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□18 ウルルンの日常
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 七色ヶ丘市の町をポンポンと飛び回り、七色ヶ丘中学の屋上を目指す妖精。

 ビルの屋上から屋上に、家屋の屋根から屋根に、街路樹から街路樹に。

 とにかく一般人に見つからないことを注意しながら、ウルルンはクタクタになりながら移動していた。

ウルルン「(ウルフルンになって空でも飛べば楽なんだけど……、絶対に目立つしなぁ……)」

 小さな体は見つかり難いが移動が厳しく、大きな体は移動も容易いが見つかるリスクが高い。

 そんな二律背反に苦しみながら、ウルルンは七色ヶ丘中学に到着した。

ウルルン「ふぃ〜…、やっと着いたぜ…………ん? あれは…」

 ウルルンが屋上を見やると、いつもの妖精メンバーの輪に参加している者が見えた。

 屋上に到着すると、全員の視線がウルルンを捉える。

オニニン「あ、ウルルンだオニニ!」

キャンディ「おかえりクルぅ」

マジョリン「いつもご苦労なのさ」

 妖精たちの言い回しに、疑問を持った人物が当人へと訊ねた。

青木れいか「何処かへ出掛けていたのですか?」

ウルルン「まぁ、あっちこっち、色々と……。ていうか、れいかだけか? みゆきたちはどうした?」

青木れいか「それが……みなさん、先日の期末テストが芳しくなかったようでして……」







 教室にて。

 夏休みも迫ってきた本日、期末テストが返却されたみゆきたちに待ち受けていたのは……。

佐々木先生「はい、それでは特別授業を始めます」

星空みゆき「…………」

日野あかね「…………」

黄瀬やよい「…………」

緑川なお「…………」

 赤点を獲得してしまった生徒にのみ与えられる、地獄の特別授業だった。

一同「「「(助けて、れいか(ちゃん)………ッ…)」」」







ウルルン「相変わらずだな、おい」

青木れいか「みなさん、頑張っていたとは思うのですが……」

マジョリン「(いや少なくとも、なおは手を抜いてたのさ……)」

キャンディ「(みゆきも同じクル……)」

オニニン「(このままじゃ、また去年の夏休みと同じ展開が待ってそうだオニニ……)」

 せめて宿題だけは応援してやろう。

 そう思った妖精の面々だった。

ジョーカー「ところで、ウルルンさん。ハッピービーンズの方は順調ですかな?」

ウルルン「ん? あぁ、そこに抜かりはないぜ」

青木れいか「ハッピービーンズ? そういえば、みなさんはそれを集めることが目的で人間界を訪れていましたね」

 忘れがちになるのも無理はない。

 ピーターパンの一件から、最近は騒動ばかりが絶えなかったのだから。

青木れいか「もしかして普段、わたしたちが授業を受けている間にハッピービーンズを集めていたのですか?」

ウルルン「たまに屋上で遊ぶだけ過ごすこともあるけどな。ほとんどは町に出ていってハッピービーンズを集めて回ってるぜ?」



ジョーカー「まぁ、ウルルンさんだけですけどね♪」



ウルルン「は?」

青木れいか「え?」

 ジョーカーの堪え笑いを確認した後、ウルルンはオニニンとマジョリンを見やる。

 瞬間、二人ともプイッと目を逸らした。

ウルルン「オマエら!! ハッピービーンズ、ろくに集めてもいねぇってのか!!? ていうか、必死になってるのってオレだけぇ!?」

オニニン「それは誤解だオニニ。俺様たちだって、ちゃーんとハッピービーンズを集めてるオニニ」

マジョリン「その方法がウルルンと少し違う、ってだけの話なのさ」

ウルルン「は、ぁ……?」

 頭にクエスチョンマークの浮かべて呆然とするウルルンに代わって、キャンディがオニニンとマジョリンに訊ねた。

キャンディ「二人はどうやって、ハッピービーンズを集めてるクル?」

オニニン「俺様は、毎日やよいの手伝いをしてるオニニ。漫画を描いてる時は飲み物を用意したり、部屋の掃除とか片付けしたり、疲れて眠ってたら毛布を用意したりオニニ」

マジョリン「あたしは、なおの兄弟たちと遊んであげてるのさ。この姿の時はヌイグルミのふりをして、マジョリーナの姿の時は近所の奥さんを演じてるのさ」

 奥さん、というフレーズをスルーして(指摘したら怒られそうだから)、れいかは意外な事情の真偽を問う。

青木れいか「ハッピービーンズとは、そんなことでも溜まっていくものなのですか?」

ジョーカー「ハッピービーンズは善行を働くだけで溜まっていくのですよ。もちろん、事柄が大きければ大きいほど溜まる量も多いのですが、小さなものでも少なからず溜まっていくのです♪」

青木れいか「塵も積もれば山となる、ということですね」

 話を聞いていたウルルンは、ようやく硬直状態から脱する。

ウルルン「はぁ……、あかねん家とは大違いだぜ……」

キャンディ「ウルルンもあかねを手伝ったら良いクル! きっとあかねも喜ぶクルぅ♪」

ウルルン「そんなのは試したさ。でもよぉ、接客とかは当たり前だとして、お好み焼きすら満足に焼けないんだぜ? 加えて勉強を見てやることも出来ないから、手伝ってやれることがないんだよ」

オニニン「あぁ……、確かに勉強は俺様も手伝えなかったオニニ……」

 しかし今現在のハッピービーンズは、三人とも同じくらいの量を溜め込んでいる。

 普段からコツコツと善行を積んでいるオニニンとマジョリンも凄いが、それに追いつくほどの大きな善行で一気に稼ぎに回っているウルルンも大したものである。

ジョーカー「宜しければ、ウルルンさんが普段どのようにハッピービーンズを溜めて回っているのか、お聞きしてもよろしいですかな?」

ウルルン「んあ?」

青木れいか「ふふ、わたしも是非ともお聞きしたいです」

マジョリン「あたしたちだって話したんだから、ウルルンも話すのさ!」

オニニン「聞かせてほしいオニニ〜」

キャンディ「キャンディも知りたいクルぅ♪」

 確かに、みゆきたちが授業を受けている間、遊んでいない時のウルルンがどのようにハッピービーンズを集めているのか誰も知らないのだ。

 今まで同じように集めて回っていると思っていたオニニンもマジョリンも、実は家の手伝いなどで済ませていたのだから無理もない。

ウルルン「そうか? でも、大して面白くないから期待するなよ?」

 そう前置きした上で、ウルルンは自分の善行の一部を明かす。

 ちょうど今日も、さっきまで町を飛び回ってきたばかりなのだ。

 例の一つとして、先ほどまでの出来事を語り始めていく。
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