青春を謳歌せよ、少年少女たち

□第8話 「依頼実行」
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「11時58分か・・・」

部屋に置いてある時計を見て野江は呟いた。
この時計の針が0時を差せば、魔物捜索へと赴かなければならない。
話に寄れば大きい魔物が居たり、少女の笑い声がしたり、または少女が突っ立っていたり。
正直信じがたい話だが、色々な人がその話をするのだ。信じるしかない。
ここ近辺に住む人達の為にも、必ず魔物は仕留めなければ。
下に置いてある剣を持ち、ドアの前に立った。


0時まであと、


5、



4、



3、



2、



1.


0時を告げる音が鳴ると、野江は廊下へ出た。
それからぞろぞろと色々な部屋から人が出てきた。
香山が全員居る事を確認すると、

「他の客にばれないように歩きなさい。喋らないでよ」

と告げて、歩き始めた。
皆もそれに従い彼女の後ろへついていった。
エレベーターに乗り、1階のフロアへ着くと、入り口の方に長谷川が立っていた。

「香山さん、これから行かれるのですか」
「ええ。この時間帯に出かけたほうが見つけやすいと思うので」
「そうですか・・・。皆様、くれぐれもお気をつけて。−−行ってらっしゃいませ」


外に出て、暫らく歩いたところで先頭に居た香山が皆の方へ振り返った。

「いい?今から3つのグループに分かれて行動するわよ。今からそのグループを言うから聞いていなさい」

香山が決めたグループは以下のものだった。
グループはA、B、Cの3つに分かれており、各グループ5人ずつで編成される。
Aグループは野江、中本、仁野、種山、戸島のセレファイスの5人。Bグループはマツリ、柏、竹部、砂原、香山。Cグループは三羽、四月、八神、高野、ケントという風に分かれた。
そのグループを確認すると、香山は最後にみんなに告げた。

「じゃあ何かあったら私の方に連絡して。ーーーじゃ、依頼実行」






「今が日中で、ここに沢山人が居たらよかったのに」

海近辺を歩いているセレファイスメンバー。
周りに十分警戒しながら歩いていると、戸島がふいにそんな事を言い出した。

「何でそう思うのよ?」
「今私の手にはスマートフォンがある。このスマホにはカメラ機能が付いている。このカメラ機能を使ってイケメン同士2人が一緒に居る所をバシャッと撮りたいなと」
「あーはいはい。戯言はいいから暫らく黙りなさい」
「あはは・・・怖いな種山さんは」

戸島の言葉を容赦なく切り捨てる種山。
そんな2人のやり取りを見て野江は少し苦笑した。
・・・本当はこういう時に無駄な会話はしてはいけないのだが。
それにしても、周りからは何の気配も感じられなかった。
聞こえるのは自分達の足音と波の音だけだった。
再び黙りながら歩いていると、中本が何かに反応した。

「あれは・・・」
「どうしたんだ?中本」
「野江先輩、あそこに人が・・・」

中本が指を差し出す。
遠くて暗い為、はっきりとは見えないが、その向こうには確かに人影があった。しかも、その場に倒れている状態で。

「中本、こんな暗い中でよく分かったな」
「うっすらと見えるだけですけどね。・・・で、どうするんですか?あの人」
「決まってる!たすk」
「助けるんですよね?」
「おい仁野!俺の台詞を取るんじゃない!」

会話をその辺で打ち切って、5人はその人に向かって歩き始めた。
もしかするとそれは何かの罠かもしれない可能性もある為、慎重に、周りに気をつけながら近付いた。
近付くにつれ、その人の姿ははっきりと見えてきた。
その人は見る限りでは男性で、しかもそれはーー

「・・・あれ」
「どうしたのよ野江」
「この人・・・知っている人だ」
「え?」
「ホラ。俺達に海の家で手伝って欲しいって頼んでいた人だよ」

そこに倒れている男性は、間違いなく、海の家の親父だった。
特に、野江と仁野はそこで手伝っていた為顔はよく覚えている。
一方で彼等以外の3人は、野江の説明を聞いて「ああ、あの・・・」とようやく思い出した。

