桜蘭

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「芥梨。ホスト部に早く来るようにってよ」


いつものように中庭にあるとある木の上でくつろいでいたら、祐馬がやってきて呆れたように言った。



めんどくさいな



木の下に居る祐馬の顔を見て、一つ溜息をつく


「人の顔見て溜息つくなよ…鳳に呼んでくるように頼まれたんだ…」


呆れたような顔をする祐馬の隣に木の上から着地し、手を伸ばし伸びをする
確か今日は、家から仕事があったはずだ
ホスト部が終わったらすぐ終わらせないとな…


「ん、行ってらっしゃい」

『…一緒に行く?』

「なんでだよ。俺は行かないよ―。面倒だし関わりたくないっての」

『俺も関わりたくなかったなぁー』


少し遠いい眼をしてしまうのは仕方がないと思う
だって本当に関わりたくなかったんだもん

__________




「ずいぶんと遅い出勤だな」

『…ははっ、ごめんなさい』


いま、鏡夜の凄い眼鏡がキラッってした
こわーいわー


今日はコスプレの日なのか…

暑苦しい室内を見渡して、顔付近を手で仰ぐ
いや、実際はそんなに熱くないんだけどね、視界的になんか暑いんだよ


「一応、お前の分の衣装も用意しているが、着るか?」

『…見てから判断しますね』

「服は隣の部屋にある。早速指名が入ってるから、待たせるなよ」

『わかりました』


黒い笑みの鏡夜を通り過ぎ、隣の部屋に入った

んーっと、これかな?
部屋を見渡し、見つけたのは一つの紙袋
多分これだろう


『えーっと…うん、大丈夫でしょうかねぇ…』


良いぐらいに女と分かるところが隠れるような作りで、デザイン的には環と似たり寄ったり。
名前からとったのか、全体的に紫が目立っている

取り合えず、着替えよう




『んー…どうしましょうかねぇ』


取り合えず着替えてみて問題が発生した

どうしたらいいのか迷っていたら、グットタイミングで鏡夜がやってきた。
接客の時間が迫っているんだろう


『実は少し問題がありまして…』

「ん?どうしたんだ?」


鏡夜に聞かれて戸惑う…
どう言ったらいいのか…
いや、普通に刺青があるって言えばいいだろうけど、それを口に出すのは少し抵抗がある。
それはいろんな意味があるのだけれど


『…んー…取り合えず、着替えてはいるので、入って確認してほしいんですよ』

「…あぁ、分かった。入るぞ」


シャッと音を立ててカーテンが開かれ、少し薄暗かった室内が明るくなる


「?…見た所何も問題はないように見えるが…」

『あぁー…正面はね』


眉根を寄せる鏡夜に苦笑いをこぼしながら、クルッと後ろを向く
背中越しに、鏡夜が息を飲むのが感じ取れた

実は私の背中には白い蓮と紫の桜が描かれている
これは紫桜家当主が背負うとても重いもの。

そう、実は私、つい最近次期当主に選ばれてつい最近刺青デビューいたしました


『隠した方が、良いですよね?』

「そうだな。何か羽織るものを用意しよう」

『…、っん』


多分だけど、にっこりと笑いながら背中をなぞってくるので、思わず声を出してしまう
早くなんか持ってこいよ


「凄いな…細かいところまで色が綺麗に染まっている」

『そりゃぁ、うちのお抱えの刺青師ですから。腕がよくないと困りますよ』

「そうか……あぁ、ほら、これで隠すと良い」

『ん。ありがとうございます』


何時の間に持ってきてたのかは分からないけど、渡されたのは今来ている衣装よりはデザインの落ち着いたデカイ布、まぁ、あれだ、大判ストールだった。
これを付けて、鏡夜に刺青が見えないか確認を取って、やっと接客ができた
ここまで来るのに時間かかりすぎだろ



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