夢幻の姫〜彩雲国夢物語〜
□劉輝と黎深【下】
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「(すごく怒っている…な)」
劉輝はゴクリと唾を飲み込む。そして意を決すると、
ニパーと愛想のいい笑顔を顔に浮かべた。
「…余は実はそなたのことが結構好きなのだが」
「私を寝台に連れ込もうとするなど百年早いですよ。一昨日おいでなさい」
黎深は横目を使うと開いていた扇子を音を立てて、閉じ再び踵を返し歩を進めた。
その後ろで劉輝は難しいと言ったような顔をして、黎深の後ろ姿を見る。
…純粋な気持ちで言ったつもりなのだが
劉輝は自分の言葉のどこかに変な所があったのか思い直した。
そして街の光が目に入ると、その中にある“彼女”の邸がある方向の景色を目に捉える。
「秀麗…」
この灯りのどこかに秀麗はいるのだ。
小さく息を吐くと劉輝は呟く。
「遠いな…な。これからはもっと遠くなる」