3つの恋が実るミライ♪
□05 悪戯絡みの肝試し
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生徒会の意見箱に集められた、七色ヶ丘中学に伝わる怖い話。
まず最初は、音楽室だった。
青木れいか「時折り、誰もいないのにピアノが鳴る、という噂があります」
星空みゆき「…ぅ」
緑川なお「……ッ」
日野あかね「小学校ん時も、そういう噂あったなぁ」
青木れいか「こういう噂には、悪戯に恐怖心を煽るものが多いです。生徒会副会長としては、見過ごすわけにはいきません」
あくまでも、れいかは生徒会の校務の内の一つとして捉えているらしい。
しかし、みゆきとなおは既に恐怖で硬直している。
あかねたちに促されるまま、とりあえず音楽室へと踏み込む二人。
みゆきとなおは、ゆっくりゆっくりと音楽室の奥に置かれているピアノへと近付いていく。
ピアノの前に立ち、二人揃って鍵盤の蓋を開けていった。
瞬間……。
まるで誰かが演奏を始めたかのように、一斉にいくつもの鍵盤が音を立てて鳴り始める。
みゆき&なお「「ーーーッ!!!?? きゃぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」」
全速力で音楽室から飛び出した二人だが、あかねに首根っこを掴まれて逃走を断たれる。
日野あかね「待ちぃッ、どうしたん?」
みゆき&なお「「ーーーけッ、けけけけけけけけッ!!!!」」
日野あかね「け?」
みゆき&なお「「鍵盤がッ、勝手にぃッ!!」」
口は回っていないが、二人の様子から察するに“鍵盤が勝手に鳴り始めた”と言っていることは伝わってくる。
だが当然の如く、あかねたちがそれを信じるはずがなかった。
一方、みゆきたちが音楽室を出ていった後のピアノ付近では。
ジョーカー「ぷっふーッ!! 上手くいきましたねぇ、ウルフルンさん!」
ウルフルン「ウルッフフフ!! 見たか見たかぁ!? あいつらが驚いて逃げていく姿!」
絶好調のバッドエンド組は、このまま次の仕掛けへと移るために移動を開始する。
だが、その瞬間。
バッドエンド組の誰も細工を施していない中で、突如として鍵盤が勝手に鳴り響き始める。
ウルフルン「ーーーッ!?」
ジョーカー「ん?」
咄嗟にピアノへと振り返った瞬間、まるで何事もなかったかのようにピタッと演奏が止んだ。
ジョーカー「ふむ…驚きましたねぇ。気のせいでないのなら、偶然でしょうか…。ねぇ? ウルフルンさん…………おや…?」
ピアノから視線を外して正面へと向き直った時、既にウルフルンの姿はなかった。
ウルフルン『ででででッ!! 出たぁぁぁあああああッ!!!!』
音楽室の外から、遠く離れていく叫び声だけが聞こえてくる。
ジョーカー「やれやれ、情けないですねぇ」
プリキュアたちが次に訪れたのは、踊り場に設置された大鏡だった。
青木れいか「別の世界へ続く鏡です。あの鏡を覗いた時に、もし映るはずのない人影が見えてしまったら……鏡の世界に引き込まれ、二度とこちらの世界に戻って来られなくなる。という噂です」
そんな話を聞かされれば、腰の引けない怖がりはいない。
しかし、これは怖がりを克服するための“修行”であるため、みゆきとなおは大鏡を目指して再びゆっくりと階段を進む。
大鏡の前に並んで立った二人は、恐る恐る視線を上げて大鏡の中を覗き込んだ。
そこには……。
真っ黒な姿をした女性と鬼のような形相で睨み付ける大男が、みゆきとなおをジーッと睨みつけていた。
みゆき&なお「「ーーーッ!!!?? いやぁぁぁあああああああああああああああッ!!!!!!」」
再び全力で逃げ出す二人だが、これまた再びあかねの手で首根っこを掴まれて逃走を断たれた。
日野あかね「待ちぃ! 今度は何ぃ?」
みゆき&なお「「ーーーで、出たぁッ!!!!」」
みゆきたちが階段から離れていく最中、若返ったマジョリーナとアカオーニの二人が腹を抱えながら大鏡から姿を現す。
実はこの鏡、マジョリーナが細工を施した偽物である。
マジョリーナ「うっふふふ…、何て様だい」
アカオーニ「ウッハハハ!! 笑いを堪えるのに必死だったオニぃ!」
目尻の涙を拭いながら、アカオーニは何気なく本物の大鏡へと目を向けた。
マジョリーナの細工が解かれた、何の変哲もない普通の大鏡に映ったのは……。
鏡に背を向けているマジョリーナの後ろ姿と、こちらを睨みつけている人狼の姿だった。
アカオーニ「ーーーオニぃッ!!?」
マジョリーナ「ん? どうしたんだい?」
マジョリーナの言葉に返答する余裕もなく、アカオーニは全速力で逃げ出していた。
アカオーニ『うわわぁぁぁあああああッ!! 俺様ッ、別の世界になんか行きたくないオニぃいいいッ!!!!』
マジョリーナ「……はぁ?」
一人残されたマジョリーナは、何処かへ逃げていったアカオーニを追うこともなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。
そして、階段から離れていたプリキュアたちの間では、みゆきとなおの体験話が続いている。
しかし次の美術室に到着するまでの間も、やはり本気で相手にされることはなかった。
青木れいか「ここには、壁に飾られた絵の人物が動く、という噂があります」
日野あかね「へぇ〜」
黄瀬やよい「わぁ♪ こわぁ〜い♪」
星空みゆき「え? まさか、またわたしとなおちゃんの二人だけで行くの!?」
日野あかね「当前やろ? 肝試しやもん」
サラッと当たり前宣言をされたみゆきは、ついに我慢の限界を迎えてしまった。
星空みゆき「ちょ…ッ!! わたし、もうヤダぁ!! みんなも一緒に来てよぉ!!」
なおもみゆきの意見に賛同するようで、無言のまま頷き返している。
その様子を見て、あかねたちも仕方なく折れることにした。
日野あかね「……よっしゃ…、しゃーないなぁ…」
みゆきとなおを先頭に立たせる体勢は変えず、今度は五人全員で美術室へと入っていった。
黄瀬やよい「れいかちゃん、あれのこと?」
青木れいか「ええ…多分…」
壁に飾られた絵を眺めていく中、ふと一枚の絵に目が止まった。
他の作品に比べて、ほんの少しだけ違和感があったのだ。
青木れいか「…?」
黄瀬やよい「あれ? あの絵…」
“よくかんでたべよう”の見出しが書かれているものの、肝心の絵には緑色の衣服を着た人物の後ろ姿しか見えていない。
星空みゆき「…何か、変……」
日野あかね「……ホンマや…」
だが問題なのは、その後ろ姿に見覚えがある事実だった。
緑川なお「…? 何か…どっかで見たような……」
五人が目を凝らして絵を眺めていた時のこと……。
後ろ姿だった人物が振り返り、リンゴを差し出してウインクしてみせた。
マジョリーナ『毒林檎は如何かしらぁ?』
瞬間、美術室に今まで以上の絶叫が響き渡った。