夢幻の姫〜彩雲国夢物語〜
□劉輝と黎深【下】
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一年前――
この手の中には秀麗の笑顔も確かに入っていた。余の大好きなかけ値なしの笑顔――
劉輝は懐かしむように自分の手のひらを見る。脳裏には秀麗のあの屈託ない笑顔があの愛しく思った笑顔が浮かんだ。
そしてその手をギュッと握る。
けれどこれからはその笑顔は、いや豊かな表情のすべては垂れた頭の下に隠される。
王と官吏として近くにいながらその距離は開くばかりだろう。
女人受験制を導入したことを間違いだとは思っていない――
秀麗が官吏になることも…
「後悔など、しない――」
踵を返した劉輝の長い髪が風になびく。
切なく、強く。
その決心のように。
今は秀麗が笑ってくれるなら、それでいい。
これからは今までのように手を貸す事はできないが…
「秀麗…」
余にできることは――
1人の女人のために国を治めようとする姿が確かにそこにあった。