3つの恋が実るミライ♪
□06 アスレチック島・前編
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みゆきたちが目を覚ますと、そこには不可思議な光景が広がっていた。
絶海の孤島。
海に囲まれた小さな島の海岸に立っていたプリキュアたちは、辺りをキョロキョロと見渡した。
水平線の彼方には、船も島も何も見当たらない。
星空みゆき「……?」
海から目を離し、島の中央に視線を向ける。
そこに広がっていた島の光景を見て、みゆきたちは更に呆然としていた。
みんなを代表して、みゆきがポツリと呟いた。
星空みゆき「…ここは…一体……」
目の前に広がっていたのは、様々な競技がコース形式で分かれている、超巨大なアスレチックパーク。
島全体に広がった運動種目で構成された孤島は、まさに“ゲーム”が行われるためだけに存在する島。
みゆきたちは、七色ヶ丘の公園から“アスレチック島(アイランド)”へと飛ばされてしまったのだった。
緑川なお「…ぁ〜……」
日野あかね「……あちゃぁ…」
キャンディ「クル?」
頭を抱えるあかねとなおだったが、みゆきたちは眼前の光景に気を取られて気付くことはない。
黄瀬やよい「ここ何処…?」
星空みゆき「公園にいたはずなのに…」
と、そんな時だった。
約十種類のアスレチックとは別に、傍らの海辺付近から近付いてくる影があった。
マジョリーナ「あ! プリキュアだわさぁ!」
星空みゆき「え?」
振り返ってみれば、そこにはマジョリーナを始めとしたバッドエンド王国の面子が勢揃いしている。
黄瀬やよい「やっぱり…ッ」
青木れいか「そういうことだと思っていました…」
どうやら、この事態はバッドエンド王国側が仕掛けたものだと判断したようだが、当人たちの反応からすぐに誤解だと気付くことになる。
ウルフルン「おい、オマエら! ここは何処だッ」
星空みゆき「え? ウルフルンたちが仕掛けたんじゃないの?」
アカオーニ「俺様たちは何もしてないオニッ」
ジョーカー「まったく…迷惑な話です……。何がどうなっているんですか…」
みゆきとウルフルンたちが会話する中、周りのみんなに気付かれないようにマジョリーナが目配せを送ってきた。
作戦通り全員を連れてきた、と伝わってくるが、素直に喜べないのが現状だった。
日野あかね「(…う、ウチらの宿題……)」
緑川なお「(……どうしよう…)」
マジョリーナの目配せに、さり気なくキャンディが応えている。
あかねとなおは苦笑いを浮かべるしかなかった。
そんな面子が集合を果たした時、ついに黒幕(を演じている三人)が姿を現した。
ナイフ「ようこそ、お客人…。僕たちの“アスレチック島(アイランド)”へ…」
島全体に広がるアスレチックを背景に、ローブを身にまとった三人がプリキュアとバッドエンド組の前に浮上する。
相変わらずフードを深く被って顔を隠しているが、その正体は極一部の者のみが知っている。
ウルフルン「あぁ!! テメェらは!」
黄瀬やよい「第三勢力!!?」
青木れいか「では…この事態は、あなたたちの仕業ですか……」
アカオーニ「あれ? 一人多いオニ」
彼らの正体を知らない者は、いまだに第三勢力のメンバーを二人しか知らなかった。
第三勢力の事情を知る者は、あかねとなおとキャンディとマジョリーナの四名だけだ。
ナイフ「では、せっかくなので改めて自己紹介させていただきましょう。第三勢力リーダー、ナイフと申します。以後、お見知りおきを」
フォーク「第三勢力、フォークだ」
スプーン「第三勢力、スプーンです。よろしくお願いします」
アカオーニ「…オニ……?」
アカオーニは、スプーンの声に聞き覚えがあるような気がした。
しかし、どうにも思い出すことが出来ない。
