短編

□僕の美しさ≦君の美しさ
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雪ってうつくしいね、まるでぼくみたい。

病院のまどからみえるのは、こんこんとふりつもる雪。

朝の雪はまだつもったばかりで、まっしろで、とってもきれい。

きらきらしていて、それもぼくみたいに思える原因かな。




「おはようございます、先生」




彼女は今日もまた、ぼくのところへきた。

彼女はなぜかぼくを先生と呼ぶ。

何でも、彼女はぼくのいちばんのファンなんだそうだ。




「雪が綺麗ですね、先生」




彼女のこえはとても心地がいい。

強弱がすくなくて、いっけん無機質だけれど、
なぜかあたたかくていとおしい。




『そうだね、…ねえ、きみはぼくの名前を呼んではくれないのかい?』




ただそれだけのことだったのに、彼女はとってもむずかしい顔でどうしよう、とちいさくつぶやいた。

まよう必要があるのだろうか?ぼくはかまわないのに。




「あなたは先生じゃないけれど、ええと、せんせい、なんです、」




めずらしく彼女は、すこしとまどっているようだった。

よくわからないけれど、彼女の中で”ぼく”は先生、なんだそうだ。

ぼくじゃないぼく?

わからない。

ぼくはぼくなのに?ぼくは?




「すみません、混乱させちゃいましたよね。

今日は私、帰ります」




かなしんでいでるのか?

ぼくがかなしませたのか?

きみに、悲しそうな顔はにあわない。




『ロミをくん、』




ぼくはだれかの名前を呼んだ。

彼女はぴたりと止まって、ゆっくりとぼくの方を向く。




「せん、せい…?」




彼女は懇願するように、ひどくたよりない声で私に呼びかけた。

彼女は私に、この私に話しかけた。




『君のことを忘れるなんて、私は罪な男だね』




彼女は、あの子だ。

私の愛してやまないあの子だ。

何故こんなにも大切な子を忘れていたんだろう。




「そう、ですよ、先生はやっぱり間抜けです、馬鹿です、」




泣くまいとしながら、絞り出すように出したであろう声は掠れていて、弱々しかった。

強くて賢いのに、私のことになるととても脆い。

私の素顔を見たって私から離れていったりしなかった。

影の私を愛してくれた。



愚かな私を愛してくれた。




『はは、悪かった、でも、これは神様からのプレゼントかもしれない。


君が生まれた日に間に合ったんだから』




そう言うとあの子は、必死で堪えていたのであろう涙を、美しく美しく流した。

はらはらはらり、音もなく呆然と雫が頬を伝う。



ああ綺麗だ。




『生まれてきてくれて、ありがとう。

今、私にはこんなものしかあげられないから』




控えめにウインクして、ロミをの細い身体を抱き寄せる。

そして美しい泣き顔にそっとキスをした。




雪なんかよりも、私よりも、君は美しい。








「せんせいのくせに、生意気ですよ」

『君があまりにも綺麗だったからね』

「…!」








誕生日おめでとう!!!!!
おそくなってごめんなさい!!!!!
捏造ごめんなさい!!!!!

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