「でも、何でこんな所に居るのよ?」
「うーん・・・ここを寝る場所だと間違えて寝ちゃったとかじゃないかな?」
「戸島さん・・・流石にそれは無いと思う」
「まあ・・・一応私が調べてみるわ」

そう言って種山は、親父の手首を掴んだ。
するとーー

「えっ」

彼女が触れた瞬間、親父の身体は霧のように消えていった。

「え!?あれ!?」
「親父さんの身体は・・・!?」

あまりに突然の出来事で、5人共動揺を隠せずに居た。

だから、気付かなかった。



海のほうから魔物が近付いている事に。





その頃、Cグループでは。

「うーん・・・居ないねえ」

三羽がぐるりと見渡すが、魔物の気配は何も感じられなかった。
彼女に答えるように八神が苦笑した。

「意外にここじゃなかったりするかもしれませんね。・・・・・・ところで」

そこで、八神の目つきが変わる。
彼女は鋭い視線を後ろで落ち込んでいる高野に向けた。

「・・・アンタは何で落ち込んでるの」
「うるせー・・・。だってよー考えてみろよ。アニメとか漫画とかでは、海に来たらお約束の水着回になるのに・・・俺達何にもそんなフラグないし・・・。ってかもしかするとここは死に場所になるかもしれないし・・・」
「あーもー!っせーな!」

ウジウジしている高野に四月が思い切り怒鳴り散らした。

「これはアニメじゃないんだから仕方ないだろ!!理想と現実の区別ぐらいつけろっての!!」
「テメエに俺の気持ちが分かるか!」
「分かりたくない!お前なんか魔物の餌になってしまえ!!」
「この野郎・・・!女だからって手加減はしねえ・・・!!」

肝心な時だとだと言うのに、高野と四月は各々の武器を取り出し喧嘩を始めた。
が、その内容があまりに低レベルな為、誰も喧嘩の止めに入らなかった。というよりも、止めに入る気力すらなかった。

「ねえ・・・あの2人置いていかない?」
「三羽先輩、それいい考えです。置いていってさっさと行きましょう。・・・加藤、アンタはどう思う?」

崖の方で遠くを見ているケントに八神が聞いた。
だがケントがそれに何も言わず、静かに向こうをじっと見ていた。
もしかすると聞こえていないのかもしれない。そう思った八神はケントに再び声をかけた。

「ねえ加藤、」
「・・・お前、聞こえないのかよ」
「は?」

突然発せられた意味の分からない言葉。
それを聞いた八神は思わず間抜けな声を漏らした。

「耳を澄ましてよく聞けよ」
「?うん・・・」

ケントに言われた通りに、八神は意識を集中させ耳を澄ました。
すると、音は遠くから聞こえるが大きな打撃音が確かに聞こえた。
この時間帯に歩いているのは彼女等と他のグループのメンバーしかいない。
つまり、

「・・・何処かでもう戦闘が始まってる」
「え、どういう事だよ八神!」
「そのままの意味だ。そんな事も分からないのかよ高野は」
「なっ!この野郎・・・」

ケントの言葉に高野が食いつく。
だが今はそれどころではない。
それを悟った高野は、その後何も言わず身を引いた。

「三羽先輩、ちょっといいですか」
「うん。何?」

ケントに名を呼ばれ、三羽は崖の方へと駆け寄った。

「何か聞こえると思うんですけど、どうですか?」
「・・・うん。聞こえるね」
「何処からか分かります?」
「ここから5kmぐらい離れている砂浜の所。聞く限りではセレファイスがそこに居るね。この崖降りて、早く助けに行こうよ」
「そうですね」

三羽とケントの会話はそこで終わった。
その直後、2人はすぐさまその崖を飛び降りた。
その後すぐに八神も崖を降りた。

「ちょ、ちょっと待ってよリっさん!!」
「おい、俺を置いてくな!」

先に行った3人の後を追うように、四月と高野もすぐさま崖を降りた。
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