3つの恋が実るミライ♪
□04 豊かな自然と迫り来る危機・後編
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ウルフルンも含めて、みんなで畑の手伝いを進めていく。
そんな中、同じ畑の中に身を隠していたこうがたちは移動を始める。
見つかったら厄介なことになりそうだ。
星空こうが「(一応、ローブは持ってきてるが……さすがに、もう着たくねぇからな)」
青木がどう「(同感だね。とりあえず、あかねさんかなおさんと連絡を取るよ)」
携帯を取り出して、あかねへと連絡を入れる。
が、しかし……。
青木がどう「(……あれ?)」
黄瀬のどか「(どうしたの?)」
青木がどう「(電波が悪いな。こんなに近くにいるのに、繋がらない……)」
そう言えば、昨日の昼頃に連絡を取った際も雑音が酷かった。
山中なため電波状況が悪いのかと思ったが、ここまで極端な状況だと別の理由があるように思えてくる。
青木がどう「(…とりあえず、なおさんにも連絡を試みてみようか……)」
星空こうが「(あん? 誰に繋げようが同じじゃねぇのか?)」
だが予想とは裏腹に、なおはすぐさま連絡に気付いた。
緑川なお『はい、もしもし』
青木がどう「なおさん、がどうです」
緑川なお『あぁ、がどうくん。今、何処にいるのかな? 何か、ガーガー、言ってるけど』
繋がったものの、やはり電波状況は悪かった。
声は途切れ途切れで、雑音も混じってくる。
青木がどう「(…ウルフルンさんの登場は、こちらでも予想外です。ですが、みゆきさんとの関係の進展をお任せしても宜しいでしょうか?)」
緑川なお『え? そっちはどうするの?』
青木がどう「(少し気になることが出来ましたので、そちらに当たっています。それでは、宜しくお願い致します)」
そう言って、一方的に通話を切ったがどうは、こうがとのどかに視線を送る。
星空こうが「(気になること、って何だ?)」
青木がどう「(それを今から確かめに行くのさ。ちょっと付き合ってくれ)」
こうがたち三人は、みゆきたちを残して畑の中から出ていく。
目指すのは……山頂に大岩が見えている、近隣の山の中だった。
畑を手伝っていたウルフルンだが、今日は妙に大人しかった。
暑さのせいかと思われたが、先ほど川辺で涼んだ上に、キャンディから水を浴びせ掛けられたため、今は涼しいくらいだ。
ウルフルン「…………」
ウルフルンは今、土に生えている雑草を根こそぎ引き抜く作業に没頭している。
星空みゆき「どう? ウルフルン、楽しい?」
ウルフルン「へあ!!? べ…別に楽しかねぇよッ」
星空みゆき「でも、結構真剣な顔してたよ?」
ウルフルン「………やり出すと、ボーっとしちまってただけだ……」
星空みゆき「ふふ」
ウルフルンは気付いていないようだ。
作業をしている中、自分の尻尾がブンブンと楽し気に揺れていたことに。
そして、その様子をずっと隣りにいたみゆきに見られていたことに。
星空みゆき「(ウルフルンって、こういう一面もあったんだ……)」
そんなことを思いながら顔を上げた時、少し離れた場所に本物の狐が現れる。
星空みゆき「あ、狐!」
ウルフルン「あん?」
こちらに振り向いた狐は、二人と目が合った矢先に何処かへと姿を消していった。
ウルフルン「……オレは、あんなヤツと間違われたのか…」
星空みゆき「おばちゃんに悪気はないよ。許してあげて」
ウルフルン「おばちゃん? じゃあ、あのばあさんは、オマエの?」
星空みゆき「うん。わたしのおばあちゃんだよ」
ウルフルン「あー……納得」
星空みゆき「えぇ? それどういう意味ぃ?」
ウルフルン「ウルッフフ! 勝手に想像してろ」
星空みゆき「ハップップー…」
放っておいても勝手に会話を進めていく二人。
その様子を見て、あかねとなおは安堵の溜息を吐いた。
日野あかね「(何や…ええ感じやな?)」
緑川なお「(れいかとやよいちゃんより、みゆきちゃんの方は早い内に上手くいきそうだね)」
各々で畑の手伝いを進める中、縁側に立ったタエから声が掛けられる。
星空タエ「そろそろ休憩にしましょう。トウモロコシ焼けたわよー」
星空みゆき「はぁい」
ウルフルン「…! トウモロコシ!」
再び思い出した。
そう言えば、さっきから空腹だったっけ。
一方、タエの家が眺められる近隣の山中。
こうがたち三人はとんでもないものを見つけていた。
星空こうが「おいおい……マジかよ…」
黄瀬のどか「こ、こうちゃん…ッ、みちにい…ッ」
青木がどう「…ッ。昨日からの胸騒ぎは、これが原因か……」
動揺を隠せない三人。
だが、悠長に立ち止まっている場合ではない。
黄瀬のどか「ど、どうしよう……」
星空こうが「どうするも、こうするも。やるきゃねぇだろッ」
青木がどう「事態は未然に防ぐべきだが、気付くのが遅かったかもしれないな……。間に合ってくれればいいがッ」
がどうの憶測は正しかった。
この時は既に手遅れだったかもしれず、恐ろしい危機は刻一刻と迫っていた。
大口を開けたウルフルンは、タエの用意した焼きトウモロコシを二本ほど一気に平らげる。
星空みゆき「あー! 二本も食べちゃったッ」
ウルフルン「こちとら腹ぁ減ってんだよ。これでも足りねぇくらいだぜ。オマエのも寄越せ!」
星空みゆき「ダメダメェ! これはわたしのぉ」
縁側で嬉々としてじゃれ付く二人を見て、あかねとなおとキャンディはニマニマ。
やよいとれいかは呆然としていた。
星空タエ「あらあら、そんなにお腹が空いていたのね」
ウルフルン「んあ?」
星空タエ「今、何か持ってくるわね。ちょっと待ってて」
ウルフルン「はぁ? あ、いや、ちょっと待てよ! ばあさん!!」
家の中へと戻っていったタエに、ウルフルンは二の句が出ない。
どうにも、この場所に来てから調子が狂わされっ放しだ。
ウルフルン「……何なんだよ…一体…」
狼として恐れられてきたウルフルンは、あんな風に接してくる人間を始めて目にする。
そして今も……。
星空みゆき「…? どうしたの?」
ウルフルン「…ッ。な、何でもねぇよ!」
プイッ、と顔を背けた時だった。
ウルフルンの背筋に、ゾワワッと怖気が走ったような気がした。
ウルフルン「ーーーッ」
キャンディ「クルぅ? ウルフルン?」
キャンディはウルフルンの表情の変化に気付いたようで、それに続いて皆もウルフルンへと注目する。
日野あかね「何や、どないしたん?」
ウルフルン「………何か、来る…」
そう呟いた瞬間のこと。
震度は弱かったが、足元を揺るがせる小さな地震が発生した。