俺がお前に!!

□5。
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昼休みは、気持ちいいくらいに空が晴れていた。



『切原くん』




毎度のことながら優奈が赤也の教室に来る。


なぜか今回は大きい紙袋を持っていたが。




「おー、嫁の登場だぞー切原っ」

「あ"ー?嫁じゃねーっつーの!!死ね」

「酷くね!?」




クラスメイトも今では少し異様なこの光景にも慣れ、赤也を茶化せるくらいになった。




『今日のお昼は中庭で食べましょう、ここらが空いてますね…あ、お昼は食べました?』


「焼きそばパン食った」


『そうですか』



そう言うと優奈は、紙袋から中身を取り出し並べる。




『どうぞ、召し上がってください』




並べられたのは彩り、形ともに美しい洋菓子の数々。

それも、お洒落で品があり、見るからに高級そうなものばかりだ。




「どうぞって、どうしたんだコレ!?」




デパ地下で売ってたやつみてぇ!!と感嘆するする赤也。




『私が作りました』


「お前が!?」


『はい。お口に合えばいいのですが』




優奈が作ったということにさっきよりも衝撃を受ける赤也。


どうせ不味いってオチなんだろ…と思いながら手前にある、粉砂糖のかかったシュークリームを口に運ぶ。




「うまっ!!マジでうまいっ!!すっげーな水野!!」




見た目もさることながら味も一級品で、非の打ち所がないものだった。


不味いと思って警戒しつつ食べたために感動も一際で、赤也のテンションは上がりに上がっていた。


はっ、と、我に返った赤也は、ようやく普段のように戻り平静を装うと優奈の方をちら、とうかがう。




『……そうですか、良かった…』




頑張った甲斐がありました、と顔を背けた優奈。


新鮮な反応に、あれ…?と思う赤也は優奈の顔を覗き込む。


途端に振り向いた優奈は眼鏡のブリッジをくい、と持ち上げる。





『このタルトは季節のフルーツをたくさん加え
て爽やかな味わいにしてみました。

そしてフォレ・ノワールはビターチョコを使用し、くどくないように、

りんごのシュトゥルーデルはバターを控えめにしてさっぱりとさせ、また、ファンショネットは…』




いつにもまして饒舌に…というより必死に説明をする優奈の姿は、どこか変で、余計に赤也を混乱させた。



そして、赤也は気付いた。


こいつは今、照れてんだ。




「ぷっ…くくくっ、ぶははははっ!!」

『な、何ですかっ!?』

「くく、何でもねー…ぶくくっ」




腹いてぇ、と大爆笑している赤也に何とも言うことができず、優奈は困った顔をしていた。


やばい、これは面白いかも。


赤也は優奈の意外な面を発見し、少し興味を煽られたのだった。
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