SRP:妹達共鳴計画U

□Data.04 九月十日
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 少年は立ち止まる。

 不意に気付いてしまったのだ。

とある少年「………考えてみれば、こんな重大な事実を……学園都市の上層部が把握してない、なんてことがありえるのか…?」

 学園都市の闇に触れ、大問題に発展する可能性がある真実を知ってしまった少年。

 もしも上層部に知られれば、学園都市の教育体制に波紋が浮かぶ。

 だがしかし、もしも上層部が承知の上で事態を黙認しているとしたら……。

とある少年「…………」

 少年が知った闇の存在が、学園都市に隠蔽されているとしたら……。

 その結論に至った時、少年は怒りに打ち震えた。

 爪が食い込み、血が滲むほど拳を握りしめた少年は、手の中の痛みなど忘れて“とある建物”を睨みつける。

 学園都市を統べる統括理事会のトップ、学園都市統括理事長の城。

 “窓のないビル”を……。







 垣根帝督は肩を上下させて荒い息を吐く。

垣根帝督「…く、そ……ッ。ここまで、俺は弱まってんのか…ッ」

 これでは病弱な子供である。

 ちょっとした運動にも支障を来たしているようでは、とても超能力者など名乗れない。

垣根帝督「チッ……早く、元の力を取り戻さねえと……」

 だが体が動かなければ何も始まらない。

 仕方なく休憩場所を探すことにした垣根だったが、その道中で彼女を見つけた。

垣根帝督「…ん? あれは………」

 初春だった。

 彼女の後ろから、同じ制服を着たストレートヘアの少女と、別の制服を着たツインテールの少女が続いている。

 三人とも、初春を筆頭に何処か焦った様子で学園都市の街中を走っている。

垣根帝督「あの制服は、常盤台中学だな…。何かあったのか…?」

 ちょっとした暇潰し気分で、垣根は後を追いかけた。







 いつもより賑やかなファミレス。

 何かキャンペーンでも行われているのか、普段よりも三倍は多いと思われるお客さんで溢れかえっていた。

 注文するのも順番待ちで、厨房も手が追い付かないらしい。

初春飾利「間に合うでしょうか……。私の期間限定“究極至高冷菓(アルティメットパフェ)”……」

長髪の少女「少しは混んでるとは思ったけど、さすがに予想を超えちゃってたわ、うん」

垣根帝督(……なんだそりゃ)

 ファミレスのお客に紛れ込み、初春たちの会話に聞き耳を立てる。

 どうやら、もうすぐ風紀委員の特別研修があるにも関わらず、期間限定のスイーツ目当てで友達と駆け込んできたらしい。

初春飾利「あと192万ミリ秒……」

垣根帝督(しかも無駄に数字を増やしたカウントダウン付か……)

 すると、初春たちの許に新たな客が顔を出した。

垣根帝督(ーーーッ!!? 常盤台中学の第三位!? くそ、初春の知り合いだったのかッ)

 注文もせず(というか、始めから注文するつもりもなかったため)、垣根は急いでファミレスを出て行く。

 外側の離れた場所から初春たちを眺める体勢に変更したが、その様子は四人の女子中学生の女子会以外の何ものでもない。



 学園都市の闇になど干渉しない、平和な世界を生きている者の空間に見えた。



垣根帝督「…………」

 初春は知らない。

 風紀委員という立場でありながら、学園都市の闇の存在を。

垣根帝督「……だから信用できねえんだよ……。風紀委員も、警備員も…学園都市の治安維持機関ってヤツは…」

 しばらくして、初春がツインテールの常盤台中学生と二人だけでファミレスから飛び出してきた。

 腕章を確認できたため、常盤台の少女も風紀委員らしい。

 更に初春の泣き顔を確認できたため、先ほども言っていた“究極至高冷菓(アルティメットパフェ)”とやらは食べ損ねたのだろう。

垣根帝督「風紀委員の呼び出しを受けちまった、ってところか……。残念だったな」

 ふとファミレス内に視線を移せば、初春が注文したであろうバカデカいパフェと格闘することになった二人の少女。

 二人の内の片方、御坂美琴は闇の片鱗を見ている。

 だが、もう一人は蚊帳の外だろう。

垣根帝督「…………」

 初春も特別研修とやらに出張したため、垣根がここにいる意味はなくなった。

 再び、未元物質の収集に戻っていく。







 闇の事情を抱えた少年は、とある実験を持ち掛けられた。

とある少年「“順位改変計画(クラスチェンジ)”?」

研究員「あぁ。先日まで、超能力者の第一位が実験を行っていたんだが、どうにも進行状況が滞ってしまい、凍結したんだよ」

 超能力者の第一位。

 第二位の自分を上回っている者。

研究員「その際に使用されていた超能力者の第三位のクローンを、君が代わりに消費してくれないか? その目的は、君の能力の応用性向上だ」

とある少年「応用性…向上…?」

研究員「うむ。それ故に“順位改変”という実験名が与えられている。統括理事長の第一候補(メインプラン)の一方通行に代わって、第二候補(スペアプラン)の君が第一位に輝くのさ」

とある少年「統括理事長? 第一候補?」

研究員「おおっと、失敬。口が滑ったかな。今のは忘れてくれ」

 だが、これは好機だった。

 もしも実験に成功すれば、一方通行に代わって第一位になれる。

 アレイスターによって第一候補とされている一方通行と交代して、第二候補の自分が第一候補になれる。

 そうすれば、もしかしたら……。

とある少年「俺が第一候補に成り上がれば……、統括理事長に謁見できたりするのか……?」

研究員「……必ずしも頷くことはできないが、実験を承諾してくれるなら検討しておこう」

 統括理事長との直接交渉権。

 少年は、その資格を得るためならば何でもする、とここに誓う。

 例え、何千人のクローンを殺害することになったとしても……。

研究員「さて、どうするかね? 実験を承諾してくれるのかい?」

 そして少年は……垣根帝督は実験を承諾した。

垣根帝督「……いいぜ、乗ってやろうじゃねえか。俺が第一位になって、アレイスターの野郎の面を拝むためにもなッ」
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