短編
□彼の悩みは、
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澄み渡る雲ひとつ無い、眩しいくらいに鮮やかな蒼色をした空。
そんな空も今日も僕の心を晴れやかにしてくれはしない。
バカみたいにキラキラと輝く、深い湖の水面でさえも僕を嘲笑っているかのようさざめいている。
「おはよ、ドラコ！」
今日の空や湖に似合う、歌い出すかのように爽やかなこいつの声が、
鼓膜に響いて僕の中の苛立ちをさらに煽る。
「…おはよう。朝からうるさいやつだな」
「うふふ、ごめんね」
どうしてこんなにも腹が立つのだろう？
あのポッターやウィーズリーたちとはまた何か違う、嫉妬でも軽蔑でもなく嫌悪でもない、
もっとずっと不可解な正体不明の苛立ち。
「…なぁノット、最近ユウナに会うとどうしようもなくイライラするんだ。
ユウナを見ると不快な胸焼けがするんだ。僕はおかしいのか？」
本当はあいつを１日じゅう目で追ってしまうだとか、
あいつが僕以外の誰かと話していると目の奥が熱くなって泣そうになるだとか、
あいつの笑顔を見ると不可解な胸焼けがさらに酷くなるだとか。
そんな他の症状もいくつかあったが、何だか全ては言いたくない気分だった。
「そうだな…君は呪いにかかったんじゃないか？
それもユウナじゃないと治せない、複雑な。」
「呪い…だと!?」
しかもあいつにしか治せないなんて！父上は治せないのだろうか。
僕の父上は素晴らしい魔法使いだ。
大抵の呪いなら父上にも治せるはずなのに。
あいつにはできて、父上にできないだなんて全く訳がわからない。
「……あああ、わからない!!」
(何で、ドラコはあたしを睨んでるんだろう？)
(くそ、イライラする。…わ、ユウナがこっちを見たっ！)
(ええ、反らされた！本当に何なの…？)
彼の悩みは、
空の、青さと
湖の、輝きと
彼女の、その声のせい