鼓動(ロー)
□チューリップ
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次の島が見えてきた。
「あの島にはユースタス屋がいるらしいから気をつけろ。」
ローは船員たちに伝える。
(ユースタス屋・・・?)
名無しさんにはなんのことかわからない。
「それから名無しさん、島に降りてもいいが、俺のそばを離れるな。」
「うん。」
「名無しさんはどこか行きたい?」
ベポがにこにこ聞いている。
「服とか、日用品がほしいな」
「そっか。ほぼ準備なしで出てきちゃったもんね。」
「うん。」
名無しさんは酒場にあった少しの服くらいしかなかったのだ。
「それなら、俺が選んでやる。」
「え?」
「俺も選びたいっす!」
「俺もー」
ローの提案(宣言?)にシャチとペンギンものり、結局、名無しさんはベポ、ロー、シャチ、ペンギンと町へ行くことになった。
「これにしろ。」
そういってローが持ってきたのは際どいミニスカート。
「いや、これだ!」
シャチが持ってるのは、胸元の大きく開いた短いワンピース。
「・・・・私・・・そんなの・・恥ずかし・・くて・・」
名無しさんの今の格好はというと、膝まであるグレーのワンピースに黒のカーディガン。
すがるような目でペンギンを見つめると、ペンギンは、膝丈の白のワンピースを持ってきた。
「これはどうだ?」
「ペンギン!・・・ありがとう。」
「「チッ」」
会計を済ませにいったローの手に、先ほど自分とシャチが選んだ服があることに名無しさんは気づかなかった。
そのうち着せてやる、そんなローの野望の表れ。
4人と1匹で町をさらに歩く。
「名無しさん、ほかに欲しいものはないの?」
そんなベポの質問になかなか答えれない名無しさん。
「・・・・」
「どうした?なんかあるなら言え。」
ローがせかしても言おうとしない。
「どうしたんだ?」
シャチが覗き込むように名無しさんの顔を見ると、名無しさんの顔は真っ赤だった。
「そんな顔見ただけで照れるなよ!今さらだろ!?」
「・・・ち・・・ちがう・・・ベポ・・・」
そういって名無しさんはベポの耳元で何が欲しいか小さな声でつぶやいた。
「名無しさんはね、「ベポーーー!!」」
ベポが大声で言いそうになるのを制止する名無しさん。
「っていうわけだから・・・ちょっと一人・・・で・・・」
そういうと名無しさんは、一目散に走って行った。
「っていうわけ・・・ってどういうわけだよ?」
キレ気味なロー。
「あのね、名無しさんは下着を買いに行くんだって。」
「「「////」」」
男三人がすこし変な妄想をしたのは言うまでもなく・・・
「追わなくていいんですか?」
ペンギンの冷静な一言に我に返る2人。
「あぁ・・・」
3人と1匹は再び進みだした。
「ハァハァ・・・」
一方息を切らした名無しさんはゆっくりと歩いていた。
下着なんて・・・恥ずかしくて・・・
ドンッ!!!
「あゎ・・・・ごめんなさい!!!」
俯き気味だった名無しさんは何かにぶつかってしまう。
「ぁあ゛?」
ちゅ・・・チューリップ・・・
悪魔のチューリップ・・・
「・・・・」
「なんだ、てめえ?」
「あ、私、名無しさんです。」
「名前なんて聞いてねえよ。」
顎をつかみ、くいっと自分のほうへ名無しさんを引っ張るキッド。
「あ・・・・ぅ・・・・」
「????」
「はぁ・・・・さ・・・・ささささ触らないでッ!」
恥ずかしさのあまり倒れそうになる前にキッドを押し返す。
「嫌われたな、キッド。」
そう言うのはキラー。
「ふんっ。」
「ぶつかってごめんなさい、私、買い物に行くんで・・・」
そういって歩き出した名無しさんの手をキッドがつかむ。
「気に入った。」
「・・・・?」
「付き合ってやる。」
名無しさんはついてきてほしくないと願うが、それでもキッドの手は握ったままで・・・
「で、何を買うんだ?」
「・・・・・」
「おいっ」
その鋭い目つきを見て名無しさんは言わなきゃ殺される、ととっさに感じた。
「・・・・し・・・」
「し?」
「し・・・・・た・・・」
「した?」
「下着!///」
その3文字を異性の前で発した恥ずかしさのあまり、名無しさんは気を失ってしまった。