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□010
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■010 昇格試験





今日は入部後初の昇格試験がある。

一年生は全員入部当初はまだ3軍の扱いだが、昇格試験を通れば一気に1軍に上がれる可能性がある。

逆に言えば、実力主義の帝光中では昇格試験を通らなければ一生3軍のままなのである。




「あ、ああ赤司くん!頑張ってね!」

「お前どうしたの」




放課後。バスケ部の練習が始まる前。

最後の調整をしている赤司くんに声をかけた。

本人はそれ程緊張していないようだった。




「昇格試験、大丈夫?」

「心配しすぎ」




そう言いながら、赤司くんは軽くドリブルをしてシュートを決める。

いつも通り、上手い。

向こう側で練習している青峰くんや緑間くん、紫原くんも絶好調なようだ。

周りの一年生は昇格試験だから騒いでいると言うのに…。




「もしかして昇格試験合格したら何かしてくれるのか?」

「え?」




何も考えてなかった。




「何かしてほしいことある?」

「ある。軽く100は越える」

「勿論一つだけだよ!あと、一番簡単なこと!」

「うーん…」




ダムダムッと、ドリブルをしながらぼんやりと考えたあと。




「帰り、手つないで帰って」

「手…?」




その時、ピーッという音と共に練習が終わった。コーチと監督が出てくる。




「それだけでいいの?」

「うん、じゃあよろしくね」




そう言い残し、赤司くんは行ってしまった。

もっとエグい命令が下されると考えていたから、拍子抜けだった。







昇格試験は私が思っていたよりもスムーズに進んで行った。

赤司くん、青峰くん、緑間くん、紫原くんは一軍に昇格。

しかも、スタメン。
バスケ部全員が驚いた。





帰り道。

何故か赤司くんは黙ったまま。

何て言えばいいのか分からず、とりあえず褒めることにした。




「スタメンおめでとう」

「ああ」

「凄いとは思っていたけど、まさかここまでとはね」

「ああ」




(なんか、上の空?)



赤司くんの顔を覗き込んでみるが、ぼんやりとしていた。

そんなとき、ボソッと赤司くんがつぶやいた。




「次期キャプテン、俺に決定だって」

「えぇ!?」

「監督が言ってた」




す、凄い。

だから、こんなに変なのか。




「緊張しなくても、皆ついてきてくれるよ」




私がそう言うと、赤司くんはムッとして振り返る。




「そんな心配してない」

「はいはい」

「何にやけてんだよ」

「あ、それと、」




はいっ。と言って、私は赤司くんに手を差し出した。




「手、つなぐんでしょ?」



ニコッと笑ってそう言えば、赤司くんの顔が少し赤くなる。




「…やっぱりそれ撤回。代わりに明日弁当作って来い」

「え!? (面倒臭いっ!)」

「うるさい、これは命令だ」




一軍、しかもキャプテンになってもやはり横暴な暴君のままならしい。







fin…



(後書き)

原作を若干捏造しました。





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