夢幻の姫〜彩雲国夢物語〜
□劉輝と黎深【下】
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黎深は劉輝の方を見ないまま、足を止め返事をする。
「なんです?」
劉輝は言いにくそうに話し始める。
「…その…秀麗の後見を引き受けてくれてありがとう」
その瞬間黎深の体がピクッと反応する。
なぜか劉輝は地面に亀裂が入ったようなそんな気がした。
黎深はゆっくり振り返ると、その怒りを顔に現したまま喋り始める。
「別に主上のためではまったくありません」
そのド迫力に負けじ、と劉輝も言い返す。
「秀麗には誰が後見についたかいまだ伏せているそうだな」
「私事にまで首をつっこまないでいただきたい」
劉輝が言い返してきた言葉を黎深はバッサリと斬り捨てる。
それでも負けたくないように劉輝はまた言い返す。
「き…及第を一緒に祝ってやれなかったからそんなにつんけんしているのだろう?」
「主上…根本的な要因としてそもそも私はあなたが気にいらないのです」
邵可兄上に長年そばにいてもらって勉強を教えてもらうという恵まれた環境にいたのに気づきもせず、
昏君のふりをして兄上を困らせ、心配させて、私は兄上につれなくされてばかりなのに
かわいい姪まで一時嫁にとり、いまだに周辺をうろちょろしている。
私は存在さえ認知されていないのに…!!
黎深が持つ扇子からギシッっとありえないような音がした。
相当腹が立っているのだろう。
劉輝の目には今にも黎深の力で締め付けられる扇子を可哀想に映る。
「(アホ面さげて…王でなければとうに抹殺している邪魔さ加減だ!!)」
すごい勢いで黎深が無言で顔をしかめた。