*庭球夢2*
□あたたかなもの。
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空気がしんと音を立てるように冷たい。
冷気が棘みたいにちくちく体に突き刺さる。
あたしは棘から身を守って体を丸くしてなるべく小さくなった。
布団が暖かくなるまでの時間が、あたしは怖かった。
部屋の中の暖かな空気を吸い込まないで、ベッドの中は冷たく凍えていた。
さむい。
つめたい。
冷たいのは嫌だ。
ひとり。
つめたい。
寒いのはどこだか分からなくなる錯覚。
携帯がぽぉっと光った。
あぁ、サイレントになんてしなければ良かった。
そうすれば派手な音楽が鳴って、こんな気持ちもなくなるかもしれなかったのに。
それはメールで、その事もあたしをがっかりさせた。
誰かの声が聞きたかった。
冷え性のあたしの指先はいつも冷たくて、携帯をいじることだって億劫だった。
それでも人からの通信が宿ったそれは、さっきよりも確実に温かくなっていた。
メールを開いて、あたしは眠りに落ちる。
冷たい布団の中で
それでももう寒くなかった。
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