3つの恋が実るミライ♪
□02 夏祭りで屋台勝負!?
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金魚掬いの屋台に、みゆきたちは仲良く横並びに座っていた。
その左手側には、お面を被って他人を装っているこうがたちもいる。
星空こうが「(さてと……、こっちの役者は揃ってんだけどなぁ……)」
青木がどう「(今日は誰をバッドエンド王国から連れて来たんだい?)」
星空こうが「(事が上手くいってりゃ、オレの親父とノンの親父さんが来るはずだ)」
青木がどう「(事…? はず…?)」
妙な言い回しをするこうがの言葉に、のどかが金魚を眺めながら説明した。
黄瀬のどか「(みちにいのパパが、まだ荒れてたみたいなの。それで、前みたいに夏祭りの映像をパパが観てたテレビに送ったんだけど……)」
要約すれば、こうがたちはバッドエンド王国の誰かを特定して連れて来ることが出来なかった。
それほど荒れた状況だったことが予想されるが、それでも夏祭りへと誘える環境だけは整えてきたのだ。
テレビを観たアカオーニと、ジョーカーの八つ当たりを受けて気分転換を図ったウルフルンが、二人揃って人間界に来てくれるように。
星空こうが「(だが長居は禁物だったからな……)」
青木がどう「(そういうことか……。それで今回は合流が早かったんだな)」
黄瀬のどか「(ごめんね、みちにい…。ちゃんとパパたちを連れて来られなくて…)」
恋仲の成熟に、夏祭りというイベントはポイントも高いと思って企てたのだが、もしもバッドエンド王国から誰も来なかった場合、この計画そのものが意味を失う。
青木がどう「(とにかく、今は誰かの到着を待とう。僕たちはそこから動き出せば……)」
ジョーカー「はぁ〜い! プリキュアのみなさ〜ん♪ ごきげんよ〜ぅ!」
金魚掬いの屋台に並ぶ面々の背後から聞こえた声に、ほぼ全員が凍り付いた。
星空みゆき「ーーーッ!!?」
日野あかね「……なッ!?」
黄瀬やよい「じ、ジョーカー!!」
緑川なお「それに、マジョリーナまで!!」
青木れいか「何故あなたたちがここにッ」
キャンディ「く…、クルぅ〜…ッ」
突如として現れた二人を前に、あかねとなおとキャンディはチラリと横目で確認した。
こうがたちの存在に気付いていたための目配せだったが、当人たちは頭を抱えて項垂れている。
日野あかね「(あ…、あっちも想定外なんや…)」
緑川なお「(う、嘘でしょ……)」
キャンディ「(あかね…なお…、どうするクルぅ…)」
そして、こうがたちも同じく対応に苦悩する。
まさか予想していた人物とは真逆の面子が現れてしまったのだ。
星空こうが「(何でこうなってんだよ……ッ。バッドエンド王国で何があったってんだッ)」
青木がどう「(………差し詰め…、マジョリーナがジョーカーの機嫌を取ろうとしたのかもしれないな……)」
正解。
黄瀬のどか「(こ、こうちゃん…みちにい…。どうしよう……)」
青木がどう「(……仕方ありません…ッ。ここは…ッ)」
がどうは決意を固める。
そして……行動を起こした。
青木がどう「ーーーていぁぁぁああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
突然の奇声。
がどうは、金魚掬いで用いられる道具“ポイ”を振るって、手当たり次第に金魚を掬い上げていく。
その光景は異質そのものであり、プリキュアたちやマジョリーナたちを含め、周囲のお客さんをも驚愕させていった。
結果、がどうのボウル(×3)には二十匹以上の金魚たちが確保されていた。
青木がどう「おじさん。十分に楽しめましたので、この子たちはお返しします」
屋台主「そ、そりゃどうも……」
他のお客さんたちから拍手を受ける中、がどうはあかねたちに目配せをしてジェスチャーする。
日野あかね「……! せ、せや! ウチらも負けてられへんでぇ!」
緑川なお「あー、ほ、ほら。れいかもやってみてよッ。ね?」
青木れいか「え? わ、わたしがですか……?」
どうにも周りの状況についていけなくなった面々を差し置いて、あかねとなおだけは金魚掬いを推していく。
更に、キャンディに至ってはとんでもなく大胆な行動に出てしまっていた。
みゆきの肩から、ジョーカーの肩へと飛び移ったのだ。
キャンディ「ジョーカーも金魚掬いやるクルぅ!」
ジョーカー「………………はい……?」
日野あかね「(ーーーって、いきなりかぁぁぁいッ!!!!)」
緑川なお「(何してんの、キャンディッ!!!!)」
キャンディの行動を前にしたみゆきは、ピシッ!! と硬直してしまった。
超危険人物であるジョーカーに声をかけたことに対する驚愕と同時に、自分の肩からジョーカーへと飛び移っていく行動そのもののショックが大きかったのだ。
星空みゆき「き、キャンディ〜……ッ」
ジョーカーとマジョリーナを屋台の傍まで連れてきた後、キャンディはあかねとなおの間へと飛び移る。
キャンディ「(これで、れいかとジョーカーの仲も急接近クルぅ〜♪)」
日野あかね「(にしても、無茶し過ぎやって!)」
緑川なお「(みゆきちゃん、ショックで涙目になってるよッ)」
状況に流されるまま金魚掬いをやらなければならなくなってしまった。
青木れいか「で、では……まずはわたしから……ッ」
まずは、れいかがポイを構えて金魚を見やる。
そして……。
青木れいか「ーーーはぁぁぁあああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
つい数分前に見せられた異質な光景が再び広がり、次々と金魚がボウルへと移されていく。
結果、れいかのボウル(×9)には百匹近くの金魚が掬い出されていた。
星空みゆき「すごぉぉぉい!!!!」
日野あかね「まるでプロやな……」
緑川なお「金魚掬いの達人だね」
青木れいか「お爺様、直伝のワザですッ」
それらの結果を見たジョーカーも、一通りのやり方を熟知したようだ。
ジョーカー「なるほど……。さすがは人間の考える祭り事ですねぇ♪ 所詮は幼稚ですか」
ポイを構えたジョーカーは、皆の注目が集まる中で水面を見据えた。
そして……。
ジョーカー「ーーーほぉぁぁあああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
まるで水面を滑っていくかのような手捌きで金魚を掬い上げていく。
だが、しかし……。
ジョーカー「あ」
青木れいか「あ」
ボチャン、とポイの表面が裂け、そのまま逃げられてしまった。
青木れいか「…………」
ジョーカー「…………」
青木れいか「………ふふ…」
ジョーカー「ーーーッ!! 意外と……む、難しいですね……」
マジョリーナ「ほら、あたしの分をやるから再チャレンジだわさ」
マジョリーナのポイを受け取ったジョーカーが、再び水面下の金魚を睨み付ける。
その様子を眺めていたこうが、がどうに一つだけ事実を告げた。
星空こうが「掛け声だけなら揃ってたよな。さすが親子」
青木がどう「…………」