッ!!」

富樫勇太「殺すしか選択できないお前らと、誰が組んでやるもんかよッ」



富樫勇太「ーーー鼓動鳴り響く魔界の得物ッ! 闇焔を食らいて燃え盛れッ!! “魔剣・ダーインスレイヴ”ッ!!!!」



 勇太の右手に握られた大剣が赤紫色に光り出す。

 やがて勇太の右腕を伝って闇焔に影響し、その刃身から闇焔を立ち上らせた。

 闇の炎に燃える魔剣、ダーインスレイヴ。

 それが、勇太が振るう大剣の名だ。

富樫勇太(ーーーぐ、痛っー…ッ。やっぱ使い慣れねぇと、まだ腕に負担が…ッ)
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