銀魂夢小説.

□夏ノ恋ハ熱ク儚ク.
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真夏日の今日。ここかぶき町は、これ迄とは比べ物にならないほどの記録的な猛暑日となった。
その為、外を歩いている人などほとんど居ない。家や店の前に打ち水をしている人がちらほら見える程度だ。
そんな町の、道の真ん中を一人、黒いベストの制服を着た男が歩いていた。
あの制服は江戸の町を護る武装警官、『真選組』のものだろう。
…という事は、今歩いているあの人は真選組の隊士だろう。
この暑さの中、市中巡廻をしているのだ。
咥え煙草に瞳孔開き気味という、いかにも、子供には勿論、大人にも怖がられそうな顔をしているその人は、真選組副長、土方十四郎だった。
なぜこんな暑い日に副長が自ら巡廻へ出掛けたのか。
それは、話せば少し長くなるが…
いつも巡廻を任せている、新米隊士の殆どが御盆という事で里帰りをし、屯所には人が少なかった。
数少ない新米達で巡廻に行くのは危険なので、真選組監察(兼パシリ)山崎退に押し付けようと部屋迄行ったが、せっせと資料をまとめていた。
その為仕方なく、危険だと承知はしているが、少ししかいないが新米隊士に頼もうと思い声を掛けた。が、皆考える事は同じだ。暇そうにして居ると巡廻に駆り出されそうだったので、室内での作業を必死になってやっていた。
行きたく無いからとは言え、ちゃんと仕事をしている中連れ出すのもアレなので、土方自ら一人で巡廻へ行く事にした。
沖田は暇そうだったが、彼を連れて行くと余計疲れそうだったし、局長である近藤にやらせるわけにもいかなかったのだ。
巡廻といってもいつもの様に市中を取り締まるのではなく、こんなに暑い日なので、市内の、外を出歩いている人に熱中症に気をつける様にと注意を呼び掛ける。その為、車には乗らずに歩いて廻った。炎天下の中での徒歩での巡廻は体力的にもキツイ。が、これも、江戸を護る真選組にとっては大切な仕事だ。仕事熱心な土方は手を抜くわけには行かなかった。



歩く度、滝の様に汗が流れる。
腕捲りをしたり、シャツのボタンを開けてみたりと少しでも涼しくなる様にしてみたが、全く変わらなかった。
炎天下のせいで頭痛がしてくる。日陰に入って休憩でもすれば良かったのだが、勤務中だと自分に言い聞かせ、歩みは止めなかった。が、歩いた距離と比例する様に痛みは増し、視界がぼやけてきた。
こんなのどうってことない。
そう思って再び歩き出そうと足を出した瞬間、足に力が入らず、グラっと体が傾く。
そして、フッと目の前が真っ暗になった。
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