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□016
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昨日の昇格試験で、新しく黒子くんが一軍になったらしい。

彼が頑張っていたことを知っていたから素直に嬉しい。

しかし、私は昨日の午後、体調不良で早退したため、まだちゃんとおめでとうと言っていない。


そして今も。










■016 黒子くん










「き、気持ち悪い…」




私はバスケ部の部室で一人横になっていた。

時間的には、今は2限目が始まったところだろう。

今朝は胸焼けが酷くバスケ部の朝練を休み、さらに学校にも遅れ、教室に行くのが面倒になりここにいる。



ピピピッと携帯が鳴り、見てみると赤司くんからメールがきていた。




[次の休み時間にそっちに行くから、しばらく休め]




やっぱり迷惑、かけてるよね…。




「うぅ、また吐き気が…」




タオルで口を抑え、何とか耐えているとき。




「よかったら水飲んで下さい」

「あ、ありがとう…って、いやあああああ!!」




部室には私一人だけかと思っていたはずが、黒子くんがドアの前に立っていた。

驚いて叫んでしまった。




「え!?黒子くん!?」

「すみません。さっき来たんですが、気付いていなかったみたいですね」

「…って、黒子くん授業は?」

「遅刻してしまいました。面倒になって、部室に寄ってみたんです。鍵が開いていたので入ってみたら、名前さんが横になっていたので、」




はい、と差し出された水を私はお礼を言って受け取った。




「名前さん昨日も早退しましたよね、大丈夫ですか?」

「うん…なんか、昨日のお昼に桃井ちゃんの手作りクッキー食べた後から体調が悪くなって…」


「名前さん、悪いことは言わないので桃井さんの手作りは食べない方がいいです」

「なんで!?」

「これは警告です」

「それはそうと、今日はどうしても黒子くんに言いたいことがあって…!」

「?」




私はそう言うと、横になっていた体をガバッと起こした。




「黒子くん、一軍昇格おめでとう」

「名前さん…、」




黒子くんは一瞬固まったあと、口元を緩ませて。




「それだけのために学校に来るなんて馬鹿ですね」

「なんか酷くない!?」

「冗談です。嬉しいですよ」

「本当?」

「それにしても、弱ってる名前さんを見れるなんて僕も運がいいです」

「いま、幻聴が聞こえたような気がしたんだけど…」

「気のせいです」




黒子くんはそう言って私の隣に座り、肩に寄りかかってきた。

なんだか可愛い。




「どうしたの?」

「一軍に昇格した、ご褒美が欲しいです」

「え?」




笑みを浮かべる黒子くんが、どことなく黒い…ような。




「う、うーん、私がしてあげられることなら、何でもいいよ」

「何でも…?」

「あ、でも簡単なことで!」

「わかりました。

なら、今ここで」


「?」




そう言うと、黒子くんの顔が近付いてきた。

いきなりのことなので、状況が把握出来ない。

私はぼんやりとする頭で、黒子くんを見つめた。

息がかかりそうなほど、顔が近付く。


あれ、もしかしてこれって、キ-----。









「テツヤ、それは駄目」




突然部室のドアが開くと、そこに、




「赤司くん!」




赤司くんが立っていた。




「名前、迎えに来たよ。教室に戻るぞ。あとテツヤも」

「赤司くん、少しは空気を読んで下さい」

「テツヤ…さっそく二軍に降格されたい?」




目が本気だよ赤司くん。




「名前は俺の犬だから」

「違う!」

「少しぐらいは僕もいいでしょう」

「駄目、名前は俺以外に懐かないから」

「人を犬扱いするな!」

「それだけ元気ならもう大丈夫だな」




そう言うと、赤司くんは黒子くんを置いて、私の腕を引っ張り教室に向かう。




「名前、あんまり心配させるな」

「?う、うん。ごめん」

「お前ちゃんと分かってないな」




赤司くんがため息をはく。それから思い出したように。




「あと桃井の料理は食べるな」

「赤司くんまで!?」







fin…

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