3つの恋が実るミライ♪

□00 プロローグ
2ページ/4ページ


 ロイヤルクイーンの佇む広間に、四人の人影が形成されていく。

 バッドエンド王国から強制送還されてきた三幹部とジョーカーの現出に、みゆきたちは驚きを隠せない。

星空みゆき「ーーーッ!!? う、ウルフルン!?」

日野あかね「アカオーニとマジョリーナも!!」

黄瀬やよい「ジョーカーまでッ」

緑川なお「これって…一体…」

青木れいか「何が起きたのでしょうか……」

 呆然とするプリキュアたちを前に、ウルフルンたちも状況判断に困っているようだ。

ウルフルン「何だ…? ここは…ッ」

ジョーカー「プリキュアと、ロイヤルクイーン……? まさか、ここはメルヘンランドですか…ッ」

マジョリーナ「メルヘンランド!!? 何であたしらがメルヘンランドにいるだわさ!?」

アカオーニ「それに、さっきの奴は何処に行ったオニ……?」

 キャンディとポップ、そしてロイヤルクイーンを庇いつつ、現れた三幹部とジョーカーも警戒するみゆきたち。

 バッドエンド王国の面々が到着したことを確認したフォークは、ウルフルンたちと同じように現出したナイフに話しかける。

フォーク「遅ぇぞ、ナイフ」

ナイフ「すまない」

ウルフルン「あぁ!! テメェはさっきの!」

緑川なお「また増えたッ」

 同じような人物が二人並んだところで、フォークに代わってナイフが状況の説明を始める。

ナイフ「舞台役者は揃いましたね。では、これより状況の説明をさせていただきましょう」

星空みゆき「舞台役者って……」

ジョーカー「……」

ナイフ「まず、ロイヤルクイーンの件ですが……。そこのお方は既に亡くなられています」

キャンディ「ーーーッ!!?」

ポップ「ーーーなッ!!?」

フォーク「加えて、悪の皇帝ピエーロも復活することはない。これで二つの世界は争う必要もなくなり、ハッピーエンドってわけだ」

ジョーカー「…お待ちなさい。さっきから黙って聞いていれば、証拠もない戯言をベラベラと…」

ナイフ「戯言と判断するのは結構です。しかし、事実は事実。この世界の歴史書を読み漁れば真実は明らかになるでしょう」

 本人たちは説明しているつもりのようだが、当人たちは理解が追い付かなかった。

日野あかね「……待てや…。全然、分からへん…」

青木れいか「皇帝ピエーロは、確かにわたしたちが倒しました。ですが、デコルを全て集めた二もかかわらず、メルヘンランドのロイヤルクイーン様が目覚めないとは……どういう意味なのですか?」

黄瀬やよい「そもそも、もう亡くなっているなんて……信じられるはずないよッ」

フォーク「ったく、お喋りが絶えねぇなぁ。そんなに知りたけりゃテメェらで勝手に調べやがれ」

ナイフ「一応、僕たちの目的もお話ししておきましょう。僕たちは、メルヘンランドとバッドエンド王国。そして人間界という三つの世界を結びつける“理想郷”を作り上げるために発足した、貴方たちとは主観の異なる第三勢力です」

星空みゆき「第三、勢力…?」

ウルフルン「何だそりゃ…」

ナイフ「詳しくは、また後ほどお会いした際に。と言っても、また今回のように衝突することでしょうが、致し方ないことだと僕たちも割り切っています」

 ナイフは再びバイオリンを構える。

 前置きもなしに弦楽器の音色が響き渡った瞬間、みゆきたちとウルフルンたちの姿が足元から消失していく。

星空みゆき「ーーーえ!?」

日野あかね「……ッ!? な、何やねん、これぇ!!」

 ポップだけを残し、プリキュアの五人とキャンディ。

 三幹部の三人とジョーカーの姿が、メルヘンランドから消えていく。

ナイフ「人間界とバッドエンド王国にお送りするだけです。またお会い致しましょう」

ジョーカー「……勝手なことをッ」

キャンディ「キャンディたち、これからどうなっちゃうクルぅ!!」

 やがて、プリキュアたちも三幹部たちも姿を消した。

 残されたのはポップとロイヤルクイーン、そしてフォークとナイフの四人だった。

ポップ「皆の衆! そんな、これほどまで呆気なく……ッ」

フォーク「このくらいで嘆くな。別に存在そのものを消したわけじゃねぇよ」

ポップ「……お主たちは、メルヘンランドとバッドエンド王国…。更には人間界まで巻き込んで、一体何を企んでいるのでござるッ!」

ナイフ「企む、とは心外ですね。僕たちは“理想郷”を作り上げる第三勢力だと自己紹介したばかりではありませんか」

 ローブを翻して、フォークとナイフの二人も姿を消していく。

 二人が何処に向かったのかは、ポップにも分からなかった。

ナイフ『ともかく、この世界の歴史を調べ直してみることです。全てではありませんが、今の世の中の答えに近付くことが出来るでしょう……』

 最後の瞬間、ナイフの声がポップに耳へと届く。

 そして……誰の声も聞こえなくなった……。







 そして、約二週間の時が流れた。

 もうすぐ夏休みが始まる時期、みゆきたちは平和な日常を過ごしていた。

 平和すぎる。

 メルヘンランドから強制的に還された日から、バッドエンド王国は当然ながら第三勢力を名乗る者たちからの接触もなくなっていた。

星空みゆき「結局……何だったのかな…」

 放課後のこと。

 みゆきは、鞄の中のキャンディと一緒に下校していた。

 他のみんなは各々の事情で一緒に下校できなかったが、逆に言えばそれほどの余裕まで生まれてしまっている。

キャンディ「お兄ちゃんが言ってたことも、気になるクルぅ……」

星空みゆき「…そうだよね……。メルヘンランドの歴史そのものが、極端に改変されてるなんて………」

 メルヘンランドに残っていたポップは、その世界の歴史書を読み漁った。

 結果、驚くべき歴史が明らかになったのだ。



 メルヘンランドには長らく戦争の歴史が存在せず、悪の皇帝ピエーロの襲撃も記録されていなかった。

 伝説の戦士プリキュアの言い伝えは残されていたものの、バッドエンド王国との争いそのものが“なかったこと”にされていたのだ。



星空みゆき「(ピエーロが新たに復活しないのも、ロイヤルクイーン様が亡くなられてるのも、全部関係があるってこと…? よく分からないや…)」

 結局、みゆきたちは今後どうすればいいのだろうか?

 バッドエンド王国と対立する理由がなくなり、ロイヤルクイーン様の目覚めを待つことも叶わず。

 プリキュアとしての役目が終わってしまう虚無感だけが、今のみゆきの心を支配していくようだった……。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