銀魂夢小説.

□理由ナンテ.
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ある冬の日の昼下がり。
真選組一番隊隊長、沖田総悟が、散歩がてらに市中を巡廻していると遠くの川沿いに人影が見えた。
一応仕事もしないといけないので、めんどくさいと思い乍も川に近づくなと注意しに行く事にした。
この川は、昨日の雪で増水して、危険なのだ。
「おい、そこのガキ。川は危ねェから近づくな。」
歩み寄りながら声を掛けるも、相手には聞こえていない様だった。
段々近付いて行くと、見覚えのある人物が居た。
「おいチャイナ。こんなとこで何してんでィ。」
すぐ近く迄来るとようやく相手は振り返り、いつもの調子で、
「サドこそ何してるネ。川は見ての通り危ないから近づいちゃいけないって分からないアルか、ガキ。」
と、相手を挑発する様な言い方でいった。
沖田は、
「俺がお前にその言葉言いに来たんでィ。」
と、怠そうに言い、ガキは帰れ。と付け足した。
いつもならこのまま喧嘩になるのだが、神楽は
「私は大丈夫ネ。」
と素直に相手の言葉を受け取った。そしてじっと、難しそうな顔をして川を見つめている。
沖田もつられて川を見ると、相手の視線の先には何やらピンク色の物体が川の流木に引っかかっていた。目を凝らしていると、神楽は不意に口を開いた。
「あれ、誕生日に友達から貰った縫いぐるみネ。定春と遊んでたら落としちゃったネ…」
今にも泣き出しそうだった。
いつもなら放っておくものの、あの顔…悲しそうな顔を見てしまった。沖田は我慢できなくなり、後先を考えるよりも先に体が動いていた。
「おい、サド?!!何してるネ!そんな所入ったら、いくらバカでも風邪引くヨ!」
沖田を止めようと必死で叫ぶも、相手は無視して川に入っていった。
肌を切り裂く様に水が体に張り付いてくる。
もう少し…手を伸ばすも後少しの所で届かない。水は胸まで来ている。
一歩奥へ入り、ぐっと手を伸ばす。指先が縫いぐるみに触れた。後一歩、そう思ってもう一歩足を踏み出す。

…届いた

ぎゅっと縫いぐるみを掴み、来た道を引き返し、縫いぐるみを渡すと、
「お前、ほんっとバカアル!」
と怒鳴りながら縫いぐるみを受け取っていた。
「大事な物なんだろ、もう落としても取ってやんねェから落とすんじゃねェぞ、ガキ。」
それだけ言って、べちゃべちゃの服のまま帰っていった。
「ちょっ、サドッ…何でこんなバカな事したネ!」








……好きな人の質問にも答えずに。
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