鼓動(ロー)

□傷
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もうすぐ次の島に上陸だという頃、ハートの海賊団は敵船と遭遇した。



「名無しさん、お前はここにいろッ!」

ペンギンは名無しさんの手を握り、倉庫に連れて行った。


「うん・・・・」


「大丈夫だ、安心しろ。」


「・・・・気を付けてね。」


「ああ、ありがとな。」



名無しさんが落ちつたのを見るとペンギンは戦場へと走って行った。




こんな時に何もできない自分は果たして海賊なのだろうか・・・

ローが私といるのが苦しいのは…私がこんなのだからかな・・・。




敵や味方の悲鳴や銃声が聞こえてくる中で名無しさんは自分に嫌悪感を覚えていた。











「おお!女がいるじゃねえか!!!」


鍵のかかったドアを蹴破って入ってきたのは大柄の男。



ゴクリッ・・・


名無しさんは何も言えずに生唾を飲み込んだ。




男はゆっくりと、着実に名無しさんに近づいていく。


名無しさんもその距離が縮まらないように後ろへ下がる。




「あ・・・」


後ろは壁でこれ以上はさがれない所まで来てしまった名無しさんに男の汚い手が伸びる。



「そう固くなんな!可愛がってやっからよぉ!」



唇をかみしめ、うつむいていた名無しさんの頬に男の手が触れた。







「あッ!!・・・・ハァハァ・・・・・・・はぁ・・・・」



ドクンドクン・・・・



名無しさんの心音をあげるかのように男はその手で名無しさんの頬を撫でた。



「きれいな顔してんじゃねえか?」



もうダメかも・・・

耐えられない・・・・・


でも、こんな時に倒れたら・・・



私も戦わなきゃッ




その決心が揺らがないうちに名無しさんは右手の拳で男の顔を力いっぱい殴った。





「ってぇ〜!!!何しやがるこのクソアマ!!!」



男が一瞬うろたえたすきにドアへ向かって走り出す。





ばふっ・・・




「ったく、何してやがる?」


「ロー・・・・」



ローの胸へ倒れこむようにしてぶつかった名無しさんは、不意にとはいえとてつもない恥ずかしさに襲われていた。




ドキドキドキドキ・・・・




「はあはあはあ・・・・はぁ・・・」


荒い呼吸にローは気づく。


「おいっ!大丈夫か!?」



ローが名無しさんの肩をつかんだ瞬間、名無しさんの目の前は赤く染まった。




「よくもやってくれたな!!」



男は持っていたナイフを投げ、それはローの肩に刺さった。


傷口からは血があふれだし、名無しさんの顔にもその生暖かい血がかかった。



「ぁ・・・・はあはあッ・・・・・」


血とコントラストをなすように名無しさんの顔はどんどん青ざめていき、そのまま意識を手放した。




ローは傷を気にすることもなく、名無しさんをそっと床に寝かせた。


ったく・・・仕方ねえ奴だな。




「おい、お前。」


「ぁあ!?なんだその女をよこす気になったか?」


「黙れッ・・・・ROOM・・・」



男はもうサークルの中。




勝負は一瞬だった。
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