3つの恋が実るミライ♪

□03 豊かな自然と迫り来る危機・前編
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 やがて、全員分の麦茶を抱えたタエが居間に入ってきた。

星空タエ「長旅、ご苦労様。暑かったでしょ?」

 なおが麦茶の乗った盆をタエから受け取り、テーブルに並べていく。

 みんながテーブルに並んでいく最中、みゆきがタエへと何気ない話を振り出す。

星空みゆき「今年もいっぱい野菜作ったんだね。美味しそうッ」

星空タエ「下の川で冷やしてあるよ。食べる?」

星空みゆき「…ッ、うんッ!」

 みゆきの輝かしい笑顔と田舎特有の会話に、他のみんなは首を傾げていた。







 川へ向かう道中、あかねの携帯が振動する。

 山中が故に電波が悪いのか、通話先のがどうの声が途切れ途切れに聞こえる。

日野あかね「え? 何て? あぁ……ん? え? それホンマッ?」

緑川なお「ん? どうしたの?」

日野あかね「いやな……バッドエンド王国の方も、何や酷い暑さらしくて…今回は誰も連れて来れんかったみたいや…」

キャンディ「クル? そりじゃあキャンディたちは何をすればいいクル?」

緑川なお「未来の旦那たちがいないんじゃ、縁結びも恋仲の進展も望めないし……」

日野あかね「今回は普通に過ごして終わりそうやな」

 こんな日もあるだろう。

 そう思ってあかねたちは、みんなの待つ川辺へと駆け寄っていった。







 タエの冷やしていた野菜を食べながら涼んでいるみゆきたちから、少し下流へと向かった先の岩陰。

 そこでは、バッドエンド王国から何の収穫もなしに帰ってきたこうがを含めた、がどうたち三人が涼んでいた。

青木がどう「とりあえず、あかねさんに連絡しておいた。今回は僕たちも休むとしよう」

星空こうが「…悪ぃな……」

青木がどう「幸牙の猪突猛進ぶりは今に始まったことじゃないんだろ? 長閑の日射病を避けてくれただけでも功績だよ」

星空こうが「ノンが日射病になったことなんかねぇだろうが…………って、そう言えばカズ。ノンはどうした?」

青木がどう「え? あれ…?」

 辺りを見渡すと、さっきまで傍にいたはずののどかの姿が見当たらない。

 少しだけ岩陰から顔を出して、みゆきたちがいる方へと視線を向けた時。

星空こうが「…あッ!」

青木がどう「……そういうことか」

 見つけた。

 他の岩陰に隠れているため、みゆきたちには気付かれていないようだ。

 のどかのいる岩陰までコソコソと移動した二人は、のどかの好物を嫌というほど知っている。

 みゆきたちに向けられたのどかの瞳はピカピカと光り輝いており、口の端からは天然水と見間違えるほど透き通った涎が綺麗に流れている。

黄瀬のどか「…美ぉ味ぃしぃそぉ〜…」

青木がどう「長閑……」

星空こうが「まぁ、気持ちは分からなくもないけどな」

 のどかは、大の野菜好きな超ベジタリアンである。

 天然の冷蔵庫である自然の川で冷やされた採れたての野菜ほど、のどかの食欲を刺激する食べ物はない。

 余談だが、のどかは大根だろうがネギだろうが生のまま食べることが出来るくらい野菜が好きなのだ。

 と、そんな時だった。

黄瀬のどか「あッ!!」

星空こうが「ん?」

青木がどう「おや?」

 みゆきが、一本のキュウリを川に流した。

 下流に乗って流れてくるキュウリを、こうがは反射的に掴み取っていた。

星空みゆき『河童さーん! キュウリあげるから、悪さしないでねぇー!』

星空こうが「はぁ!? 誰が河童だッ」

青木がどう「待ちなって。そう言う意味で流したんじゃないよ、きっと。それより……」

星空こうが「……あん?」

 こうがが掴み取ったキュウリを見て、のどかの瞳が一層輝く。

 口から流れる涎は既に滝の如く、冗談抜きで干乾びないか心配になるほどだった。

星空こうが「……ほらよ…」

黄瀬のどか「…い、いいにょ?」

星空こうが「このまま川に流して、河童のエサになるよりはキュウリも本望だろ。食っとけ」

黄瀬のどか「わぁいッ♪」

 こうがからキュウリを受け取ったのどかは、まるでリスのようにキュウリを頬張っていく。

 両手でキュウリを掴んでモキュモキュと食べていく最中、更にトマトまで流れてきた。

黄瀬のどか「んむむ!?」

青木がどう「……?」

 がどうが上流の方へと視線を向けてみると、苦笑いを浮かべたあかねとなおがこちらを向いていた。

 川辺の近くに下りていたキャンディが、どうやらトマトも流してくれたようだ。

 もちろん、大好物のキュウリではないため河童に宛てた物ではない。

星空こうが「良かったな、ノン」

黄瀬のどか「〜〜〜♪」

 のどかが、潤んだ瞳でトマトも口に運んでいく。

 すると、がどうの視界が何かを捉えた。

青木がどう「……え?」

 がどうたちがいる川辺より、更に下流。

 先ほどまで何もいなかったはずなのだが、がどうの目には何かが川の中から顔を出しているように見えた。

星空こうが「あん? カズ、どうした?」

青木がどう「……いや…、何でもない…」

 次に視線を向けた時、その何かはいなくなっていた。

 だが川の中から顔を出していた何かは、がどうの勘違いでなければ……。

 こちらをジーッと、睨んでいるように見えたのだった。

青木がどう「(…………)」
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