鼓動(ロー)

□優しい誘拐
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看病しては礼を言いに来て、そこでまた倒れて看病する・・・・の繰り返しが続いて気づけば一週間くらいたっていた。


「もうそろそろ出発だな。」

「はい、明日には出発できます。」

そんな話をしていると、名無しさんがやってきた、そしていつもの通り倒れた。


「はぁ・・・こいつともお別れか。」

「寂しいんすか、キャプテン!?」

「シャチ・・・いつ俺が寂しいなんて言った?」

「え・・・ぁ・・・言ってません!」

「よし。」

「俺は薬を買ってから酒場に行く。先に行っとけ。それから、ベポはそいつについててやれ。起きたら酒場に連れてこい。」

「あいあい!」

ローは宿を出て行った。

「キャプテン、惚れてるのかな?」
のんきに聞くベポ。

「それいったらばらされるぞ!」
あわてるシャチ。

「でも、あの子に会ってから人間らしくなったっていうか・・・丸くなったっていうか・・・」
ペンギンの鋭い推理。

「でも今日でお別れだろ。」

「連れて行きたいんだろうな、本当は。でも、あの子、俺たちと一緒に来たら、確実にやばいよな。」

「あぁ。」

「あい。」




ローは薬を買いながら考えていた。
名無しさん、本当は連れていきてぇ。
俺は海賊だからな、欲しいもんは力づくでも手に入れる。
でも、医者としてどうなんだ。シャイすぎて、すぐ倒れるは・・・

気づくとローはあの酒場に来ていた。

「いらっしゃい」

「ほかの奴らは?」

「まだ来てないよ」

「ったく・・・」


ローは店主になぜあんなにシャイなのか聞こうと思った・・原因がわかればなおせるかもしれないと考えた。

「おっさん、あいつなんであんなにシャイなんだ?」

「あいつっていうと名無しさんちゃんだね。」

「あぁ。」

「気になるのかい?」

「妙な勘繰りするんじゃねぇ。とっとと知ってること言ってくれ。」

「わかったよ。」

店主は名無しさんのことを話し出した。

名無しさんはもともと金持ちの家の子だった。それで、小さい時から女学校に入れられていた。そこの生徒ってのがどいつもこいつもブスばっかで、可愛い名無しさんにひがんだ周りの奴らは名無しさんのことをブスだと言い出した。それはいじめではなかったが、そのせいで名無しさんは自信をすっかり失い、人前に出るのが嫌になった。
女子ばっかの世界で生きてきた名無しさんだったが、15くらいの時に男子校の奴らと交流があった。あんた顔悪いからあんま前でないほうがいいよ、恥かくよ、と言われて引っ込んでいたが、一人の男子に見つかり、かわいいね、と言われた時にはもう気絶していた。

「それいじめだろ?」

「俺もそう思ったんだがね、名無しさんにしてみればみんな自分のこと心配して言ってくれてるんだ、だそうだ。」

「とんだお人よしだな。で、なんであんたはそんなこと知ってるんだ?」

「そりゃ、その女学校の校長だったからだ。」

「そうか。」

「うちの学校は金持ちばっか集まるいわゆるお嬢様学校だったんだけどな、どの生徒も外見がいまいちで、まぁ、天は二物を与えずってやつだな。だから、あの子が来たときはおどろいた。天は二物を与えたって思ったよ。」

「だが、それも違うな。代わりに名無しさんはでけえもん失っただろ。」

「あぁ・・・本当に、かわいそうな子だ。」

「で、なんでその金持ちの嬢ちゃんが酒場でなんてバイトしてんだ?」

「それがなぁ・・・高校卒業して、あの子は親に言われてお見合いをしたらしいんだが、まぁ、あの性格だ。すぐに気を失ったらしい。」

「そりゃそうなるだろな。」

「でもって、親には怒られ、ちょっと反抗したらしいんだが、それが逆鱗にふれて勘当されちまったらしい。」

「反抗すんのか、あいつでも。」

「そこは俺も驚いた。でもなんて言ったかは教えてくんないんだ。」

「へ〜」

軽く流すがなんて言ったのか結構気になるロー。
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