鼓動(ロー)

□嫉妬?
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「大丈夫か?」

「うん。」

「じゃ、次三本目だ。」

名無しさんは恐る恐る薬指を差し出す。


「う・・・」

「落ち着け、ゆっくり息しろ〜」

「はぁ〜・・・」



そんな2人を面白くなさそうに見つめる人が1人。




「おい、」

「あ、ロー。」

「キャ・・・・キャプテン!!!!!!」


シャチにはローが不機嫌なのも、その理由もわかっていたが、名無しさんにはわからなかった。

「シャチが・・・手を握る練習してくれてんだ。」

「そうか。よかったな。・・・・シャチ。」

身の危険を感じたシャチは、名無しさんに一言ゴメンといい、船室へ逃げて行った。


「あ・・・行っちゃった。」

「シャチとずいぶん、仲いいみてえだな。」

「え?」

「指3本か・・・」

「うん。ローはいま、時間ある?」

「あぁ。」

「手、かしてくれる?」

ローは嫉妬のせいか少しいじわるがしたくなった。

「嫌だ。」

「・・・そ・・・そうだよね。」

そういって俯く名無しさんをみてローは後悔した。

「私、行きますね。」

そういってたった名無しさんの手をローはつかんだ。
正確には指一本を。


「ロー?」

「やっぱ、気が変わった。いいぞ。」

「ほ・・・本当?」

「あぁ。」



そういってローと名無しさんは手を握る練習をした。


「まだ、指2本だけど?」

「さっきは3本平気だったのに・・・はぁ・・」

「シャチがいいのか?」

名無しさんはローだと余計に恥ずかしくなる自分に気づいた。

「ローが・・・」

「あぁ?」

「なんか・・・ろ、、、ローだと・・・」

「俺だと問題あるのか?」

「ううん・・・なんでだろ・・・心臓が・・・はあ・・・はぁ・・・」

「おい!」

「ロ・・ロー。」

顔を赤くして目を潤ませた名無しさんを見てローも心臓がドキドキしだした。

「俺もなぁ・・・恥ずかしいんだぞ。」

「ぇ?」

「でも、それでもお前のためだって思って耐えてるんだ。」

ローが耐えてるのは、指を握ることではなく、自分の理性が飛ばないようにすることなのだが・・・


「ありがと・・・」

「恥ずかしくても、やり遂げてえことがあるんなら耐えろ。」

「うん。」

そういって名無しさんはローの手に、三本目の指、薬指を自ら絡ませた。


「くくく、やりゃぁ出来るじゃねえか。」

「・・へへ。」





昼に始めた手を握る練習は夕方まで続き、気づけば夕飯の時間に。


「キャプテーン!名無しさんーーー!ごはんだよー」

「ベポ!」

「今行く。」

名無しさんはローの手を握り、ベポのもとへ走った。

そしてベポの手を左手で握る。


ベポ・・・名無しさん・・・ロー


「あれ、名無しさん、キャプテンの手!」

「うん!握れる!」

「よかったね!すごいね!」

「うん!ローがね、優しく付き合ってくれたから!」

「くくっ」

「あ、ありがとう!」

「ちゃんと礼も言えるようになったしな。」

そういってローが名無しさんに顔を近づけると、名無しさんは顔を真っ赤にして

「それはまだ・・そんな・・ち、、近いのは・・・まだ・・無理・・・。」

「キャプテン!苛めちゃだめだよ!」

「ふふっ。」

「はぁ・・・」

「また手伝ってやるよ。」

「うん。」







「シャチ!」

食堂に入った名無しさんは真っ先にシャチの元へ行き、手を差し出した。

「手。」

「お!!」

シャチは大きな手で名無しさんの手を握り、

「よかったな。」

といった。

「ありがとう!」


「ペンギン!」

「ん?どうした、名無しさん?」

「手、かして。」

「ん?でも・・大丈夫か?」

「うん。ローに手伝ってもらって・・・・」

「そっか。」

そういって二人は手を握り、固く握手をした。



それから名無しさんはクルー一人ひとりと握手をして回った。

今まで男の手になんて触れることすらできなかった名無しさんはよほどうれしかったんだろ・・・そんな名無しさんをみて、ローも心の底から喜んだ。





そして、最後に名無しさんをよび、もう一度手を握った。

「ロー?」

「くくくっ」

「へへ・・・」
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