ジョーカー「自己紹介など要りません。ワタシたちに何の用ですか?」
ナイフ「ふ…、せっかくの機会です。僕たちの遊びに付き合っていただこうと思っただけですよ」
黄瀬やよい「遊び…?」
スプーン「この世界で、わたしたちが決めたルールに従ってゲームをしてもらうの! 種目は全部で十一種類♪ 全部クリアーしなくちゃ、この世界からは永遠に出られないんだよ〜」
ウルフルン「あぁん? 何だそりゃ。ただゲームすりゃいいってのかよ?」
星空こうが「くじ引きで決まった二人一組のペアで協力して、全てのペアが十一種類の競技をクリアーすれば、な! 制限時間は各種目ごと一時間ッ。タイムオーバーした場合は、即刻ゲームオーバーだぜッ!」
まとめると、このゲーム“アスレチック島(アイランド)”のルールは以下の通りになる。
@この島にある全十一種類の競技を全てクリアーしなければ、この世界から永久に出られなくなる。
A競技に参加するのは、くじ引きで決まった二人一組のペア。
B全ての競技を一時間の制限時間以内にクリアーすること。
Cタイムオーバーを迎えた場合は、その時点でゲームオーバーと見なす。
青木れいか「こんなことをしても、何も得られません。元の世界に帰してください!」
ナイフ「まぁ、そう慌てないでほしい。僕たちだって鬼じゃないんだ。ゲームをクリアーしてくれれば帰してあげますよ」
フォーク「所詮はオレたちの暇潰しさッ。どうせなら楽しませてくれよ」
どうやら第三勢力は、プリキュアとバッドエンド組を駒として扱い、このゲームを暇潰しとして楽しむ気のようだ。
もちろん、あかねたちにはそれが嘘偽りだと知っている。
ナイフ「では、早速くじ引きに移ろうと思うんだが……ここで問題が浮上している」
星空みゆき「え? 問題?」
スプーン「実はね。各競技の出場選手項目が四つしかないの! だから、全員合わせて十人もいるあなたたちの中から、二人だけ応援者が出ちゃうんだよ」
ジョーカー「ほっほぉ〜? つまり、その二人は競技に参加することはなくなるわけですね?」
フォーク「そうだが、逆に言えばこの世界の脱出法を他の連中に委ねられることになる。この世界から出たけりゃ死ぬ気で応援しろ、ってことだ」
こうして、ペア決定のくじ引きが行われた。
結果は……まぁ、真の目的を知っているなら当然ながら結果が出ている。
ウルフルン「チッ…よりにも寄って……。足ぃ引っ張ったら承知しねぇぞ!」
星空みゆき「はっぷっぷーッ。わたし、そこまで役立たずじゃないもんッ」
星空みゆき&ウルフルン・ペア。
アカオーニ「参ったオニ…。これじゃ俺様、勝てる気がしないオニ…」
黄瀬やよい「ち、ちょっと! それどういう意味ぃ!?」
黄瀬やよい&アカオーニ・ペア。
青木れいか「……あなたがペアですか…」
ジョーカー「いいですねぇ〜、その冷たい眼差し♪ ゾクゾクしちゃいます…ッ」
青木れいか&ジョーカー・ペア。
日野あかね「…しゃーないな……。こうなったら、とことんやったるでぇ!」
緑川なお「割り切るしかないか…。仕方ないッ、直球勝負だ!」
日野あかね&緑川なお・ペア。
キャンディ「キャンディとマジョリーナは応援組クルぅ!」
マジョリーナ「お前たち、あたしらの分まで頑張るだわさぁ!」
キャンディ&マジョリーナ・応援組。
当然ながら、くじ引きにも細工が施されていた。
みゆきたちのペアは、必ず組まれるべくして組まれており、あかねたちは万が一の場合に備えて競技内にフォローを入れていく役目を任されている。
そして、キャンディとマジョリーナはこのゲームの進行を見守ると同時に、こうがたちと話し合いながら状況を操作していく役目があったのだ。
ナイフ「さて……間もなくして第一競技が始まります! 四組のペアに選ばれた八人は、所定の位置まで移動をお願い致します!」