短編

□聖なる夜は魔法がかかる
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クリスマスーーそれは特別な日。

家族が暖炉にあたり、暖かな料理を囲み他愛のない話をする日だ。



だがしかし。



教員にクリスマスなどない。

休暇中、何かしらの事情でホグワーツに残っている生徒がいるからである。

だが別にそれをくとは思わない。なんだ、我輩にそれは何故かと聞くのか?

それは…なんだ、どうせ特に予定がないからだ。



『先生!』



凛と響いたその声の主は…ホシノ、か。

ホシノは自寮の女子生徒で、はるばる日本からやってきたらしい。

東洋人は背が低く顔立ちが幼いとよく言われているが、このホシノも例にもれず幼い容姿をしている。

こいつがいつも、へらへら笑っているからなのかもしれないが。



『先生、プレゼントです!』



は?とつい口をつかそうになったが今日は何といってもクリスマスである。

大目に見よう…と思い「うむ、」と華やかに飾られた包みを受けとる。


…言っておくが、柄じゃないなんて承知だ。


すると、ホシノは両手を突き出し満面の笑みを我輩に向けた。そして言った。



『先生!私にもプレゼント!ください!』



何   て  強  欲  な  !



いまだかつてこんなふうに生徒に(この我輩が)プレゼントをねだられたことがあっただろうか、いやない。



『なーんて!冗談ですよっ』



たちの悪い冗談だ。

考えてみればこの生徒は少々頭がおかしいのかもしれない。

授業で初めて我輩に言った言葉が、何せ『先生ってボクサー派ですか!トランクス派ですか!』そうそれ…ん?!



『って、私が先生にそう言ったの、覚えてます?』



ま、まさか、開心術?!と取り乱しそうになったが、そんなわけあるまい。

我輩としたことが、ペースを崩されてしまっている。落ち着け、落ち着け我輩。



「そんな不快なことは覚えていないが、君が気色悪いというのは承知済みだ」



ポーカーフェイス(であることを願いたい)でいつもの嫌味をとばす。

それでもホシノは、けらけらと笑いながら、先生ひどーい!と大袈裟に口を尖らしただけだった。


ほんの、ほんのごく僅かにだが…心を揺さぶられたのは幻だろうか。

ちらりとホシノを見ると、ばっちりと目が合ってしまい、またにこりと微笑まれた。


その顔の何とまあ幸せそうなことか。平和ボケした馬鹿なやつだ、とは思った。

ただ、その笑顔に免じて、今日は何も言わないでおこうと思い、ふいと顔を背け、口許を少しだけ緩めた。









『あっ、先生、やっぱりプレゼントください』

「また冗談かね、しつこいぞ」

『私のこと名前で呼んでくださいよ!』

「は?!」

『えっ、す、すみませんやっぱいいで』

「・・・・・・アオナ、」

『ぎゃあああああああああああああああああああああああああデレ期いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい』

「うるさい!!」










…彼女からのプレゼントが実はパンツで、スネイプさんが久しぶりにスリザリンから点数を引くのは、また別のお話!

みなさんメリークリスマス!

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