夢幻の姫〜彩雲国夢物語〜
□劉輝と黎深【上】
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及第した進士たちの配属先を決めるための人事選抜試験のことでその名のとおり吏部が執り仕切る。
主に人物を見るといわれ、これを通らねば官吏として働くことはできない。
進士たちの将来を決めひいては朝廷の人事を握っているがために
吏部は六部の一と言われる権力を持つのである。
「なるほどそれでは本年度の新進士上位二十名に関しては吏部試を執り行わず、
まずは朝廷に留め置いて様子を見ると」
扇子で軽くたたく音が微かに響いた。
窓の方を向いていた劉輝は黎深の方に振り返る。
「父の時代もたまにそういうことがあったと聞いている」
「ええ、私の時も絳攸の時もそうでした」
王、劉輝と吏部尚書である紅黎深は今年の新進士たちについて話していた。
黎深はその手に持った扇子を顎に軽く当てる。
「――まあ妥当でしょう。時機を見るという意味でも。
彼らは…特に杜影月と紅秀麗は普通の手順を踏んだだけでは、到底受け入れられません。
あたらつぶされるのは勿体ない」
「勿体ない?」
黎深の意外な言葉に劉輝は首を傾げる。